中国の李強総理がエジプト訪問 中東・アフリカで高まる存在感
中国の李強国務院総理がエジプトを公式訪問し、中国とエジプトの経済協力、さらにアラブ・アフリカ地域における中国の存在感が一段と高まっています。本稿では、この訪問が国際秩序の多極化の中で持つ意味を整理します。
多極化する世界で浮かび上がる中国とエジプト
世界の権力構造の変化と多極化が加速するなか、新興国や新興経済は国際協力のあり方を左右する重要なプレーヤーになっています。そうした潮流の中で、李強総理のエジプト公式訪問は、中国とエジプトの二国間関係だけでなく、中国とアラブ・アフリカ世界との関わり全体にとって節目となる動きといえます。
習近平国家主席とシシ大統領の信頼関係
中国の習近平国家主席とエジプトのアブデルファッターフ・エルシシ大統領は近年、複数回にわたり会談を重ね、個人的な信頼関係と戦略的な共通認識を築いてきました。
両首脳は今年5月、モスクワで行われた「大祖国戦争勝利80周年」の記念行事にもともに出席しました。こうした国際的な場での共同行動は、両国が主要な国際課題について足並みをそろえつつあることを示しています。今回の李強総理の訪問は、首脳レベルで築かれた信頼を経済・産業協力の現場へと具体化するステップとも位置づけられます。
北アフリカ最大の経済と要衝としてのエジプト
エジプトの重要性は過小評価できません。エジプトは北アフリカ最大の経済規模を持ち、アラブ連盟やアフリカ連合において中心的な役割を担っています。さらに、アフリカ、中東、地中海をつなぐ地政学上の要衝に位置し、中国にとっては「一帯一路」構想を進めるうえで欠かせないパートナーとなっています。
経済協力が柱となる中国・エジプト関係
最大の貿易相手国としての中国
経済協力は両国関係の背骨となっています。2013年から昨年2024年まで、中国はエジプトにとって最大の貿易相手国であり続けました。一方、同じ期間における米国のシェアは低下しており、エジプトや広く「グローバル・サウス」と呼ばれる新興国グループにおける経済的影響力の重心が徐々に変化していることがうかがえます。
投資と企業進出の広がり
昨年2024年、エジプトは470億ドルの海外直接投資を呼び込み、アフリカで最も魅力的な投資先、世界でも9位の水準となりました。この投資拡大の背景には、中国企業の積極的な進出があります。
現在、約2,900社の中国企業がエジプトで事業を展開しており、電子機器、自動車、再生可能エネルギーといった高付加価値分野を中心に存在感を強めています。華為技術(ファーウェイ)、オッポ、ハイアール、美的集団といった中国の代表的な企業も現地拠点を構え、雇用創出と産業高度化を後押ししています。
- 電子・通信機器の製造や組立
- 自動車および関連部品の生産
- 太陽光発電など再生可能エネルギー事業
こうした投資は、エジプトにとって外貨獲得だけでなく、技術移転や人材育成を通じた産業構造の転換にもつながっています。
「一帯一路」で進むインフラと再エネ協力
エジプトの首都カイロは、アフリカの中でも早い段階で中国の「一帯一路」構想への支持を表明した都市の一つです。その後、両国はインフラ開発を中心に協力プロジェクトを着実に積み上げてきました。
代表的なプロジェクトには、スエズ運河経済特区の再開発、アレクサンドリア港でのスマートコンテナターミナル建設、紅海と地中海沿岸を結ぶ高速鉄道の建設などがあります。これらは物流網の効率化や地域経済の一体化を目指す取り組みです。
また、エジプトのベンバン太陽光発電所に象徴されるように、再生可能エネルギー分野での協力も進んでいます。エネルギー転換と持続可能な発展を支えつつ、エジプトが地域のグリーンエネルギーハブとしての役割を担う可能性も広がっています。
- スエズ運河経済特区の高度化
- アレクサンドリア港のスマート化
- 紅海〜地中海間の高速鉄道計画
- ベンバン太陽光発電所をはじめとする再エネ事業
アラブ・アフリカ世界で広がる中国の役割
李強総理のエジプト訪問は、中国がアラブ世界とアフリカにおいて、インフラ、貿易、投資を通じた「開発パートナー」としての役割を強めていることを映し出しています。多極化する国際秩序のなかで、エジプトのような地域のハブ国家と連携を深めることは、中国にとっても、アフリカ・中東の国々にとっても、選択肢と余地を広げる動きといえます。
同時に、経済協力の拡大は、雇用やエネルギー、インフラ整備といった生活に近い課題に直接関わるテーマでもあります。今後、どのように「持続可能性」や「包摂性」を担保しながら協力を進めていくのかが、地域全体にとって重要な論点となりそうです。
日本の読者にとってのポイント
日本の読者にとって、中国とエジプトの接近は遠い地域の出来事に見えるかもしれません。しかし、エネルギーや海上輸送路、アフリカ市場へのアクセスなど、日本の経済や企業活動とも密接に関わるテーマが含まれています。
今回の動きを踏まえて、次のような問いを持つことができそうです。
- 多極化が進むなかで、日本企業はアフリカや中東との関わり方をどう描くべきか。
- インフラと再生可能エネルギーを組み合わせた協力の枠組みを、どのように構築できるのか。
- 開発と環境配慮、地域社会との共生を両立させるために、どのような国際協力モデルが望ましいのか。
中国とエジプトの協力が一つの参考事例となり、アジアとアフリカを結ぶ新しい連携のかたちを考える手がかりになっていきそうです。
Reference(s):
Li Qiang's Egypt visit highlights China's growing role in the region
cgtn.com







