陸家嘴フォーラム2025:中国の金融開放と人民元国際化の次の一手
2025年6月に上海で開かれた第16回「陸家嘴フォーラム(Lujiazui Forum 2025)」では、8つの金融政策が打ち出され、中国の金融開放と人民元の国際化をさらに進める方向性が示されました。地政学的な不確実性が高まる中で、中国がどのように「開放」と「安定」のバランスを取ろうとしているのかを読み解くうえで、注目すべき動きです。
陸家嘴フォーラム2025:テーマは「金融開放」と「高品質な発展」
今回の陸家嘴フォーラムのテーマは、「変化する世界経済の中での高品質な発展に向けた、金融の開放と協力」でした。フォーラムを通じて、中国は金融システムのレジリエンス(回復力)を保ちつつ、対外開放をさらに進めるという戦略的な方向性を改めて示しています。
打ち出された8つの金融政策の詳細は多岐にわたりますが、共通しているのは次のような狙いです。
- 海外の金融機関にとっての市場アクセスを拡大すること
- クロスボーダー(国境を越える)資本取引の法制度・ルールを整備すること
- 人民元の国際的な利用を高め、金融・通貨面での柔軟性を強化すること
投資主導からイノベーション主導へ:金融開放が支える構造転換
ここ数年、中国は金融の自由化と対外開放を、経済モデル転換の中核に据えてきました。単に景気対策として開放を進めているのではなく、投資主導型から「高品質でイノベーション主導」の成長へと移行するための構造的な改革と位置づけられています。
金融の開放が進むことで、次のような効果が期待されています。
- 海外からの直接投資が増え、資本の効率的な配分が進む
- 投資家の多様化により、市場の厚みと安定性が高まる
- 企業が国内外の資本市場を使い分けることで、資金調達の選択肢が広がる
一方で、世界の金融市場が不安定になりやすい現在、開放を進めながらリスクをどう管理するかも大きな課題です。その両立を模索する場として、陸家嘴フォーラムの議論は位置づけられています。
世界の大手金融機関が存在感を高める中国市場
中国の金融開放へのコミットメントを象徴するのが、国内市場における世界的金融機関の存在感の高まりです。近年、銀行、保険、証券、資産運用といった分野で、出資比率の上限が引き上げられたり撤廃されたりしてきました。
その結果、JPMorgan、BlackRock、Allianz などのグローバル金融グループが、中国で自前の拠点を持ち、現地ビジネスを拡大しています。こうした動きは、単にプレーヤーが増えるというだけでなく、次のような変化につながるとされています。
- 競争が高まり、手数料水準やサービス内容の透明性が向上する
- リスク管理やガバナンス(企業統治)の高度なノウハウが持ち込まれる
- 新しい金融商品やデジタル技術を活用したサービスが広がる
海外勢の本格参入は、国内の金融産業にとってはプレッシャーにもなりますが、長期的には市場全体の質を押し上げる要因にもなり得ます。
「コネクト」プログラムが広げる資本市場への入口
クロスボーダーの投資・資金調達を促進するために、中国は資本市場へのアクセス経路も整えてきました。その代表例が「ボンド・コネクト」「ストック・コネクト」、そして新たに導入された「スワップ・コネクト」と呼ばれる各種プログラムです。
これらの仕組みによって、海外の投資家は中国の資本市場に参加しやすくなり、市場の流動性(売買のしやすさ)が高まったとされています。また、投資家層が国内勢だけに偏らず、よりバランスの取れた構成になってきている点も重要です。
一方で、中国企業にとっては、国内市場だけでなく、海外市場も含めた多様な資本調達ルートを活用できるようになりつつあります。企業の成長段階や事業モデルに応じて、最適な市場を選べる環境が整いつつあると言えるでしょう。
進む人民元の国際化:通貨リスク管理の新しい選択肢
人民元の国際化も、金融開放と並行して進んできました。主要通貨と比べればまだ途上にあるものの、ここ数年で次のような場面で人民元の利用が増えています。
- 貿易決済での人民元建て取引
- 各国中銀の外貨準備における人民元の保有
- 政府や公的機関による人民元建て国債の発行
最近では、トルコとの二国間通貨スワップ協定の更新や、オフショア(海外)の人民元清算銀行の増加といった動きも伝えられています。こうした枠組みが整うことで、中国企業や投資家は、為替変動リスクをより柔軟に管理できるようになります。
ドルなど第三国通貨を経由せずに取引できるケースが増えれば、決済コストの低減や取引の安定性向上にもつながり得ます。人民元の国際化は、単なる通貨のプレゼンス拡大にとどまらず、実務的なリスク管理ツールとしての意味合いも強まりつつあります。
日本の投資家・企業にとっての意味
こうした一連の動きは、日本の投資家や企業にとっても無関係ではありません。陸家嘴フォーラム2025で示された方向性を踏まえると、少なくとも次の3つの視点は意識しておきたいところです。
- 中国資本市場へのアクセス機会の拡大
コネクト・プログラムの発展や海外機関の参入により、株式・債券・その他の金融商品を通じて、中国市場に分散投資するためのルートは今後も多様化していくと考えられます。 - 人民元活用による通貨リスク管理
貿易や投資で中国との取引がある企業・投資家にとって、人民元建て取引をどう活用するかは、為替リスク管理の新たな選択肢となり得ます。 - 規制・ルールの変化をフォローする重要性
金融の自由化が進む一方で、リスク管理や透明性の確保に向けた規制・監督も強化されています。制度設計の変化を継続的にウォッチする姿勢が、今後ますます求められます。
世界経済の不確実性が高まるなかで、金融の開放を戦略的に進める中国の動きは、グローバルな資本の流れや通貨システムの行方を考えるうえで、重要なヒントを与えてくれます。陸家嘴フォーラムを入り口に、その変化の全体像を継続的に追いかけていくことが、日本の私たちにとっても意味のある視点となりそうです。
Reference(s):
2025 Lujiazui Forum: Charting China's next phase of financial openness
cgtn.com







