世界難民の日特集:難民の物語とSNS時代の「共感」を考える video poster
2025年の世界難民の日に合わせて放送された国際ニュース番組『The Hub』の特別版で、国連グローバル・コミュニケーション担当事務次長のMelissa Fleming(メリッサ・フレミング)氏と、シリア紛争を生き抜いたDoaa Al Zamel(ドア・アル・ザメル)さんが、難民として生きる現実とソーシャルメディア時代の「共感」について語りました。
司会を務めたWang Guan(ワン・グアン)氏は、世界難民の日をきっかけに、フレミング氏の著書『A Hope More Powerful Than the Sea』の主人公であり、同書の中国語版が刊行されたタイミングで注目を集めるアル・ザメルさんをスタジオに迎えました。
世界難民の日に届いた「ひとり」の物語
アル・ザメルさんは、シリア内戦から逃れるために祖国を後にし、紛争と不安定さが続く地域を転々としながら、安全な場所を求めて旅を続けてきました。その「特別な旅」は、内戦による暴力や恐怖だけでなく、住み慣れた土地や人間関係から突然引き離される痛みを伴うものだったといいます。
番組では、彼女がどのようにして紛争から逃れ、見知らぬ土地で新しい生活を築こうとしているのか、その過程で感じた恐怖や希望が、本人の言葉で語られました。難民という言葉の背後にある、ひとりひとりの人生の重さが伝わってきます。
著者と主人公が語る「海よりも強い希望」
フレミング氏は、国連での広報の仕事を通じて数多くの難民に出会ってきました。著書『A Hope More Powerful Than the Sea』では、その出会いの中でも特に象徴的な存在としてアル・ザメルさんの物語を描いています。
番組では、著者と本人が同じ場で対話することで、物語が「本の中の話」から「いま目の前で続いている現実」へと立ち上がってくる様子が印象的でした。さらに、この本の中国語版が出版されたことで、より多くの中国語話者がこの物語に触れられるようになり、難民問題を自分ごととして考えるきっかけが広がりつつあります。
世界の難民が直面する現実
フレミング氏とアル・ザメルさんは、アル・ザメルさん個人の経験にとどまらず、世界各地の難民が共通して直面する課題にも光を当てました。
- 紛争や迫害から逃れる過程での、命の危険と不安定な避難生活
- 受け入れ先の国や地域での、住居・教育・就労など生活基盤の確保の難しさ
- 「難民」というラベルゆえに向けられる偏見や差別、社会からの孤立
数字や統計だけでは見えにくいこうした現実を、アル・ザメルさんの具体的な経験を通して伝えることで、番組は視聴者に「もし自分や家族だったら」と想像することを促していました。
SNS時代の誤情報とヘイトスピーチ
今回の特集では、ソーシャルメディア上の誤情報やヘイトスピーチの問題も重要なテーマとして取り上げられました。難民に関する、根拠のないうわさや誇張された情報がオンラインで広がることで、偏見や恐怖が増幅されやすい現状があります。
番組で示されたポイントは、SNSを日常的に使う私たちにとっても、他人事ではありません。
- センセーショナルな見出しや投稿ほど、事実確認されないまま拡散されやすい
- 難民や移民を一括りにしたネガティブなイメージが、ヘイトスピーチを生みやすい
- アルゴリズムによって、似た情報ばかりが表示され、視野が狭くなりがちである
フレミング氏は、誤情報を見かけたときには一呼吸おいて信頼できる情報源を確認すること、そして、難民や少数者に向けられた憎悪表現に沈黙せず、事実に基づいた対話を促すことの大切さを強調しました。
見出しの向こう側にいる人を想像する
今回の世界難民の日特集の中心にあったのは、「見出しの向こう側にいる人間の姿を見てほしい」というメッセージでした。ニュースでは「何万人の難民」「どこか遠い国の紛争」といった抽象的な表現が並びがちです。
しかし、アル・ザメルさんの語りは、その一つひとつの数字の裏に家族があり、友人があり、夢や将来の計画があったことを思い出させます。難民を「かわいそうな存在」として消費するのではなく、私たちと同じように希望や恐れを抱く隣人として見る視点が求められているといえます。
国際社会と私たちにできること
番組の終盤では、国際社会が難民を支えるために行っている取り組みとともに、「世界全体としての思いやりと行動」が今こそ必要だと訴えられました。国連や各国の取り組みにも触れながら、二人は、紛争や不安定さによって故郷を追われる人がいまも世界各地にいることを改めて指摘しました。
同時に、「行動」といっても、必ずしも大きなことを意味するわけではありません。視聴者一人ひとりにできることとして、例えば次のようなステップが挙げられました。
- 難民の当事者の声や信頼できる国際ニュースに触れ、状況を知ろうとし続けること
- SNSで誤情報を拡散しない・見つけたら静かに訂正する姿勢を持つこと
- 身近な会話の中で、難民に対する偏見やステレオタイプを見かけたときに疑問を投げかけること
- 可能であれば、難民支援に取り組む団体や地域コミュニティの活動を継続的に応援すること
世界難民の日の特別番組『The Hub』は、難民問題を「遠い国のニュース」から「自分とつながるテーマ」へと引き寄せる試みでもありました。ヘッドラインの裏側にある人間の物語に耳を傾けること。それが、誤情報とヘイトがあふれる時代にあっても、より良い選択をするための第一歩なのかもしれません。
Reference(s):
World Refugee Day Special: INTV with Melissa Fleming & Doaa Al Zamel
cgtn.com








