中国EU関係50年が映す3つの教訓 グローバル化と多極化の現在地
1975年の外交関係樹立からおよそ半世紀を迎えた中国EU関係について、中国人民大学の王義桅(ワン・イーウェイ)教授が、過去50年の歩みから見える「3つの歴史的教訓」と「理想と現実のギャップ」を整理しています。グローバル化と多極化が揺れる今、その視点は日本の読者にとっても考えるヒントになりそうです。
中欧関係50年という節目に何が見えるか
王教授は、中国とEU(欧州連合)を「経済グローバル化の二つのエンジン」「政治的多極化を支える二本柱」、そして「多様な文明を体現する二つの存在」と位置づけます。そのうえで、この半世紀の中国EU関係は、理想と現実をつなぐ三つの教訓を示していると指摘します。
教訓1:文明と時代を超えて続く関係
第一の教訓は、「二国間関係が時代と文明を超えて持続してきた」という点です。王教授によれば、冷戦期における東西文明の接触という歴史的文脈のなかで、1975年の中国EU外交関係の樹立は、いわゆる「第二世界」と「第三世界」が連携した出来事でもありました。これは、中間地帯を重視する外交の成果として捉えられています。
その延長線上で、現在は中国、米国、欧州がグローバル化の「三つのコア」を形成しています。中国の王毅外相は2024年の全国両会(Two Sessions)で「中欧が互恵的な協力を行う限り、いかなる陣営対立の試みも成功しない」と強調しました。王教授は、この発言を踏まえ、欧州がグローバル化と多極化を維持するうえで重要な役割を担っていると見ています。
教訓2:二国間を超えた多国間主義の推進力
第二の教訓は、中国EU関係が「二国間」を超え、「多国間主義」を支える軸になってきたという点です。王教授は、中国EU関係を「世界で最も安定した大国間関係」の一つと位置づけ、その安定性が国際社会における多国間主義やグローバル・ガバナンス(地球規模の課題を話し合い、管理していく仕組み)を支えてきたと指摘します。
中国EU関係が果たしてきた役割として、次のようなポイントが挙げられます。
- 貿易や投資を通じて、世界経済の開放性と相互依存を支えてきたこと
- 気候変動や持続可能な発展など、地球規模課題への協力を通じて国際ルールづくりに関与してきたこと
- 一国主義やブロック化への流れに対し、多極的でバランスの取れた秩序の必要性を訴えてきたこと
こうした視点から見ると、中国EU関係は単なる「二者間の利害調整」ではなく、多国間の協調を支える一つの柱として機能してきた、と王教授は評価しています。
教訓3:相互に力を与え合う関係
第三の教訓は、「相互のエンパワーメント(力づけ)」です。王教授は、中国の改革開放がEUにもたらした利益と、EUが中国にもたらした技術移転の両面に注目します。
中国側から見ると、改革開放の過程でEUは重要なパートナーとなり、多くの投資や技術導入を通じて中国の発展に寄与しました。王教授によれば、EUは技術移転の面で半分以上を担いながら、中国の発展に大きな障害をもたらすことは少なかったとされます。
一方で、ヨーロッパにとっても、中国市場との関わりは経済成長や企業の競争力強化につながりました。現在では、中国とEUが共に「人類の持続可能な発展」をリードする存在になりつつある、と王教授は見ています。
見えてきた「理想」と「現実」のギャップ
もっとも、この50年は順風満帆だったわけではありません。王教授は、中国EU双方の認識のズレや、理想と現実のギャップにも光を当てています。
まず指摘されるのは、「相手を理想化した見方」が双方に存在してきたことです。
- 中国は長く、EUを「最も発達した統合体」「地域統合の到達点」と見なす傾向があり、ASEAN(東南アジア諸国連合)など、他の地域機構の柔軟さや包摂性を十分に評価してこなかった側面があるとされます。
- 一方、欧州側では中国を「規範を学習すべき新興市場」にすぎないかのように捉え、中国の政治体制や文明的な特質を十分に考慮してこなかったと指摘します。
こうした理想化や単純化は、相手への理解を妨げ、「認識のギャップ」として今も残っていると王教授は見ています。価値観、発展モデル、国際秩序の見方など、多くの点で両者の認識がずれる場面があり、それが政策や世論にも影響してきました。
多極化時代の中国EU関係と、私たちへの問い
王教授の分析は、中国とEUの50年を「成功の物語」として語るだけでなく、その裏側にある認識のズレや、理想と現実の距離にも目を向けています。そのうえで、いま求められているのは、相手を一方的に理想化したり、逆に過度に否定したりするのではなく、現実に基づいた冷静な理解だと示唆しているように読めます。
グローバル化の揺り戻しやブロック化の圧力が強まるなかで、王毅外相が述べた「中欧が互恵協力を続ける限り、陣営対立は成功しない」というメッセージは、欧州だけでなく日本を含むアジアにとっても重い言葉です。中国、米国、欧州という三つの軸がどのようなバランスを取るのかは、サプライチェーンから安全保障、気候政策まで、幅広い分野に波及します。
中欧関係50年の教訓は、次のような問いを私たちに投げかけています。
- 相手を「理想化」や「ラベル貼り」で見るのではなく、実態をどう捉え直すか。
- 多極化する世界で、どのように多国間主義を守り、アップデートしていくか。
- 異なる文明や価値観を持つパートナーと、どうすれば「共に輝く」関係を築けるのか。
スマートフォンの画面越しに国際ニュースを追う私たちにとっても、中国EU関係の半世紀は、「世界を見るレンズ」を静かに問い直す材料になっているのかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








