ニシャン世界文明フォーラム、第11回会合でAIと人類の未来を議論
人工知能(AI)は、これからの人類の未来をどう変えていくのか――。2025年に山東省曲阜市ニシャンで開かれた第11回ニシャン世界文明フォーラムでは、この問いが国際的な対話の中心に据えられました。
世界文明の対話の場、ニシャン世界文明フォーラム
ニシャン世界文明フォーラムは、世界各地の専門家や実務家が集まり、文明間の対話や文化交流を行うための重要なプラットフォームとして位置づけられています。会場となるニシャンは、孔子ゆかりの地としても知られ、古くからの思想と現代の課題を結び付ける象徴的な場所です。
第11回となる今回は、全体テーマとして「多様性の美:文明間の理解を育み、グローバルな近代化へ」が掲げられました。中国の知恵とグローバルな視点を結び付けながら、異なる文明がお互いを尊重し、共に近代化の道を歩むことを目指すビジョンが示されています。
注目テーマ:AIの発展と人類文明の未来
フォーラムのなかでも特に注目を集めたのが、「人工知能の発展と人類文明の未来」をテーマにした議論です。ここで扱われているのは単なる技術論ではなく、「文明そのものの進む方向」をめぐる世界的な対話です。
議論の焦点は、おもに次のような問いにあります。
- 人類は自ら生み出した知能とどう共存していくのか
- 急速に変化する時代において、倫理や価値観の連続性をどう守るのか
- 技術の進歩が、人類の自己理解をどのように変えていくのか
技術革命のただ中で起きていること
私たちは今、大きな技術革命の波の上にいます。人工知能だけでなく、脳とコンピューターを直接つなぐインターフェース、ヒト型ロボット、機械式の義肢、遺伝子編集といった技術が急速に発展し、かつてはSFの世界のものと思われていたものが現実になりつつあります。
こうした技術はすでに社会の構造や、人々の暮らし方を変え始めています。例えば、
- 囲碁などのボードゲーム分野では、AIが人間を上回る精度で打ち手を選択するようになりました。
- 医療現場では、画像診断にAIを活用し、がんなどの早期発見に役立てる試みが進んでいます。
- 外骨格スーツや人工心臓といった技術は、障がいを持つ人々の生活を支える新たな手段となっています。
炭素ベースの存在である人間と、シリコンベースの知能であるAIとの協働関係が強まり、その相互作用が大きな恩恵をもたらしつつあるのです。
AGIという「鏡」が問いかけるもの
今、世界の関心を集めているのが、汎用人工知能(AGI)と呼ばれる存在です。AGIは、特定のタスクに特化した従来のAIとは異なり、認知や推論、対話、自己学習といった面で、人間に近い、あるいはそれを超える能力を持つ可能性が語られています。
人類はAIを「道具」としてだけでなく、「鏡」としても作り出しているのかもしれません。その鏡には、私たちの知性や創造性だけでなく、倫理観、不安、責任感、そして未来への願いまでもが映し出されます。
ニシャン世界文明フォーラムでの議論は、次のような深い問いを投げかけます。
- 人間らしさとは何か。知能や能力だけで人間を定義できるのか。
- AIに任せるべき仕事と、人間に残すべき役割の線引きはどこにあるのか。
- もしAIが一部の分野で人間を大きく上回るとき、人間社会の尊厳や意味はどう守られるべきか。
倫理とルールづくりに向けた世界的な対話
フォーラムの議論は、AIの開発や利用に伴う倫理やルールづくりの重要性も強調しています。急速な技術の進歩は、プライバシー、公平性、安全性といった課題を同時に浮かび上がらせます。
文明間の対話を重視するニシャン世界文明フォーラムは、特定の国や地域だけでは解決できないこうした問題について、共通の理解を育てる場として機能しています。文明の多様性を尊重しながらも、人類共通の価値をどう見出すかが問われているのです。
日本の読者にとっての意味
AIは日本社会においても、働き方や医療、教育、日常生活のさまざまな場面で存在感を増しています。ニシャン世界文明フォーラムでの議論は、日本に暮らす私たちにとっても他人事ではありません。
国や文化を超えた対話の場で、AIと人類文明の未来が語られているという事実は、次のような問いを私たち一人ひとりにも投げかけています。
- 自分の仕事や生活の中で、AIをどう位置づけ、どう付き合っていくのか。
- 技術の便利さと、人として大切にしたい価値観をどうバランスさせるのか。
- 人類全体の未来にとって望ましいAIの発展とは何か。
ニュースを追いかけるだけでなく、こうしたテーマをきっかけに、自分自身の考え方や価値観を静かに見つめ直してみる。そのこと自体が、文明間の対話の一部になっていくのかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








