中国の世界遺産60件が語る文化財保護の戦略と知恵
中国の世界遺産は、最新の西夏王陵の登録によって60件に達しました。これは単なる数字の節目ではなく、歴史的な文化財を守りながら現代の発展とどう両立させるかという、中国の長期的な取り組みを映し出しています。
本記事では、西夏王陵の意味、中国がどのように世界遺産保護の仕組みを築いてきたのか、そして法制度や財政面から見た現在の姿を整理します。
- 西夏王陵が世界遺産に登録され、中国の世界遺産は60件に
- 文化・自然遺産の日や公益訴訟など、制度と市民参加が進展
- 2024年には文化財保護に約6.38ビリオン人民元を投入
西夏王陵が示すシルクロード時代の交流
西夏王陵は、11〜13世紀に築かれた大規模な陵墓群で、シルクロード沿いの活発な文化交流を物語る存在です。最新の世界遺産登録によって、その歴史的価値にあらためて注目が集まっています。
陵墓建築には、唐や宋の王朝の墓制にみられる構造に加え、仏教建築の要素やタングート族の独自の伝統が組み合わされています。この多様な要素の融合は、西夏王朝が東西の文化をつなぐ橋として機能していたことを示しています。
60件の世界遺産へ 中国の歩み
中国は1985年に世界遺産条約に加盟して以来、文化遺産と自然遺産の双方を対象とした保護体制を整えてきました。その結果、現在では世界でも有数の世界遺産保有国となっています。
初期登録から広がった世界遺産ネットワーク
1987年に最初に登録されたのは、万里の長城、明・清朝の皇宮、秦始皇帝陵・兵馬俑坑、莫高窟といった、世界的にもよく知られた遺産でした。これらの登録は、中国の文化財保護が国際的な枠組みの中で位置づけられた転機だったと言えます。
文化・自然遺産の日で市民参加を促す
2006年には、毎年6月第2土曜日を文化遺産の日とする全国的な記念日が設けられました。その後、2017年には名称が文化・自然遺産の日に改められ、文化財だけでなく自然環境も含めた保護の重要性が明確に打ち出されました。
2025年の文化・自然遺産の日のテーマは、文化遺産を活用して新たな輝きを引き出すという趣旨のもので、多くの文化財を守るだけでなく生かす姿勢が強調されました。全国の文化財関連機関や行政は、オンラインとオフラインを合わせて7000件を超えるイベントを開催し、一般の人々が文化遺産に触れ、考えるきっかけを提供しました。
法制度で支える文化財保護
こうした取り組みの背景には、法制度の整備があります。1982年に制定された文化財保護法(Law of Cultural Relics Protection)は、中国における文化財保護の中核となる法律です。
この法律は約40年にわたって改正や補強が重ねられ、現在では6つの行政法規、10の部門規則、400を超える地方レベルの立法が存在するとされています。多層的な法体系が整備されていることは、文化財保護に対する国家としての強い意思を示すものです。
司法面でも動きが強まっています。中国の最高人民検察院によると、2025年最初の5か月間で、文化財や遺跡を守るための公益訴訟が2160件提起されました。これは、文化財保護を絵に描いたもちにせず、違反行為に対して実際に法を適用していく姿勢の表れと見ることができます。
財政投入: 2024年だけで6.38ビリオン人民元
法制度に加えて、十分な財政支援も欠かせません。中央政府は文化財保護プロジェクトに対して、まとまった予算を投じています。
具体的には、2024年だけでも、中国の財政当局は国家文化財保護基金に対して約6.38ビリオン人民元(約8億8000万ドル)を拠出しました。これにより、多くの歴史的建造物や出土品の修復が進められただけでなく、保管・展示施設などインフラの近代化も後押しされています。
中国の世界遺産が投げかける問い
西夏王陵の登録によって60件となった中国の世界遺産は、単なる観光資源の集合ではありません。そこには、発展を続ける社会が、どのように過去の遺産と向き合うのかという問いが込められています。
長期的な法制度、多層的な監視と司法の仕組み、そして継続的な財政投入。これらを通じて、中国は古代文明の記憶を守りつつ、現代社会の活力と結びつけようとしています。
世界各地で開発と保護のバランスが課題となる中、中国の60件の世界遺産とその背後にある仕組みは、文化財保護のあり方を考えるための一つの参照点になりそうです。
Reference(s):
From Xixia to world: Chinese wisdom behind 60 UNESCO heritage sites
cgtn.com








