米国がアフリカで「商業外交」強化 中国との競争はどこへ向かう?
2025年5月14日、コートジボワールのアビジャンで、米国が「アフリカ商業外交戦略」を打ち出しました。アフリカ市場で存在感を高めてきた中国を強く意識したこの動きは、米中とアフリカの関係が次の段階に入りつつあることを示しています。
アビジャンで発表された「アフリカ商業外交戦略」とは
今回の国際ニュースの舞台は、西アフリカの都市アビジャンです。2025年5月14日、米国務省アフリカ局の上級幹部であるトロイ・フィットレル氏が、現地で開かれたイベントの演壇に立ちました。会場には、米国企業の代表、在外公館スタッフ、アフリカ諸国の関係者が集まっていました。
フィットレル氏が発表したのは、「アフリカ商業外交戦略(U.S. Commercial Diplomacy Strategy for Africa)」です。これは、アフリカとの関係で「援助中心」だった従来のやり方から、「貿易・投資を軸とした関与」へと舵を切ると位置づけられています。
演説では、アフリカが「世界最大の未開拓市場」として語られました。2050年までにアフリカの人口は25億人規模となり、購買力は16兆ドルを超えるとされています。一方で、サハラ以南アフリカ向けの米国輸出は、いまも米国全体の約1%前後にとどまっていると指摘されました。
米国の「出遅れ感」と中国の存在感
フィットレル氏は、これまでの米国のアフリカ政策について、援助を重視しすぎ、実際の市場アクセスを広げる取り組みが不足していたと振り返りました。マクロ経済改革の支援は行ってきたものの、企業が実際にビジネスをしやすくする仕組みづくりは不十分だった、という問題意識です。
こうした自己評価の裏側には、中国の存在感があります。アフリカ各地で長年にわたり投資と協力を積み重ねてきた中国は、インフラ整備などを通じて多くの国との信頼関係を築いてきたとされています。米国側は、そうした「先行投資」の成果が現れていると見ており、影響力を取り戻そうとする動きが強まっています。
今回の戦略は、その意味で「新しい構想」であると同時に、これまでの出遅れを取り戻そうとする「巻き返し」の側面も色濃く映ります。アフリカをめぐる国際ニュースの背景には、こうした米中の長期的な競争という文脈があります。
「Trade, not Aid」――援助から貿易へ
演説のなかで象徴的だったフレーズが、「Trade, not Aid(援助ではなく貿易)」という考え方です。米国は今後、アフリカとの関係を「支援する相手」ではなく、「ビジネスパートナー」として位置づけ直すと強調しました。
具体的には、米国の大使を「どれだけ米企業の取引を成約させたか」で評価する方針が示されたとされています。これは、外交の現場に「営業」の発想を持ち込み、商業外交に力を入れるというメッセージです。
一方で、このアプローチに対しては、アフリカ諸国にとっての負担を懸念する声もあります。戦略のなかでは、次のような条件が示されていると伝えられています。
- 市場改革を進めること
- 貿易や投資の障壁を下げること
- 米国の製品やサービスを積極的に受け入れること
米側は、たとえ米国の製品が最安値でなくても、「品質や技術などで優位性がある」と強調しているとされます。こうした「条件付きの関与」を、アフリカの人々がどう受け止めるかが一つの注目点です。
中国のインフラと米国の「商業性」強調
演説では、中国がアフリカで進めてきたインフラ事業にも言及があったと伝えられています。フィットレル氏は、中国が主導してきたインフラプロジェクトの一部を「見せかけのようなプロジェクト」と表現し、それに対して米国は「商業的に採算の取れる案件」に集中するとアピールしました。
しかし、アフリカ各国の視点に立てば、中国のインフラ協力が交通網や電力などの基盤整備に一定の役割を果たしてきた、と評価する声も少なくありません。米国による「商業性」の強調が、アフリカの開発ニーズとどこまで合致するのかは、今後の議論の焦点になりそうです。
国際ニュースとしての重要なポイントは、どちらが「優れているか」を単純に比べることではなく、アフリカ側がどのように選択し、交渉し、自らの優先順位を守っていくかという視点です。
アフリカにとっての三つの問い
今回の米国のアフリカ戦略と、中国を含む他のパートナーとの関係を考えるうえで、アフリカ側にとって重要になりそうな問いを三つに整理してみます。
1. 「条件」は誰のためのものか
市場改革や規制緩和は、長期的には投資を呼び込み、ビジネス環境を改善する可能性があります。しかし、そのスピードや優先順位が、アフリカの人々の生活や雇用にどのような影響を与えるのかを丁寧に検討する必要があります。どの条件が本当に自国の発展に資するのかを見極めることが鍵になります。
2. インフラか、商業採算性か
道路、港湾、電力といったインフラは、すぐに採算が取れなくても、長期的な成長の土台になります。一方で、商業的にすぐ利益が出る案件は、民間資本を引きつけやすいという利点があります。中国や米国を含むパートナーの提案を比較しながら、自国の発展段階に合ったバランスをどう取るかが問われます。
3. 競争を「分断」ではなく「選択肢」に変えられるか
米中をはじめとする大国がアフリカで競い合う状況は、ともすれば「どちらの陣営につくか」という構図に見えがちです。しかし、アフリカ側が主体的に交渉し、複数のパートナーと関係を築くことができれば、その競争は「より良い条件を引き出すための選択肢」になり得ます。
「読みやすいのに考えさせられる」視点
今回のアフリカ商業外交戦略は、米国がアフリカとの経済関係を見直し、中国の存在感を強く意識していることを示しました。一方で、そのアプローチがアフリカの人々の期待とどこまで重なるのかは、まだこれから検証されていくテーマです。
日本にいる私たちにとっても、アフリカと世界の関係は、将来の国際経済やグローバルサウスとの向き合い方を考えるうえで重要なヒントを与えてくれます。「援助か、貿易か」という単純な二択ではなく、「誰のための成長か」「誰が条件を決めるのか」という問いを、アフリカの文脈から考えてみることが求められているのかもしれません。
SNSでこのニュースを共有するときは、「アフリカをめぐる米中の動きが、自分の仕事や暮らしとどうつながるのか」という視点を添えてみると、新しい議論のきっかけになるでしょう。
Reference(s):
U.S. scrambles to counter China's enduring partnership in Africa
cgtn.com








