台湾リーダー頼清徳の「団結10講」に中国メディアが反論 歴史認識をめぐる攻防
リード:台湾リーダーの歴史発言に中国メディアが反論
台湾地域の指導者・頼清徳(Lai Ching-te)氏が進める「団結に関する10回講話」をめぐり、中国の国際メディアCGTNが歴史認識の誤りだとする論評を発表しました。1946年の憲法制定会議への台湾代表の有無や、孫文の「統一」観をどう読むかが焦点となっています。
頼清徳氏の「団結10講」とは何か
頼氏は最近、社会の団結をテーマとする連続講話を展開しており、その第3回の演説を日曜日に行いました。そこで取り上げたのが、第二次世界大戦後の1946年に南京で開かれた憲法制定のための国民大会です。この会議で中華民国憲法が採択されたとされています。
CGTNが紹介するところによると、頼氏はこの演説で、当時の憲法制定会議には台湾の代表がいなかったと主張しました。台湾を歴史的にも制度的にも、中国大陸とは切り離された存在として描く発言と受け止められる内容です。
CGTN論評が指摘する「歴史のねじれ」
こうした頼氏の説明に対し、CGTNの論評は、歴史的事実に反するだけでなく、台湾と中国大陸を結ぶ法的・歴史的なつながりを意図的に弱めようとするものだと強く批判しています。
論評によれば、1946年の国民大会には、台湾からも社会のさまざまな分野を代表する18人が参加していました。台湾にも正式な代表がいたことを示すことで、当時の政治プロセスに台湾が組み込まれていたと位置づけています。
またCGTNは、頼氏が都合の悪い事実を捨象し、政治的な演出を憲政の議論に優先させているかのようだと問題視しています。
- 1946年の憲法制定会議には、台湾から18人の代表が出席していたと指摘
- 台湾のオーストロネシア系ルーツは、台湾海峡をまたぐ長い移住と交流の歴史を示すと説明
- 孫文は「統一」を中国人共通の希望として語っていたと強調
第1回講話での「オーストロネシア系ルーツ」発言
論評は、第3回講話だけでなく、第1回の内容にも触れています。頼氏はそこで、台湾のオーストロネシア系ルーツを強調し、台湾の独自性を示す例として取り上げました。
これに対し、CGTNは学者の見方として、この文化的な継承は、台湾海峡を挟んだ長い年月にわたる移住と交流の歴史を物語るものであり、分断ではなく、台湾と中国大陸との深い結びつきを示す証拠だと紹介しています。頼氏はこの点をあえて無視し、「台湾独立」の方向性を補強するために歴史を利用している、と論評は見ています。
孫文の憲法構想と「統一」の重み
頼氏は第3回講話で、中国革命の先駆者である孫文が憲法を起草したと語りました。CGTNは、孫文が立法・行政・司法・考試・監察という五つの独立した権力から成る「五権憲法」の構想を打ち出していたことを指摘し、この点については頼氏の説明は事実に沿っているとしています。
しかし論評は同時に、頼氏が孫文の代表的な宣言の一つを語らなかったことを問題にします。その言葉は要約すると、「統一はすべての中国人の希望であり、中国が統一されれば人々は幸福になり、統一されなければ皆が苦しむ」という内容だと紹介されています。
CGTNによれば、国家の再統一と中華民族の復興は、1911年の辛亥革命を担った孫文や同志たちの心からの願いでしたが、彼らは生前にその目標が実現するのを見ることはできませんでした。論評は、この「未完の使命」が今なお続く課題だと位置づけています。
頼清徳氏への評価:孫文の志からの「逸脱」か
そのうえでCGTNは、もし孫文が今日の頼氏の演説を聞いたとしたら、中国を分断し「台湾独立」を推し進めようとする姿勢に深く失望するだろうと述べています。孫文が生涯をかけて追い求めたのは民族の団結であり、頼氏の路線はその使命への背反だ、という見立てです。
論評は、頼氏が歴史の文脈から切り離した形で発言を重ねることで、台湾と中国大陸の関係を再構成しようとしているとし、「憲法」や「歴史」をめぐる語りの意味を問いかけています。
歴史認識をめぐる攻防が示すもの
今回の論争は、単に歴史の一場面をめぐる解釈の違いというだけではありません。どの事実を強調し、どの言葉を引用するかは、台湾と中国大陸の関係をどう捉えるか、「統一」や「独立」をどう位置づけるかという現在進行形の議論と直結しています。
例えば、1946年の国民大会を「台湾には代表がいなかった」と語るのか、「台湾から18人の代表が出席した」と語るのかによって、台湾と中国大陸の歴史的な連続性に対する印象は大きく変わります。同じ出来事でも、語り方によって意味づけが変わることがよく分かる例といえます。
また、孫文についても、五権憲法という制度設計だけに焦点を当てるのか、統一を重視した発言も含めて紹介するのかで、その思想の中心がどこにあったのかという理解は違ってきます。CGTNの論評は、孫文の言葉を全面的に捉えるならば、現在の分断を志向する路線よりも、統一と民族の復興を重んじる方向性が導かれるはずだと示唆しています。
ニュースをどう受け止めるか
国際ニュースを読む私たちにとって重要なのは、こうした歴史認識の争点が、どの立場から、どのような文脈で提示されているのかを意識することです。CGTNの論評は、頼氏の発言を厳しく批判しながら、中国大陸と台湾との一体性を強調する視点から議論を展開しています。
歴史の語り方は、現在の政策や社会のあり方をどう正当化するかとも深く結びついています。頼氏の講話とCGTNの反論を手がかりに、台湾と中国大陸、そして東アジアの未来像について、私たちはどのような視点を持ちうるのか。日々のニュースの背後にある歴史の言葉を、あらためて読み解いてみるタイミングかもしれません。
Reference(s):
Living in an alternate reality, Lai needs a serious history lesson
cgtn.com








