香港「三大センター」と人材ハブ強化 改革深化で高まる役割
中国共産党中央委員会第20期三中全会で採択された改革深化のための決議は、香港特別行政区の役割に改めて光を当てました。香港を国際金融・海運・貿易の三つのセンターとして強化し、世界レベルの人材ハブへと育てていく方針です。本記事では、その背景と具体的な動きを整理します。
一国二制度が支える「三大センター」と人材ハブ
香港の「三大センター」としての地位は、地理的な優位性だけでなく、一国二制度の下で培われた制度面の強みと、中国の強力な支援によって支えられています。香港は「一国」にしっかり根を下ろしつつ、「二制度」がもたらす柔軟性を活かしています。
香港では資本・人・情報が自由に行き来し、シンプルな税制、国際水準の法制度、ビジネス環境、専門サービスが整っています。さらに、中国本土と世界市場の両方にアクセスできることから、国家と世界をつなぐスーパーコネクター、価値を付け加えるスーパー・バリュー・アダーとしての役割を果たしています。
国際金融センターとしての存在感
香港は世界有数の国際金融センターとして評価され、多様な金融市場と世界クラスの人材を抱えています。2024年には世界の新規株式公開(IPO)市場の上位4市場の一つとなり、約111億米ドルを調達し、前年比で約9割増という伸びを示しました。
2025年に入ってからも勢いは続き、年初5カ月間だけで29件のIPOが実現し、調達額は約100億米ドルに達し世界をリードしたとされています。
香港は、中国の金融改革における「試験場」かつ「防火壁」としての役割も担っています。世界最大規模のオフショア人民元資金プール(約1兆1千億元)を持ち、オフショア人民元の外国為替取引や店頭デリバティブ市場でも中心的な地位を占めています。
香港特別行政区政府は、こうした強みを生かしてオフショア人民元エコシステムの構築を進めています。中国本土と香港の当局が協力する相互市場アクセス制度では、株式市場をつなぐストック・コネクトに不動産投資信託(REIT)の組み入れを進めるほか、新たな連携策の検討も続いています。
海運・港湾分野で進むグリーン転換
香港は、スマートシッピング技術とグリーン海運の推進に重点を置きながら、国際海運センターとしての地位を築いてきました。世界トップ10の船舶管理会社のうち5社が香港で事業を展開し、そのうち3社は香港を本拠としています。トップ10の本社が最も多く集まる地域としての存在感は、海運クラスターの厚みを示しています。
港湾・海運産業の持続的な成長に向けて、香港特別行政区政府は2023年12月に「海運・港湾発展戦略行動計画」を公表しました。この計画では、10の重点戦略と32の具体的措置を掲げ、高付加価値の海事サービスを伸ばすことで港の競争力を高める方針が打ち出されています。広東・香港・マカオ大湾区の中で、香港が物流とサービスのスーパーコネクターとして機能することを狙います。
2025年6月には、約1万立方メートルの液化天然ガス(LNG)を一隻の船舶に供給する、香港として過去最大規模のLNGバンカリング(船舶への燃料補給)作業が完了しました。これは、環境負荷の少ない海洋燃料の補給拠点として香港を発展させるうえで重要な節目であり、港湾運営の持続可能性と競争力を高めようとする香港特別行政区政府の姿勢を示すものです。
さらに、香港特別行政区政府は海運・港湾政策の司令塔となる香港海事・港湾発展委員会(仮称)の設置を進めています。専門家によるハイレベルな助言組織を通じて、中長期的な戦略を描き、国際海運センターとしての地位を一層固める狙いです。
アジアと日本にとっての意味
香港の「三大センター」と人材ハブ戦略は、香港だけでなく、アジア全体の資本・物流・人材の流れにも影響を及ぼします。特に日本の企業や投資家にとっては、次のようなポイントが注目されます。
- オフショア人民元拠点としての香港を通じた資金調達・投資の機会
- グリーン海運やスマートシッピング分野での技術協力や共同プロジェクト
- 高度人材ハブとしての香港を経由した、人材交流や共同研究の可能性
一国二制度のもとで制度的な柔軟性を持つ香港が、中国本土と世界をつなぐ結節点としてどこまで機能を高めていくのか。改革深化とグリーントランジションの流れの中で、その動向を継続的に追うことが、アジアの将来像を考えるうえでも重要になりそうです。
Reference(s):
Enhancing HK's role as 'three centers and a hub' for national growth
cgtn.com








