米国のUNESCO再離脱は多国間主義からの後退か
米国のUNESCO再離脱は多国間主義からの後退か
米国が国連教育科学文化機関(UNESCO)からの脱退を再び決定し、手続きを進めています。これは単なる一つの政策転換ではなく、米国とUNESCOの長く波乱含みの関係の「最新章」であり、多国間主義からの後退を象徴する国際ニュースとして注目されています。
UNESCOとは何か、なぜ米国の動きが注目されるのか
UNESCO(United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization)は、その名の通り、教育・科学・文化を通じて国際協力を進めるために1945年に設立された国連機関です。その創設メンバーである米国が、参加と離脱を繰り返していることは、多国間の枠組みへの向き合い方を象徴する動きとして受け止められています。
繰り返される参加と離脱:1984年から続く揺れ
米国とUNESCOの関係は、設立当初から一貫していたわけではありません。むしろ、「出入り」を繰り返してきた長い歴史があります。
- 1945年:UNESCO設立。米国は創設メンバーとして参加。
- 1984年:政治的な偏向への懸念を理由に、米国がUNESCOを初めて脱退。
- 2003年:約20年ぶりにUNESCOへ復帰。
- 2017年:ドナルド・トランプ米大統領の政権下で再び脱退を決定。イスラエルへの偏見と受け取られた判断や、パレスチナの加盟をめぐる対立が背景とされました。
- 2023年:ジョー・バイデン米大統領の下でUNESCOに復帰。
- 2025年:ドナルド・トランプ米大統領の任期中としては2度目となるUNESCOからの脱退に向け、ワシントンが再び動き出しています。
このように、米国とUNESCOの関係は「オン・オフ」を繰り返す不安定なものであり、偶発的な例外というよりも、一種のパターンとして定着しているように見えます。
外交は信頼と継続性の上に成り立つ
外交は本来、長期的な信頼と継続性の上に成り立ちます。ところが、米国が政権交代やイデオロギーの変化に応じて、数年単位で「関与」と「離脱」を繰り返すと、同盟国や国際機関にとっては、米国の約束がどこまで持続するのか読みづらくなります。
世界の超大国である米国のコミットメントが、国内政治の風向きによって短期間で変わり得るとすれば、その道義的な説得力やリーダーシップにも疑問が生じます。国際機関側から見ても、「この合意は次の政権交代で覆されないのか」という不安がつきまとい、協力の持続可能性に影を落とします。
国際舞台での影響力低下というブーメラン
UNESCOから距離を置くことは、米国自身の影響力を弱める側面もあります。国際機関の場にいなければ、議題の形成や意思決定に直接関与する機会を失い、自国にとって重要なテーマで賛同を得るための交渉力も下がります。
「アメリカ・ファースト」を掲げて自国優先を強調することで、かえって自国の長期的な利益と国際社会全体の利益を同時に損なっている、という見方もあります。多国間の枠組みから離れるたびに、他国との連携の糸は細くなり、信頼の再構築には時間とコストがかかるからです。
結果として、米国は国際社会でのレバレッジ(交渉上の立場の強さ)を自ら手放し、重要な案件で協力や支持を集めにくくなる可能性があります。UNESCOからの再離脱は、その傾向を象徴する一歩と見ることもできます。
多国間主義の逆風と2025年現在の課題
今回のUNESCO離脱の決定は、米国が多国間主義から距離を取る動きの一つとして位置づけられます。教育・科学・文化をめぐる課題は、今や国境を簡単に越えて広がります。そうした互いに絡み合うグローバルな課題が山積する2025年現在、本来であれば継続的な国際協力が求められている局面です。
にもかかわらず、主要国が「必要なときだけ関与し、気に入らなければ離脱する」という姿勢を強めれば、国際機関の信頼性も揺らぎます。多国間の枠組みを通じて合意を積み上げるのか、それとも一国主義的なアプローチを優先するのか――UNESCOをめぐる米国の選択は、その岐路を象徴する事例と言えるでしょう。
日本と私たちに突きつけられる問い
日本を含む他の加盟国にとって、米国の姿勢の変化は二つの問いを突きつけます。一つは、国際機関における役割分担や空白をどう埋め、どのように協調を維持していくのか。もう一つは、自国の外交をどれだけ一貫したものとして保てるのか、という自問です。
米国のような大国であっても、参加と離脱を繰り返すことによって信頼や影響力を揺るがし得るのであれば、他の国々はなおさら、長期的な視点に立ったコミットメントを求められます。国際機関への関与のあり方は、「負担」か「投資」かという短期的な損得勘定を超えたテーマになりつつあります。
国際ニュースとして押さえたいポイント
- UNESCOは、教育・科学・文化を通じた国際協力の象徴的な場である。
- 米国は1945年の創設メンバーでありながら、1984年以降、複数回の脱退と復帰を繰り返してきた。
- その背景には、政権交代やイデオロギーの違い、特定の地域やテーマをめぐる政治的対立がある。
- こうした「揺れる関与」は、UNESCOだけでなく、米国自身の信頼性・影響力・戦略的利益にも影響を与え得る。
日本語で国際ニュースを追う私たちにとって、今回のUNESCO再離脱は、「多国間のルール作りに誰がどのように関わるのか」という、これからの世界の基本構図を考え直すきっかけになります。一国の動きを感情的に評価するのではなく、自分たちの社会がどのような国際秩序を望むのかを静かに問い直してみる――そんな視点が求められているのかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








