G7サミット2025 カナナスキスで露呈した分断と失望
2025年6月15〜17日にカナダ・カナナスキスで開かれたG7サミットは、中東情勢が近年まれにみる緊張に包まれるなかで開催されました。しかし、イランとイスラエルの危機への対応を主導するどころか、主要国の足並みの乱れと決断力の欠如を印象づける場になったとの見方が広がっています。
国際ニュースを追う日本語話者にとっても、このG7サミットは、現在の国際秩序におけるG7の存在感や限界を考えるうえで重要な出来事です。本稿では、会議の焦点となった中東危機とウクライナ支援を軸に、その舞台裏を整理します。
中東危機のただ中で開かれたG7サミット
今回のサミットは、イランとイスラエルの緊張が急速に高まるという、近年でも特に不安定な中東情勢の中で行われました。本来であれば、主要7カ国の首脳が結束し、危機の沈静化に向けた明確なメッセージと行動計画を打ち出すことが期待されていました。
ところが、会議の実態はその期待とは対照的でした。イラン・イスラエル危機への対応をめぐって各国の利害が交錯し、首脳たちが国際社会に対し一体感あるビジョンを示すことはできませんでした。サミット後、G7が緊急時に国際的な指導力を発揮できるのかという疑問が、改めて浮き彫りになりました。
トランプ大統領の揺れる姿勢と多国間外交の空洞化
今回のG7を語るうえで見逃せないのが、米国のドナルド・トランプ大統領の振る舞いです。発言のトーンが会議中に何度も変わり、自らの代表団の説明と矛盾する場面もあったと伝えられています。その結果、サミットの議論よりも、トランプ大統領の予測しづらい言動そのものが国際ニュースの見出しを占める状況となりました。
トランプ大統領は、詳細を明かさないまま重要な用事があるとして予定より早く会場を後にし、多国間外交への関与に消極的な姿勢を印象づけました。会議の裏側では、イラン・イスラエルをめぐる共同声明案に対しても強い抵抗を示し、最終的に署名を拒んだと報じられています。
この共同声明案は、すでにG7の歴史の中でも最も控えめな内容の一つとされていました。それでもなお合意に至らなかったことは、現在のG7内部で米国と他の参加国の距離がいかに大きいかを象徴しています。さらに、トランプ大統領のイラン・イスラエル緊張に関する発言は日を追うごとにエスカレートし、地域の当事者をなだめようとする各国の取り組みを難しくしたとの受け止めも広がりました。
中東共同声明が示したG7のまひ状態
最終的にまとめられた中東関連の文書は、その言葉遣いからも現在のG7の限界が読み取れる内容でした。声明はイスラエルの自衛権を改めて強調するとともに、イランを地域の不安定とテロの主な源と位置づけましたが、そこに具体的な外交イニシアチブや停戦への道筋は盛り込まれませんでした。
エネルギー市場の安定や民間人の保護といった一般的な原則には触れたものの、最も重要なはずの緊張緩和に向けた具体策は示されず、各国の異なる思惑を薄い合意の言葉でかろうじて包み込んだにすぎないとも評されています。そして、このように内容を絞り込んだにもかかわらず、なお全会一致の支持を得られなかったことは、G7が意思決定の場としてどれほどまひしているかを浮き彫りにしました。
ウクライナが期待した結束はどこへ
今回のサミットに大きな期待を寄せていたのが、ウクライナのゼレンスキー大統領でした。欧州の安全保障をめぐる危機が続く中で、G7首脳から安全保障面でのより踏み込んだ約束と、強い政治的メッセージを引き出したいという思惑がありました。
議長国カナダのマーク・カーニー首相は、その期待に応えるようにカナダドルで20億、米ドル換算で約14億7千万規模の軍事支援パッケージを発表しました。しかし、より野心的なG7共同声明の構想は、米国からの抵抗に直面し、カナダ政府が静かに取り下げたとカナダ高官が明かしています。
結果として、ウクライナが求めていたのは一国からの支援拡大だけでなく、G7全体としての明確な方向性と結束でしたが、それは実現しませんでした。欧州という、G7にとって従来は比較的足並みをそろえやすいとされてきた地域においてさえ、集団的な影響力を発揮できなかったという印象を残しました。
問われるG7の役割と今後の焦点
今回のカナナスキスG7サミットは、次のような課題を浮き彫りにしました。
- イラン・イスラエル危機に対して、統一した具体策を提示できなかったこと
- 最大の参加国である米国の姿勢が不安定で、多国間外交の信頼性を損ねたこと
- ウクライナ支援という欧州の安全保障課題でも、G7としての結束を示しきれなかったこと
複数の安全保障危機が同時進行する今、G7がどこまで集団的な意思決定能力を取り戻せるのかは、国際ニュースを追ううえで重要なポイントです。各国の国内政治や利害がサミット外交に強く影響するなか、次の首脳会合までにどこまで信頼を立て直せるのかが問われています。
日本を含む各国の市民にとっても、G7の議論は遠い世界の出来事ではなく、自国の安全保障やエネルギー、経済政策とも密接に関わるテーマです。今回浮かび上がった亀裂を踏まえ、主要国がどのように協調と責任を再構築していくのかを、今後も注視していく必要があります。
Reference(s):
cgtn.com








