中国と中央アジア、「グリーン政策」で広がる新協力フロンティア
2025年6月にカザフスタンで開催された第2回中国・中央アジアサミットでは、中国と中央アジア諸国の協力が「グリーン政策」という新たな段階に入りつつあることが鮮明になりました。一帯一路構想(BRI)の第1段階を支えた道路や鉄道、エネルギー・パイプラインといったインフラから、これからは再生可能エネルギーや産業構造の転換が主役になりつつあります。資源依存と環境リスクに直面する中央アジアと、世界最大級のグリーン産業基盤を持つ中国――その組み合わせは、地域の経済モデルを静かに変え始めています。
一帯一路、「運ぶ」から「グリーン産業」へ
これまでの一帯一路協力は、高速道路や鉄道、エネルギー・パイプラインなど「モノを運ぶ」インフラ整備が中心でした。第2回中国・中央アジアサミットを通じて見えたのは、次の段階として、グリーン産業への転換をどう支えるかという視点が前面に出てきたことです。
インフラ投資によって物流やエネルギー供給のボトルネックを解消したあと、その上にどのような産業を築くのか。中国と中央アジアの協力は、ハードインフラから、技術・人材・金融を含む「産業エコシステム」づくりへと軸足を移しつつあります。
資源依存と環境リスクに揺れる中央アジア
中央アジアは世界有数の資源地帯でありながら、経済構造は依然として化石燃料や一次資源の輸出に大きく依存しています。カザフスタンでは輸出額の約6割を原油が占め、トルクメニスタンでは天然ガスが経済の柱となっています。
同時に、この地域は深刻な環境リスクにも直面しています。砂漠化の進行、水資源の逼迫、不安定になりつつある気象パターンが農業生産性を押し下げ、もともと脆弱な生態系にさらなる負荷を与えています。経済成長と環境保護を両立させる新しいモデルが求められているのです。
眠る再エネポテンシャル、その規模
一方で、中央アジアには手つかずの再生可能エネルギー資源が豊富に存在します。再生可能エネルギー分野の研究によると、中央アジア全体の太陽光と風力の潜在的な発電容量は1,700〜3,900ギガワットに達しうると試算されています。これは、将来のエネルギー需要のかなりの部分を賄える規模です。
しかし、このポテンシャルを現実の電力供給や雇用創出につなげるには、資本と技術だけでなく、産業政策そのものの発想転換が必要になります。単に発電所を建設するだけでなく、部品製造、保守サービス、人材育成、金融までを含む産業チェーンをどう設計するかが鍵となります。
グリーン産業の「エコシステム」を経験した中国
中国は、世界最大の太陽光・風力発電産業を築き、電池生産でも世界をリードしています。注目すべきなのは、こうした設備を製造するだけでなく、企業群、研究開発機関、訓練機関、金融機関などが連携する「グリーン産業エコシステム」を国内で構築してきた経験を持つ点です。
原料輸出からの脱却と産業多角化を目指す中央アジア諸国にとって、このモデルは重要な示唆を与えます。どのようにして高付加価値の産業を育てるのか、どうやって技術と人材を集積させるのか。中国との協力は、単なる設備輸入にとどまらず、産業政策そのものをデザインし直すプロセスを支える可能性があります。
中国・中央アジア協力の次の一歩
グリーン政策を軸にした中国と中央アジアの協力は、今後どのような方向に進むのでしょうか。考えられる柱は、例えば次のようなものです。
- 再生可能エネルギー発電設備と送電網への共同投資
- 太陽光パネルや風力発電機、蓄電池などの製造を含むグリーン産業クラスターの形成
- 研究機関や職業訓練センターを通じた技術移転と人材育成
- 環境に配慮した産業政策やインセンティブ設計におけるノウハウの共有
重要なのは、電力インフラを増やすこと自体がゴールではないという点です。その周辺に新たな雇用と付加価値を生み出す産業をどこまで育てられるかによって、グリーン政策が地域社会にもたらす恩恵は大きく変わります。この意味で、中国の経験と中央アジアの資源・地理的条件は、互いを補い合う関係にあります。
日本の読者への問いかけ
中国と中央アジアのグリーン協力は、ユーラシア大陸のエネルギーマップや産業チェーンの姿を静かに変えていく可能性があります。日本を含む周辺の国や企業にとっても、エネルギー価格、環境規制、脱炭素技術の普及といった形で間接的な影響が及ぶかもしれません。
私たちがニュースとして注視したいポイントは、(1)中央アジア諸国の化石燃料依存の度合いがどのように変化するのか、(2)再生可能エネルギー関連の産業がどの地域に集積していくのか、(3)それが雇用や地域格差にどんな影響を与えるのか、という三つです。
中国と中央アジアがグリーン政策を軸にどこまで協力を深めるのか。その行方は、気候変動対策だけでなく、これからの国際経済のかたちを考えるうえでも重要なヒントを与えてくれます。
Reference(s):
Green policies as a new frontier for China-Central Asia cooperation
cgtn.com








