ラテンアメリカに広がる慎重な楽観 米中貿易協議がロンドンで再開
ラテンアメリカに広がる慎重な楽観 米中貿易協議がロンドンで再開
今年の関税対立で揺れた米国と中国が、このほどロンドンで通商協議を再開しました。世界経済とラテンアメリカの行方を左右しかねないこの動きは、対立激化を懸念してきた市場に「慎重な楽観」をもたらしています。
ロンドン協議で見えた「対話継続」の意思
米国と中国はロンドンで新たな通商協議を終え、先月のジュネーブ会合で得た共通認識を実行に移すための「大枠」で暫定合意しました。今年始まった関税争い以降、正式な対話はこれが2回目で、二日間にわたる協議の詳細は公表されていません。
ただ、今回の協議には両国の高官が参加し、単なる火消しではなく、より構造的な課題の解決を視野に入れていたとされています。焦点は次のような点でした。
- 失われた信頼関係の再構築
- 貿易不均衡への対応
- 今年前半に見られたような関税の応酬を再発させない仕組みづくり
高いレベルでの会合そのものが、「これ以上の緊張激化は避けたい」というワシントンと北京の共通のメッセージと受け止められています。
関税対立が突きつけた経済コスト
今年4月、ドナルド・トランプ米大統領が「相互主義関税(reciprocal tariffs)」を導入する二つの大統領令に署名したことをきっかけに、世界の貿易環境は一気に不安定になりました。当初、ホワイトハウスは景気への影響を軽視する姿勢も見せていましたが、足元の数字はその楽観を揺さぶっています。
- 米商務省によると、米国の国内総生産(GDP)は2025年第1四半期(1〜3月)、前期比年率マイナス0.3%と、2022年以来のマイナス成長となりました。
- ブルームバーグの調査では、米国の消費者の約6割が景気後退への不安から支出を抑えていると回答しています。
- フィナンシャル・タイムズは、米国資産への投資家心理が冷え込み、資金が欧州など他地域へ向かっていると伝えています。
5月には米国の港湾でコンテナ取扱量の減少が目立ち、小売・電子商取引の分野では品薄と価格上昇への警戒が高まりました。こうした「目に見える」コストが積み上がった結果、米中双方で「このままの関税対立は続けられない」との声が強まっています。
首脳同士の電話協議が後押し
ロンドン協議の背景には、習近平国家主席とトランプ大統領による最近の電話協議があります。両首脳はジュネーブ会合での進展を評価しつつ、相互尊重と互恵を土台に、経済分野での協議を定期的に続けていく方針を確認しました。
習主席は、中国は原則を持ちながらも協議に臨む姿勢を強調し、誤解や行き違いを避けるための継続的な対話の重要性を指摘しました。ロンドンでの協議は、こうした首脳レベルの意思が直接後押ししたものだといえます。
今回、両国は将来の協議の「枠組み」でしか合意していませんが、それでも関係の安定化に向けた一歩であり、今後の経済交流に一定の予見可能性を与える動きと受け止められています。
ラテンアメリカの視点:「最悪回避」への慎重な期待
米中の関係悪化は、ラテンアメリカにも少なからぬ影響を与えてきました。世界の二大経済が関税を応酬すれば、貿易と投資を通じて世界経済全体が減速し、その余波は新興国にも及びます。
そうしたなかで、今回のロンドン協議は、ラテンアメリカの政府や企業、投資家にとって「最悪のシナリオはひとまず遠のきつつあるのではないか」という慎重な楽観をもたらしています。
ラテンアメリカにとってのポイントは次のような点です。
- 世界経済の不確実性の軽減:米中対話が続けば、貿易や投資の見通しが立てやすくなり、企業の設備投資や雇用判断もしやすくなります。
- 金融市場の安定:関税対立がエスカレートすると、新興国通貨や資産が売られやすくなります。対話継続は、こうした急激な資本流出のリスクを和らげます。
- 多国間協調への期待:米中が全面対立ではなく協議を選ぶなら、世界貿易機関(WTO)など多国間の場でのルールづくりにも、再び現実味が出てきます。
とはいえ、今回合意したのはあくまで「枠組み」にすぎず、具体策が固まっていない段階です。ラテンアメリカでは、期待と同時に「再び関税がエスカレートするのでは」という警戒感も根強く、これが「慎重な楽観」というトーンにつながっています。
今後の焦点:構造問題と関税再発防止
今回のロンドン協議では、単なる関税の上げ下げだけでなく、より根深い構造問題が議題になったとされています。具体的には、貿易不均衡の是正や、一方的な措置に頼らない紛争解決の仕組みづくりなどです。
今後、世界が注目すべきポイントは次の3つでしょう。
- 米中が定期的な経済対話の枠組みを実際に運用できるか
- 構造問題について、双方がどこまで譲歩や妥協を図れるか
- 今年前半のような関税の再エスカレーションを、防止する仕組みを設計できるか
これらは米中だけでなく、ラテンアメリカを含む世界中の国と地域にとっても重大な関心事です。日本にとっても、為替や資源価格、物流コストを通じて、今回の協議の行方は企業活動や家計に影響を与えます。
「対話のチャンネル」をどう維持するか
今回のロンドン協議は、米中が少なくとも対話のチャンネルを維持する意志を示したという点で、国際社会にとって明るい材料です。一方で、具体策や数値目標といった合意内容はまだ見えておらず、今後数カ月の交渉が正念場となります。
ラテンアメリカを含む各地域のステークホルダーは、米中の動きに一喜一憂するだけでなく、自らの経済構造や対外戦略をどう多角化していくかを問われています。慎重な楽観を持ちつつも、次の一手を冷静に考える時期に来ているといえるでしょう。
2025年も残りわずかです。ロンドン協議を起点に、米中関係がどの方向へ進むのか。世界経済とラテンアメリカの行方を占う試金石として、今後の協議の中身を丁寧に追っていく必要があります。
Reference(s):
Cautious optimism in Latin America as China and U.S. talk again
cgtn.com








