中国の新興テクノロジーが世界経済の新たな成長エンジンに
今年6月、天津で開催された「第16回ニュー・チャンピオンズ年次総会(2025年夏ダボス)」では、中国の新興テクノロジーが世界経済の新しい成長エンジンとして改めて注目されました。
2025年夏ダボスが映し出した「新しい起業家精神」
第16回ニュー・チャンピオンズ年次総会(2025 Summer Davos)は、2025年6月24〜26日に天津市で開かれました。テーマは「新しい時代の起業家精神」。約1,800人の参加者が、90を超える国と地域から集まりました。
世界経済が地政学的な緊張、技術革新の加速、持続可能性の課題という「三重の試練」に直面するなか、中国の新興テクノロジー戦略は、その出口のひとつとして語られています。
世界最大のデジタル経済、中国が賭ける新興テック
世界最大のデジタル経済を持つ中国は、人工知能(AI)、第5世代移動通信(5G)、モノのインターネット(IoT)、ブロックチェーンといった分野に戦略的な投資を続けています。
- 国内では、産業構造の転換やデジタル化を加速するエンジンとして
- 国際的には、技術の波及効果や標準づくり、共有できるデジタル生態系の構築を通じて、世界経済に新しい活力を与える存在として
こうした二重の役割こそが、「中国発の新興テクノロジー」に世界の視線が集まる理由だといえます。
新興テクノロジーはなぜ「生産性のエンジン」になるのか
かつてデジタル技術は、既存ビジネスに付け足す「便利なツール」と見なされることが多かったかもしれません。しかし現在、中国で進む新興テックの活用は、産業そのもののルールを書き換えつつあります。
たとえばAIを使ったプログラミング支援や企業経営のツールは、すでに幅広く導入され、企業や個人のコストを大きく引き下げています。人が行っていた反復作業をAIが肩代わりすることで、時間や人的リソースをより付加価値の高い業務に振り向けられるようになっています。
工場とサプライチェーンで進む「デジタルツイン」
IoTと「デジタルツイン」(現実の設備や工場の状態を仮想空間上に再現する技術)は、中国の製造業の姿を変えつつあります。
センサーで集めた膨大なデータをもとに、工場の稼働状況をリアルタイムで把握し、仮想空間上で生産ラインの調整やシミュレーションを行うことで、次のような変化が起きています。
- 設備の故障を予測し、停止時間を最小限に抑える
- 需要の変化に応じた柔軟な生産体制(マスカスタマイゼーション)を実現する
- 企業間でデータを共有し、サプライチェーン全体で効率を高める
多くの企業が「データドリブンな経営」や「ネットワーク型の協調生産」に舵を切っていること自体、中国が新興テクノロジーへの投資を長期的に積み重ねてきた成果といえます。
世界経済への波及:標準づくりとエコシステム
中国の新興テックが世界にもたらす影響は、大きく三つの側面から語ることができます。
- 技術の波及(スピルオーバー)
中国市場で磨かれたAIやIoTの技術・サービスが、アジアをはじめとする世界各地に展開されることで、新興国を含む多くの国・地域で生産性向上のチャンスが生まれます。 - 国際標準づくりへの参加
5GやIoTなどの分野では、通信規格やデータフォーマットなどの国際標準が重要です。中国企業や研究機関がこの議論に深く関与することで、相互接続性の高いグローバルなデジタル基盤づくりが進みつつあります。 - 共有できるエコシステムの構築
オープンなプラットフォームや開発ツールを通じて、各国の企業やスタートアップが中国発の技術を組み合わせ、新しいサービスやビジネスモデルを生み出す動きも広がっています。
持続可能性・リスクとどう向き合うか
一方で、急速な技術革新は、雇用構造の変化やデータ保護、倫理的な利用といった新しい課題も生み出します。2025年夏ダボスで交わされた議論は、まさに次のような問いを私たちに投げかけています。
- 新興テクノロジーが生み出す生産性向上の果実を、社会全体でどう分かち合うのか
- データやAIを、持続可能で包摂的な成長につなげるためのルールづくりをどう進めるのか
- 地政学的な緊張が高まるなかで、国際協調をいかに維持・強化するのか
中国の新興テック戦略は、これらの問いに対する一つの実験でもあります。世界経済が新しい成長モデルを模索する2025年のいま、その動きを日本からどう理解し、どのように関わっていくのかが問われています。
一歩引いて考えるための視点
中国の新興テクノロジーをめぐる議論は、ともすれば賛否や安全保障の観点だけに収れんしがちです。しかし、2025年夏ダボスが示したのは、それを「世界全体の生産性と持続可能な成長」という大きな枠組みの中で捉え直す必要性でした。
スマートフォン一つで世界とつながる私たちの日常は、すでに中国を含む多くの国・地域のテクノロジーによって支えられています。だからこそ、感情的な二項対立ではなく、冷静にデータと事例を見ながら、自分なりの視点を更新していくことが求められているのではないでしょうか。
Reference(s):
cgtn.com








