トランプ大統領のポチョムキン関税 世界を揺らす関税ショーを読み解く
2025年の夏、トランプ大統領の関税政策は、発動期限をたびたび先送りするショーのような展開で世界の注目を集めました。本記事では、一部でポチョムキン(見せかけ)と批判されるこの関税政策を整理し、世界経済への意味を考えます。
繰り返される関税発動期限 この夏何が起きていたか
今年夏、トランプ政権と通商協定を結んでいない国々は、8月1日から厳しい関税を課されると予告されていました。しかし直前になって、発動は8月7日に延期されました。世界が新たな締め切りに向けて身構えるなかで、株式市場はそれほど動揺していなかったとされています。
背景には、この数か月続いた関税を巡る「やる、やらない」の繰り返しがあります。ある経済紙のコラムニストは、トランプ大統領は土壇場で必ず引き下がるとして、TACO(Trump Always Chickens Out)という略語まで使いました。投資家は今回の期限も、大きな混乱なく通過すると見ていたという指摘です。
実際、主要な貿易相手の多くは期限前に合意にこぎつけています。欧州連合(EU)、日本、英国はトランプ政権と個別の合意を結び、カナダとメキシコには、トランプ大統領が前回ホワイトハウスにいた時期に再交渉した米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)が存在します。中国との間でも、別の合意が交渉中とされています。
それでも、トランプ政権の関税方針は、世界経済を新たな重商主義の時代に投げ込んだとも言われます。シリア、ラオス、ミャンマーのような小さく脆弱な経済は、最も高い関税の対象となり、大きな打撃を受けることが予想されています。
ポチョムキン関税という比喩
ポチョムキンとは、18世紀ロシアのポチョムキン公が、エカチェリーナ2世に豊かさを誇示するため、実態とかけ離れた立派な村の「セット」を見せたという逸話に由来する言葉です。見栄えは立派だが中身が伴わないものの象徴として使われます。
このイメージになぞらえて、一部の専門家は、トランプ大統領の関税は実体よりも演出の側面が強いと指摘します。世界の強力な指導者としての姿や、厳しい米経済に立ち向かう姿勢をアピールすることが主目的であり、その裏にある政策の中身は乏しいという見方です。
さらに、トランプ大統領が土壇場で関税発動を見送るのは、自身の支持基盤を守るためではなく、企業の有力者への打撃を避けるためだという分析も紹介されています。関税は、労働者や農業地域を含む国内の多くの人々に痛みをもたらしますが、株式市場が急落すれば、政権は素早く方針を修正してきました。
象徴的なのが、4月2日に打ち出された解放の日関税です。急激な関税引き上げが発表されると株価が急落し、この関税はすぐに停止されました。その後も多くの関税が繰り返し延期され、今後も別の関税について同じように引き下がる可能性があると見られていました。こうした動き自体が、関税政策のポチョムキン的な性格を物語っているとされています。
日本とEUとの「史上最大のディール」の中身
トランプ大統領は、最近発表された日本およびEUとの通商合意を、相次いで「巨大だ」「これまでで最大の取引だ」「最も大きな取引だ」と持ち上げました。しかし、これらは通常の通商協定とは異なる形式でした。
一般的な通商協定は、多数の交渉担当者が何か月もかけて詳細を詰め、膨大な文書としてまとめます。ところが、日本やEUとの合意は、短い写真撮影付きの会談の後に発表されたもので、裏付けとなる詳細な文書は示されませんでした。
とりわけ注目を集めたのが、日本が米国に550 billionドルを投資し、その利益の九割を米政府に譲り渡す見返りに、米国側の関税引き下げを得るという話です。しかし、日本側の当局者はこうした条件を否定しており、実際にどのような約束が交わされたのかは明確ではありません。
そのため、日本はほとんどコストを払わずに良い条件を確保した可能性があり、このやり方はドイツや韓国のような他の大口輸出国にとっても参考になるとの見方が紹介されています。表向きは「史上最大」と強調されながら、実際には中身が乏しい可能性がある点でも、ここにポチョムキン的な特徴が見て取れる、という指摘です。
世界経済にとっての意味 三つのポイント
こうした関税ショーは、世界や日本にとって何を意味するのでしょうか。論点を三つに整理してみます。
- 一貫性よりも即興性が目立つ通商政策
発動と延期が繰り返される関税は、企業や投資家にとって大きな不確実性の源になります。数字そのもの以上に、政策の予測可能性が揺らぐことが問題だと考えられます。 - 関税は経済政策であると同時に政治的な演出
強い指導者像を示すために関税が使われると、国内向けのパフォーマンスと対外経済政策が絡み合います。その結果、実際の経済効果よりも、メディア映えする表現が優先されるリスクがあります。 - 最も傷つきやすいのは小規模で脆弱な経済
シリア、ラオス、ミャンマーのような小さな経済が最も高い関税に直面している点は象徴的です。大国同士の駆け引きの陰で、選択肢の少ない国や地域ほど打撃を受けやすい構図が浮かび上がります。
これからを考えるための視点
トランプ大統領のポチョムキン関税をめぐる一連の動きは、関税や通商交渉を単なる専門家向けニュースとしてではなく、私たちの生活や仕事と地続きの問題として捉え直すきっかけになりそうです。
今後を考えるうえで、例えば次のような問いが立てられます。
- 日本を含む主要な輸出国は、米国の即興的な関税政策にどう向き合うべきか。
- シリアやラオス、ミャンマーのような小規模で脆弱な経済が受ける打撃を、国際社会としてどう和らげていくのか。
- 投資家や市民として、トランプ政権の通商交渉のニュースをどう読み解き、どこに注目すべきか。
ポチョムキン関税と呼ばれる派手な演出の裏側で、静かに影響を受ける人々や地域があります。見出しや数字だけでなく、その背後にある力関係や利害を想像してみることが、2025年の国際ニュースを読み解くうえで、これまで以上に重要になっているのかもしれません。
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Reference(s):
cgtn.com








