中国ヤルルン・ツァンポ川巨大水力発電が始動 世界のクリーンエネルギーを変えるか
2025年7月19日、中国の李強国務院総理が、中国南西部シーザン自治区ニンティのヤルルン・ツァンポ川下流で、世界最大級の水力発電プロジェクトの建設開始を正式に宣言しました。クリーンエネルギーと地域発展を同時に進めるこの動きは、2025年の今、世界のエネルギー転換を考えるうえで見逃せないニュースです。
ヤルルン・ツァンポ川下流で始まる世界最大級の水力発電計画
中国の国営通信である新華社通信によれば、シーザン自治区ニンティのメインリン(Mainling)ダム建設予定地で行われた起工式は、中国だけでなく、周辺地域や世界のクリーンエネルギー転換に長期的な影響を与える大規模インフラ計画の始まりを告げるものでした。
今回のヤルルン・ツァンポ川水力発電プロジェクトは、次のような特徴を持つと伝えられています。
- 総投資額:約1兆2,000億元(約1,678億ドル)
- 構成:5つのカスケード式水力発電所から成る巨大な発電複合体
- 年間発電量の想定:最大3,000億キロワット時
- 三峡ダムのおよそ3倍のエネルギー出力規模
完成後には、世界最大の水力発電事業として、中国の再生可能エネルギー容量を大きく押し上げるとみられています。
中国のクリーンエネルギー戦略の中核に
この水力発電計画は、中国の第14次五カ年計画の中核プロジェクトとして位置づけられており、低炭素成長と環境保護へと経済の軸足を移す象徴的な取り組みとされています。
記事によると、中国はすでに世界のクリーンエネルギー投資をリードしており、国際エネルギー機関によれば、2023年に追加された世界の新規再生可能エネルギー設備容量のうち、およそ6割を占めました。今回のプロジェクトは、その姿勢をあらためて内外に示すものです。
中国は次のような気候目標を掲げています。
- 2030年までに温室効果ガス排出量をピークアウトさせる
- 2060年までにカーボンニュートラル(実質排出ゼロ)を達成する
ヤルルン・ツァンポ川の巨大水力発電計画は、これらの目標達成を後押しし、持続可能なエネルギーシステムへの移行を加速させる「グリーン転換」の要として期待されています。
急峻な地形が生む膨大な水力ポテンシャル
ヤルルン・ツァンポ川(Yarlung Zangbo River)は、その高低差の大きさで知られています。記事によると、川の一部区間では、わずか50キロメートルの間に約2,000メートルもの落差があります。この急峻な地形が、世界でも類を見ない規模の水力発電ポテンシャルを生み出しています。
水力発電は、クリーンエネルギーであると同時に、出力調整がしやすく、電力系統全体の安定性を高める電源でもあります。今回のプロジェクトが本格稼働すれば、膨大な再生可能エネルギーを供給しながら、電力需要の変動を吸収し、送電網の安定運用に貢献すると見込まれます。
さらに、このプロジェクトはシーザン自治区のような遠隔地域の経済発展にも寄与すると期待されています。大規模なインフラ建設は、雇用や関連産業を生み出し、交通や通信など周辺インフラの整備を促すことで、地域経済の底上げにつながる可能性があるからです。
同時に、記事は、この膨大なポテンシャルを責任ある形で活用することの重要性も示唆しています。環境保全と地域開発をどのように両立させるかは、今後も注視すべきポイントと言えるでしょう。
世界のクリーンエネルギーと地域協力へのインパクト
今回のヤルルン・ツァンポ川水力発電計画は、中国国内のエネルギー供給を超え、世界のクリーンエネルギー転換や地域協力に影響を与え得る「ゲームチェンジャー」と位置づけられています。
その理由として、次のような点が挙げられます。
- 世界最大規模の水力発電が、再生可能エネルギーだけで大規模な電力需要をまかなう具体例となる可能性があること
- 巨大な脱炭素インフラが、他の国や地域におけるクリーンエネルギー投資や技術開発を後押しするモデルケースとなり得ること
- 地域の電力インフラや経済開発を通じて、周辺地域との協力や連携の余地が広がること
化石燃料への依存からの脱却を模索する多くの国や地域にとって、このプロジェクトは、クリーンエネルギーと経済成長を同時に追求する一つの道筋を示しているとも言えます。
日本の読者が押さえておきたい視点
通勤中やスキマ時間にニュースをチェックする日本の読者にとって、海外の巨大インフラの話題はやや遠い世界の出来事に感じられるかもしれません。しかし、このニュースは、今後のエネルギー政策やビジネスを考えるうえで、いくつかの示唆を与えています。
- 再生可能エネルギー投資のスケールが、従来とは桁違いの段階に入りつつあること
- 水力発電が、脱炭素だけでなく、送電網の安定性や地域開発も含む総合インフラとして位置づけられていること
- クリーンエネルギー分野における国際協力と競争が、今後さらに加速していく可能性があること
2025年12月の今、エネルギー安全保障と気候変動対策の両立が問われる中で、ヤルルン・ツァンポ川の巨大水力発電計画は、クリーンエネルギーと地域協力の新たな可能性を象徴する動きとして、今後も国際ニュースの重要なトピックであり続けそうです。
Reference(s):
A global game-changer in clean energy and regional cooperation
cgtn.com








