中国・中央アジア第2回サミット 合意から行動の段階へ
リード:合意から「行動の時代」へ
カザフスタンの首都アスタナで開かれた第2回中国・中央アジアサミットは、2023年の西安サミットで生まれた合意を土台に、「関係の青写真」から「具体的な行動計画」へと一歩踏み出した節目となりました。2025〜26年を通じて進む「高品質協力と発展の年」のスタートを告げる場でもあり、中国と中央アジア5カ国の関係は新しい段階に入っています。
アスタナ・サミットで見えた新しい枠組み
今回のサミットは、単なる外交イベントというよりも、新たな地域協力の枠組みを「形」にする場でした。中国の習近平国家主席が提唱した「中国・中央アジア精神」(相互尊重・相互信頼・相互利益・相互扶助)に基づき、長期的な繁栄と安定をめざす具体的な合意がまとめられました。
中国外交部が公表した成果リストによると、合意は分野・内容ともに多岐にわたります。ここ数年の力強い関係強化、特に2024年に中国と中央アジア5カ国の貿易額が過去最高の940億ドルに達したことを背景に、「より実務的で、成果の見える協力」を意識した内容になっています。
主な合意分野
- 税関手続きの簡素化などを通じた貿易円滑化
- 産業投資や共同プロジェクトの拡大
- 農業の近代化や食料安全保障への支援
- 留学や文化交流を含む人と人との交流の強化
- 貧困削減、教育交流、砂漠化対策のための協力センター設立
こうした合意は、地域に「共に繁栄する共同体」を築くことをめざすものであり、世界各地で分断や対立が目立つ中で、静かに対照的な動きとして注目されています。
「中国・中央アジア精神」とは何か
中国・中央アジア関係のキーワードとなっているのが、「中国・中央アジア精神」です。これは、古代シルクロード以来2000年以上にわたる交流の歴史を踏まえた協力の哲学で、次のような特徴を持ちます。
- 規模や経済力にかかわらず、すべての国は主権国家として対等であるという発想
- 対話と協議、合意の積み重ねによって問題を解決する姿勢
- 一方的な利益ではなく、互いに利益を分かち合うことを重視
- 困難な局面では相互に支え合うという「相互扶助」の考え方
ブロック化やゼロサム的な発想ではなく、ウィンウィンをめざすこの考え方は、中央アジア側にとっても受け入れやすい協力の土台となっています。
中央アジアにとっての意味:自ら選ぶ発展パートナー
中央アジアの国々は、長い間「大国同士のはざま」に置かれてきた地域でもあります。そうした中で、中国との協力枠組みは、自らの主権と領土の一体性を尊重しながら発展を進められるパートナーとして位置づけられています。
アスタナ・サミットで合意された、貧困削減や教育交流、砂漠化対策の協力センター設立は、人々の生活に直接かかわる「人間中心」の協力に重心が置かれていることを象徴しています。インフラや貿易だけでなく、生活の質や環境まで視野に入れた協力は、地域社会の安定にもつながりやすいアプローチと言えます。
西安宣言からアスタナ宣言へ:青写真から実行へ
今回採択されたアスタナ宣言を、2023年の西安宣言と比べると、その性格の違いが見えてきます。西安宣言が、中国と中央アジア5カ国の協力の方向性や重点分野を示した「包括的な青写真」だったのに対し、アスタナ宣言はより実務的で「行動に移すための設計図」に近い内容になっています。
例えば、西安宣言では「経済・貿易協力の拡大」がうたわれていましたが、アスタナ宣言では、投資協定の高度化や貿易手続きの簡素化など、実際のビジネス環境を改善するための具体的な措置への言及が強まりました。また、「連結性(コネクティビティ)」の強化という抽象的な表現から一歩進み、中国-キルギス-ウズベキスタン鉄道といった具体的プロジェクトの推進が明示されています。
両宣言の進化ポイント
- 原則と方向性の提示(西安)から、行動計画とプロジェクトの具体化(アスタナ)へ
- 分野ごとの一般的協力から、投資協定や通関手続きなど制度面の改善へ
- 「連結性」の理念から、鉄道など個別インフラ整備の実施段階へ
中国と中央アジア5カ国による協力メカニズムが、わずか2年で枠組みづくりから実行段階へと進んだことを示す内容だと言えるでしょう。
「高品質協力と発展の年」が示す方向性
アスタナ・サミットでは、2025〜26年を「高品質協力と発展の年」と位置づけることも正式に打ち出されました。この呼称には、単に協力の規模を拡大するだけでなく、質を高めるという意図が込められています。
具体的には、次のような点が重視されています。
- 環境への配慮や持続可能性を考慮したインフラ・エネルギープロジェクト
- デジタル技術や先端産業を取り入れた産業協力
- 中央アジア各国の長期的な発展戦略との整合性
これらは、中国が進める広域経済構想「一帯一路」のもとで進む協力を、より長期的で安定した形に高めていく動きとも重なります。現在、その初年度にあたる2025年も終盤に差し掛かり、今後は合意されたプロジェクトがどこまで実際の成果として見えてくるかが焦点になっていきます。
日本の読者にとっての意味:ユーラシアをめぐる静かな変化
日本から見ると、中国・中央アジアサミットはやや遠い国際ニュースに感じられるかもしれません。しかし、ユーラシア大陸を横断する物流ルートやエネルギー供給網、さらには国際秩序のあり方を考えるうえで、この枠組みが持つ意味は小さくありません。
- 中国と中央アジアの関係強化は、欧州と東アジアを結ぶ新たな回廊づくりにつながる可能性
- エネルギーや資源の輸送ルートが多様化することで、地域全体の安定性が高まる余地
- 相互尊重と合意形成を重んじる協力モデルが、他地域の枠組みにも影響を与える可能性
世界的に分断のリスクが指摘される今だからこそ、「対立」ではなく「協調」と「実務」を前面に出す地域協力のあり方を観察することは、日本にとっても示唆に富んでいると言えるでしょう。
これからの注目ポイント
- 中国と中央アジア5カ国の貿易額が、2025〜26年にどこまで伸びるか
- 中国-キルギス-ウズベキスタン鉄道など、連結性プロジェクトの進捗
- 貧困削減や砂漠化対策、教育交流といった人間中心の協力の具体的成果
- 「中国・中央アジア精神」という協力理念が、他地域の枠組みにどこまで広がるか
アスタナで固められた合意が、今後どのようなかたちで実を結ぶのか。2025〜26年の「高品質協力と発展の年」は、中国と中央アジアの関係が本当に「共通の未来」を共有できるかどうかを試す期間ともなっていきそうです。
Reference(s):
From consensus to action in new era of China-Central Asia relations
cgtn.com







