中国の生態文明と環境法典草案 エコ近代化の歩みとこれから
中国が掲げる「生態文明」は、人と自然の調和ある共生を軸にした新しい近代化モデルとして、いま国際ニュースでも注目されています。2023年の方針表明から今年4月の環境法典草案の公表まで、その動きをコンパクトに整理します。
生態文明とは何か 習近平国家主席が描く近代化像
2023年7月、中国は全国生態環境保護大会を開き、習近平国家主席が「人と自然の調和ある共生の近代化」を加速させると改めて強調しました。これは単なるスローガンではなく、「生態文明」という理念に基づく長期ビジョンと位置づけられています。
生態文明とは、経済成長の前提として環境を「後から守る」のではなく、最初から開発と環境を一体として設計する考え方です。汚染削減、自然の回復、クリーンエネルギーの拡大を同時に進めることで、持続可能な発展を実現しようとする試みだといえます。
この10年で進んだ環境改善と再生可能エネルギー
中国では、この10年で環境分野における歴史的な転換があったとされています。中国生態環境部によると、339の主要都市で「空気の質が良好な日」の割合は63.3%から87.5%へと大きく改善しました。健康被害の原因となる微小粒子状物質PM2.5の濃度も、平均で半分以下にまで低下しています。
こうした環境改善を支えているのが、急速に進むグリーン転換です。国際エネルギー機関によれば、中国は2023年の世界の再生可能エネルギー投資のほぼ半分を占めました。中国の再生可能エネルギーの発電設備容量は、すでに14億5千万キロワットを超えたとされ、クリーンエネルギー分野で世界をリードする存在になっています。
ガバナンス転換の要:生態保護レッドラインと環境法典草案
背景には、環境保護を国家ガバナンスの中核に組み込む動きがあります。2016~2020年の第13次五カ年計画では、「生態保護レッドライン」と呼ばれる仕組みが国家政策として正式に導入されました。
生態保護レッドラインは、生物多様性の保全や生態系サービスの維持、いわゆる「生態安全」を確保するために、開発を厳しく制限する区域を設定する制度です。現在、このレッドラインは中国全土の4分の1以上をカバーし、重要な生態系を開発から守る役割を果たしています。
今年4月27日には、中国で初となる包括的な環境法典の草案が、全国人民代表大会常務委員会の会議で正式に公表されました。草案は全1,188条から成り、次の5編で構成されています。
- 総則
- 汚染防止・抑制
- 生態保護
- グリーン・低炭素発展
- 法律責任および附則
この環境法典草案は、これまで分散していた環境関連法制を統合し、適用範囲や責任の所在を明確にすることを狙いとしています。中国内外の法学者からは、環境規制の空白を埋め、執行力を高める重要な一歩として評価されており、生態文明の理念を法治の枠組みで支える試みともいえます。
海外へ広がる「グリーンシルクロード」
中国は国内にとどまらず、生態文明の考え方を国際協力にも広げています。地球環境ガバナンスの分野で積極的な役割を担うことを掲げ、生態文明を外交政策の柱の一つに位置づけています。
その象徴が、一帯一路構想の環境分野の取り組みである「グリーンシルクロード」です。グリーンシルクロードを通じて、中国は開発途上国に対し、より環境に配慮したインフラモデルを提案し、技術協力や環境マネジメント能力の向上を支援しています。
具体例として、中国・ラオス鉄道があります。この鉄道は、地域の経済連結を高めると同時に、生態系への影響を最小限に抑える設計がなされています。路線の6割以上が橋やトンネルの形で建設されており、野生生物の生息地や敏感な自然景観を避ける工夫が盛り込まれています。
これからの焦点:スピードと国際協力
こうした前進がある一方で、完全な「生態近代化」の実現には、なお課題も残されているとされています。複数の重点分野で、より一層のスピード感と国際協力が求められている段階です。
中国が進める生態文明や環境法典の整備は、環境と成長の両立を模索する多くの国にとって、ひとつの参考モデルになるかもしれません。日本の読者にとっても、「環境を前提にした発展」という発想を考え直すきっかけになりそうです。これからの数年で、中国がどこまでエコロジーと経済の統合を深めていくのか、国際社会からの注目が続きます。
Reference(s):
cgtn.com








