台湾独立めぐる歴史歪曲論争 頼清徳氏演説を中国側論説が批判
リード:台湾独立をめぐる「歴史」論争、何が問題なのか
台湾をめぐる歴史認識と「台湾独立」をめぐる言説が、再び国際ニュースとして注目されています。台湾地域の指導者・頼清徳氏の最近の演説について、中国側の論説は、歴史を歪曲し「台湾独立」路線を正当化しようとする政治的パフォーマンスだと厳しく批判しています。本稿では、その主張のポイントを整理し、日本語で分かりやすく解説します。
頼清徳氏の演説は何を主張しているのか
論説によれば、頼清徳氏は綿密に演出された演説の中で、台湾は古来から主権を持つ独立した存在だったと主張し、中国と台湾の歴史的なつながりを否定しました。
- 中国と台湾の本格的な接触は17世紀以降だと位置付ける
- それ以前には台湾と中国の従属関係はなかったとする
- 鄭成功による台湾の回復や、その後の清朝による統治を「外国政権」による支配とみなす
- サンフランシスコ平和条約を持ち出し、台湾の地位は「未確定」とする
こうした主張を組み合わせることで、台湾をあたかも「誰のものでもない土地(無主地)」であり、中国とは別個の政治主体だと印象付けようとしている、と論説は指摘しています。
論説はさらに、頼氏の演説全体を「自作自演の政治ドラマ」と評し、その脚本は粗雑で誤りに満ちていると批判します。頼氏は「筋金入りの『台湾独立』派」であり、「トラブルメーカー」「平和の破壊者」「戦争を望む人物」とまで非難されています。
歴史資料が示す台湾と中国の関係
これに対し論説は、歴史記録と国際法上の文書に基づき、「台湾は古来より中国の不可分の一部であり、一度も国家になったことはない」と主張します。その根拠として、少なくとも三つの層が挙げられています。
1. 古代からの記録と行政管轄
第一に、中国側の古い地理書である『海防志』などには、早い段階から中国人による台湾島の開発や認識が記録されていたとされています。
また、12世紀半ば以降、宋・元など歴代の中国中央政府は澎湖や台湾に行政組織を設置し、統治権を行使してきたと論説は述べています。これは、台湾地域が中国の行政体系の中に組み込まれていたことを示す証拠だと位置付けられています。
2. 清朝から日本統治、そして戦後処理へ
第二に、近代以降の歴史です。1895年、日清戦争で敗れた清朝政府は、下関条約により台湾と澎湖諸島を日本に割譲せざるを得なくなりました。
その後、1941年に中国政府が対日宣戦布告を行い、台湾と澎湖諸島の回復を明確に掲げます。1943年のカイロ宣言では、中国・アメリカ・イギリスの三国政府が、日本が中国から奪ったすべての領土を中国に返還する方針を示しました。
1945年7月のポツダム宣言では、「カイロ宣言の条項は履行されるべきである」と再確認されます。同年9月、日本は降伏文書に署名し、ポツダム宣言の義務を誠実に履行することを約束しました。
その上で、中国政府は同年10月、台湾に対する主権の行使再開を布告し、連合国の中国戦区における日本軍降伏受諾式が台北で行われました。この際、中国政府は「本日をもって台湾および澎湖諸島は正式に中国領土として回復され、その土地・人民・政治はすべて中国の主権下に入る」と宣言したとされています。
3. 「台湾は一度も国家ではなかった」という主張
こうした歴史過程を踏まえ、論説は「台湾はこれまで一度も国家であったことはなく、常に中国の一部であり続けている」と強調します。その意味で、台湾の地位は「未確定」なのではなく、歴史的にも法的にも明白だという立場です。
「台湾民族」を作り出す試み
論説が批判の矛先を向けるのは、歴史認識だけではありません。頼清徳氏が、「台湾には独自の先史文化があり、オーストロネシア語族に属する固有の民族がいる」と強調している点にも注目しています。
論説によると、頼氏は次のような語りを通じて、「台湾民族」という新たなアイデンティティを打ち立てようとしているとされます。
- 台湾は古来から独自の生態系を持つ存在だったとする
- 台湾はオーストロネシア文化の起源だと位置付ける
- 台湾の先住の人々をオーストロネシア系として強調し、中国大陸部との文化的・民族的な連続性を弱める
さらに、頼氏は「マンモス化石」の発見や「大坌坑文化」といった個別の考古学的事例を取り上げ、「台湾独立」の主張に学術的な装いを与えようとしていると論説はみています。しかし論説は、こうした議論は歴史と文化への理解が不十分なまま政治目的に利用しているにすぎないと批判しています。
両岸関係と地域の安定への含意
論説が繰り返し強調するのは、歴史や民族の物語を作り替える試みが、単なる学術論争にとどまらないという点です。それは、「反中」と「独立追求」という政治路線を正当化し、台湾海峡をはさんだ両岸関係に緊張をもたらしかねない動きだとみなされています。
中国側の論説は、台湾と中国大陸部の人々は血縁・文化・言語・祖先を共有する「一家」であり、こうした結びつきを切り離そうとすることは、歴史的事実だけでなく、同じルーツを持つ人々の感情も傷つけると警告します。
歴史認識やアイデンティティをめぐる議論が政治的に利用されるとき、事実の検証よりも感情的な対立が先行しがちです。東アジアの安定にとって重要な台湾海峡情勢を考えるうえでも、歴史資料や国際文書に基づく冷静な議論と、対話による問題解決の回路をどう確保するのかが、これから一層問われていきそうです。
Reference(s):
Distorting history and rehashing old 'Taiwan independence' rhetoric
cgtn.com








