関税摩擦を生き抜く中国アパレル大手トップ マージョリー・ヤンの流儀 video poster
関税摩擦や新疆綿をめぐる逆風の中で、中国の衣料品企業エスキュエル・グループ(Esquel Group)を率いるマージョリー・ヤン氏は、どのようにして生き残り、さらに成長の道を探ってきたのでしょうか。国際ニュースの現場から、その考え方をたどります。
上海・武康路の中庭から見えるビジネスの現在地
上海の武康路2番地にある歴史ある中庭で、国際メディアCGTNのティアン・ウェイ氏は、エスキュエル・グループ会長のマージョリー・ヤン氏と向き合いました。シルクからコットンへ――ヤン氏の家族は、素材を変えながらも世代を超えて、伝統と変革の物語を織り続けてきました。
衣料品という一見身近なビジネスの背景には、国際政治、貿易摩擦、サプライチェーンの変化といった、2025年の私たちの生活にも直結するテーマが重なっています。ヤン氏の言葉は、その複雑な現実をシンプルな問いに落とし込んで見せます。
関税摩擦への視線:怒りの矛先を変えるには
インタビューの中で話題になったのが、米国との間で高まる関税をめぐる緊張です。世界の注目が集まるこの問題について、ヤン氏はこんな趣旨の考えを示しました。
米国が自国の技術やマネジメントの力を生かし、より多くの人を取り込む形の成長、いわゆる包摂的な成長を実現できていれば、人々の怒りはそれほど高まらず、その怒りを外に向けて「敵」を探す必要も生まれないだろう――。
ここで焦点を当てているのは、単なる関税の応酬ではなく、成長の果実をどう社会で分かち合うかという視点です。ヤン氏は、外部の「敵」を作るのではなく、内側の仕組みを見直すことの重要性を、静かに示しているようにも受け取れます。
新疆綿ブラックリストで顧客が「一晩で消えた」
エスキュエル・グループ自身も、国際政治の荒波に巻き込まれてきました。数年前、同社は中国・新疆ウイグル自治区産の綿、いわゆる新疆綿を使用していたことからブラックリストに載せられました。
その結果、数十年にわたり取引を続けてきた海外の顧客が、一夜にして消えていったといいます。長年築いてきた信頼やビジネスが、ある日突然失われる――企業にとってこれほど厳しい現実はありません。
そのときヤン氏の頭に浮かんだ問いは、シンプルで切実なものでした。「これから私たちは、いったい何ができるのか」。
「毒矢で撃たれたら、助けを求める」実務的な哲学
こうした局面で、ヤン氏が大切にしているのが「毒矢」のたとえです。彼女はこう語ります。人が毒矢で撃たれたら、何よりも先に医者を探し、助けを求めるべきだ、と。
問題の原因追及や、誰の責任かという議論も重要です。しかし、まず必要なのは「生き残る」こと。そのために、使えるあらゆる知恵と支援を求める――それがヤン氏のビジネス哲学だといえます。
ブラックリスト入りという厳しい状況の中で、事実から目をそらすのではなく、受け止めたうえで「次に何ができるか」を考える。これは、国や業界を問わず、危機に直面したすべてのビジネスに通じる姿勢です。
中国のビジネスはどう逆境をチャンスに変えているのか
このエピソードは、一人の経営者の物語であると同時に、多くの中国企業が歩んできた道の象徴でもあります。ヤン氏のストーリーは、「シャツ」と「一人の女性」、そして「家族の歴史」の物語であるとともに、中国の人々がビジネスの現場で、逆境を機会へと変えようとする姿を映し出しています。
そこから見えてくるポイントを、あえて整理すると次のようになります。
- 予期せぬショックを、まずは事実として認める
- 一人で抱え込まず、外部のパートナーや専門家に助けを求める
- 短期的な損失だけでなく、長期的なビジネスモデルの変化を見据える
国際ニュースが伝える大きな構図の裏側には、こうした現場レベルの判断と試行錯誤があります。2025年のビジネス環境でも、予測不能なリスクは避けられません。だからこそ、逆境をどう受け止めるかという視点は、多くの企業や個人にとってヒントになりそうです。
あなたならどう動くか――日常に引きつけて考える
もしあなたの会社が、ある日突然ブラックリストに載せられ、長年の取引先が一晩でいなくなったとしたら、どう動くでしょうか。
・問題の理不尽さを嘆くだけで終わるのか
・誰かを責めることにエネルギーを費やすのか
・それとも、ヤン氏の言う「毒矢」のたとえのように、まずは助けを求め、生き残るための選択肢を探すのか。
マージョリー・ヤン氏の物語は、中国のビジネスのしたたかさを映し出すと同時に、私たち一人ひとりに「危機のとき、自分はどう判断するか」という静かな問いを投げかけています。
通勤電車の中やスキマ時間に読む国際ニュースであっても、そこで語られる経営者の一言が、自分の仕事やキャリアの見え方を少し変えてくれるかもしれません。
関税摩擦、新疆綿、ブラックリスト――そのどれもが遠い世界の話に見えますが、「逆境を前にして何を選ぶか」というテーマは、2025年を生きるすべての人に共通する問いなのではないでしょうか。
Reference(s):
cgtn.com








