中国のイノベーション戦略は世界成長のヒントか 天津サマーダボスで見えた姿 video poster
貿易摩擦や地政学リスクが重なり、世界経済の不透明感が強まるなか、中国の天津で開幕したサマーダボス(夏季ダボス会議)では、中国のイノベーション主導型の成長モデルがあらためて注目されています。世界の成長エンジンをどこに求めるべきかという問いに対し、その一つの答えを中国の議論から探ります。
世界経済の逆風と天津サマーダボス
世界ではいま、貿易摩擦、地政学的な対立、金融市場の不安定さなど、成長を押し下げる要因が重なっています。各国がインフレ対応や産業政策に追われる一方で、協調の枠組みづくりは遅れがちです。
こうした中、今週、中国の天津で世界経済フォーラムの年次会合として知られるサマーダボスが開幕しました。世界各地から政府関係者、企業経営者、研究者など数千人が集まり、世界経済をどう立て直していくかを議論しています。
中国が掲げる「新質生産力」とイノベーション
世界第2位の経済規模を持つ中国は、成長の軸を新質生産力へとシフトさせつつあります。イノベーションを先頭に据えたこの概念は、高度な技術、高い効率、高品質を特徴とし、新しい発展理念に沿った生産力を指します。
米コロンビア大学のジェフリー・フリーデン教授は、イノベーションこそが経済成長の秘密だと指摘します。研究開発への投資、教育への投資、人材のスキル向上への投資を続ける国ほど、開発の壁を突破できるという見方です。
中国は人工知能(AI)の高度化から、量子コンピューティング、バイオ製造に至るまで、次世代技術への投資を加速させています。未来の経済地図を自ら描き出そうとしていると言えそうです。
データで見る中国のイノベーション力
グローバル・イノベーション・インデックス2024によると、中国は世界ランキングで12位から11位へと一つ順位を上げました。過去10年で最も速いペースで順位を伸ばしてきた経済の一つと位置づけられています。
国内の産業構造も変化しています。2024年には、中国全土のハイテク産業開発区が生み出す工業付加価値が、全国の24.1%を占めました。デジタル経済の中核となる産業も拡大し、その付加価値は国内総生産(GDP)の約1割に達しています。
電気自動車(EV)の分野では、中国が世界最大の市場となり、サプライチェーン全体で重要な役割を担っています。ノボ・ホールディングスのアジア統括責任者アミット・カカル氏は、中国が水素エネルギーや核分裂・核融合など次世代エネルギーにも積極的に取り組んでいることを挙げ、医療技術の分野でもイノベーションが進んでいると評価しました。
カカル氏はさらに、中国は精密機械をはじめとする最先端の製造技術とAIロボティクスなどの新しいツールを組み合わせることで、世界の工場から世界のイノベーション拠点へと見方を変えつつあると述べています。
専門家が見る中国経済の見通し
世界経済フォーラムのサーディア・ザヒディ専務理事は、世界各地のチーフエコノミストを四半期ごとに調査していると説明します。その結果、先行きに前向きな見方が優勢なのは、南アジアと中国の二つの地域だけだといいます。
多くのチーフエコノミストが、中国については中程度から力強い成長を予想し、5%前後の成長目標に近づく、あるいは達成する可能性が高いと見ているといいます。こうした楽観的な見方は、中国のイノベーション重視の政策と結びついているとみることもできます。
フリーデン教授も、中国は世界最大の輸出国であり、最大級の製造業大国であることから、今後の世界経済の行方に大きな影響力を持つと位置づけます。やがて世界最大の経済となる可能性にも言及し、その役割の重要性を強調しました。
保護主義の逆風の中で問われる中国発の解決策
各国で保護主義的な動きが強まるなか、中国はイノベーションと国際協力の双方を掲げています。科学技術分野での対外開放や協力の枠組みを広げ、世界全体の課題解決に貢献しようとする姿勢を打ち出しています。
こうした取り組みが、中国の経済成長が予想を上回っている背景にある、という見方も示されています。世界経済が直面する成長の停滞、分断のリスク、格差拡大といった課題に対し、イノベーションと協調を軸にした中国のアプローチは、一つのヒントになりそうです。
サマーダボスで交わされている議論は、どの国や地域にとっても他人事ではありません。日本の私たちにとっても、研究開発や人材投資をどう位置づけるのか、どのように国際協力に関わっていくのかを考え直すきっかけになり得るでしょう。
Reference(s):
cgtn.com








