UN-Habitat事務局長が語る世界の住宅危機と中国の都市モデル video poster
2025年のいま、世界の都市人口は増え続ける一方で、安全で手頃な住宅にアクセスできない人が急増しています。国連人間居住計画(UN-Habitat)のアナクラウジア・ロスバッハ事務局長は、中国中央広播電視総台(CMG)の番組「Leaders Talk」の独占インタビューで、世界の住宅危機と中国の都市モデルについて語りました。本稿では、その発言のポイントを日本語ニュースとして整理し、国際ニュースとしての意味を考えます。
世界で約28億人が「不十分な住宅」に暮らす
ロスバッハ事務局長によると、現在、世界ではおよそ28億人が不十分な住宅環境で暮らしているといいます。ここでいう「不十分な住宅」とは、雨風をしのげない構造や過度な過密状態、衛生設備の欠如、安全性の低さなど、人としての尊厳ある暮らしを守れない住環境を指します。
こうした住宅危機は、単に家が足りないという問題にとどまりません。社会の安定、公衆衛生、そして持続可能な開発全体を揺るがす要因となります。感染症の拡大リスク、教育や就労機会へのアクセス格差、災害への脆弱性など、さまざまな課題が住宅問題と結びついているからです。
住宅は「市場商品」ではなく「人間の尊厳」の問題
インタビューの中でロスバッハ事務局長が強調したのは、住宅を単なる市場商品としてではなく、人間の尊厳と基本的な権利にかかわる問題として捉える必要性でした。住宅が高騰し、低所得層や若い世代が安定した住まいを確保できない状況は、多くの国や地域で共通の課題になっています。
そのうえで同氏は、各国が孤立して対処するのではなく、ノウハウや資源を共有する「グローバルな連帯」が不可欠だと指摘しました。都市計画、公共住宅、スラム改善、民間投資の誘導といった多様な手段を組み合わせ、長期的な視点で住宅政策に取り組むことが求められているといえます。
中国の都市変革は「学ぶ価値のあるモデル」
今回のインタビューで注目されたのが、中国の都市づくりに対するロスバッハ事務局長の評価です。同氏は、中国の都市の変容と都市更新を「顕著」なものと位置づけ、「学ぶ価値のあるモデル」だと語りました。
中国の都市は、人々の生活を中心に据えた「人中心」のアプローチを取っているといいます。急速な都市化の中で、住宅やインフラ、公共交通、公共空間などを一体的に整備し、多くの人を都市に受け入れてきた経験は、他の国や地域でも応用可能だという見方です。
ロスバッハ事務局長は、中国で培われた都市計画や住宅政策の知見を、他地域の文脈に合わせて柔軟に取り入れることで、世界の住宅危機に対する新たな解決策が生まれうると示唆しました。
「人中心」の都市とはどのようなものか
では、「人中心」の都市とは具体的に何を意味するのでしょうか。インタビューの内容からは、少なくとも次のようなポイントが読み取れます。
- 住民が安心して暮らせる、安全で耐久性のある住宅が確保されていること
- 通勤・通学・医療・教育・福祉など、日常生活に必要なサービスにアクセスしやすいこと
- 低所得層や若者、高齢者など、社会的に弱い立場にある人々も排除されない仕組みがあること
- 公園や広場などの公共空間が整備され、コミュニティのつながりが育まれること
そして何より重要なのは、都市のデザインや投資の判断基準を「人々の生活の質」に置くことです。ロスバッハ事務局長の評価は、中国の都市づくりがこうした視点を重視してきた点に注目したものだといえるでしょう。
日本と世界の都市にとっての示唆
この国際ニュースは、日本の読者にとっても無関係ではありません。日本の都市でも、住宅価格や家賃、空き家問題、単身世帯の増加、高齢化など、さまざまな住宅・都市課題が同時に進行しています。
ロスバッハ事務局長が語る「人中心の都市モデル」は、日本や他の国々が自らの文脈に合わせてヒントを得るための「参照点」として受け止めることができます。例えば、
- 長期的な住宅政策と都市計画を連動させること
- 公共・民間・コミュニティの協働で、住まいの選択肢を増やすこと
- 低所得層や若者向けの住宅支援を、社会全体の投資と位置づけること
- 環境配慮と防災を組み込んだ、持続可能な都市更新を進めること
こうした視点は、日本語ニュースとして世界の動きを追う読者にとって、自国の都市や地域を見つめ直すきっかけにもなります。
住宅危機に向き合うための「連帯」のかたち
ロスバッハ事務局長が繰り返し用いたキーワードが「グローバルな連帯」です。28億人もの人々が不十分な住宅に暮らす現実は、一国だけでは解決できない規模の課題です。
国際機関は、各国の経験をつなぎ、成功例や教訓を共有する役割を担います。中国を含むさまざまな国・地域の都市モデルを比較し、どの要素が他の場所でも活用できるのかを検証することは、その一部だといえるでしょう。
同時に、都市に暮らす私たち一人ひとりも、住宅問題を「遠い国の話」としてではなく、自分の生活やコミュニティと結びついたテーマとして捉え直す必要があります。SNSで議論に参加したり、地域のまちづくりに関わったりすることも、広い意味での「連帯」の一形態です。
おわりに:読みやすい国際ニュースから、考え続けるための一歩を
UN-Habitatのトップが、中国の都市モデルを評価しつつ世界の住宅危機への警鐘を鳴らした今回のインタビューは、「都市は誰のためにあるのか」という根源的な問いを投げかけています。
日本語で読める国際ニュースを通じて世界の動きを知ることは、自分の暮らす街や社会を見直す第一歩です。28億人という数字の重みを受け止めつつ、人中心の都市とは何か、そして自分たちはどのような未来の都市を望むのか――この記事が、その問いを考え続けるためのきっかけになれば幸いです。
Reference(s):
Exclusive with UN-Habitat Executive Director Anacláudia Rossbach
cgtn.com








