中国経済の新たな青写真 第15次五カ年計画と内需拡大
中国経済は2025年前半に前年同期比5.3%の成長を記録し、年間5%の目標に向けて順調に進んでいます。その裏側で、中国共産党指導部はどのような「新たな発展の青写真」を描いているのでしょうか。本記事では、第15次五カ年計画や国内需要拡大策など、最新の政策議論のポイントを整理します。
第15次五カ年計画が描く長期ビジョン
2026〜2030年を対象とする第15次五カ年計画は、中国の今後の発展戦略を方向付ける中長期の柱として位置づけられています。中国共産党中央委員会政治局は7月30日の会合で、2025年10月に北京で開催される第20期中国共産党中央委員会第4回全体会議の主要議題として、この計画を検討する方針を示しました。
声明では、短期の景気下支えと中長期の構造的な目標を組み合わせ、国内需要を拡大しつつ、経済全体のレジリエンス(回復力)を高めることが重視されています。世界的な地政学・経済の不確実性が続くなかで、安定を維持し、脆弱性を下げ、長期目標の軌道を外さないことが改めて強調されました。
4月から7月へ:マクロ環境はより前向きに
7月30日の政治局会議後に発表された声明では、4月時点と比べてマクロ経済環境に対する評価が明らかに前向きになりました。声明は、主要な経済指標が総じて堅調に推移していることや、新しいタイプの生産力が引き続き台頭していることを指摘し、中国経済が活力とレジリエンスを示していると強調しています。
これに対し、4月の政治局会合はより慎重なトーンでした。当時の声明は「改善の兆し」や「信頼感の高まり」を認めつつも、「外部ショックの影響拡大」への懸念を前面に出し、対外環境の変動に備える必要性を訴えていました。
実際、4月以降は米国が一連の関税措置を相次いで発表し、中国にとってローラーコースターのような展開が続きました。4月会合の時点では、実効関税率が100%を超える水準に達していたとされます。それでも、中国の輸出はプラス成長を維持し、高頻度データでは6月から7月にかけて輸出の伸びが持ち直したことが示されました。
5月以降、関税のエスカレーションが一服し、中国と米国の通商対話も進んだことで、過度な外部ショックへの警戒感は徐々に和らぎました。こうした流れを背景に、7月の政治局声明は、中国経済の底堅さと回復力にあらためて自信を示した形となっています。
2025年前半:5.3%成長で目標ペースを維持
2025年上期の「成績表」として示された国内総生産(GDP)の成長率は、前年同期比5.3%でした。これは、2025年通年の成長率目標である5%の達成に向けて、おおむね順調なペースであると評価され、7月の政治局声明でもその点が再確認されています。
目標をやや上回る成長を維持しながら、短期の景気安定と長期の構造改革や新たな成長分野の育成をどう両立させるかが、今後の政策運営の大きなテーマとなります。
需要サイド重視の政策スタンス
政策面では、需要サイド、とりわけ国内需要の拡大が引き続き重視されています。外部需要の変動に対する懸念がいくぶん後退するなかで、内需を着実に押し上げることで景気を下支えし、長期的な成長力も高めていくという方向性が打ち出されています。
財政政策:支出拡大と地方財政のてこ入れ
7月の会合では、より積極的な財政政策を続ける方針が示されました。具体的には、政府債の発行を加速し、財政資金の執行を速めることで、実体経済に流れ込む資金を増やす考えが示されています。
その結果、2025年上期の中央・地方を合わせた政府支出の伸び率は前年同期比8.9%と、前年の同期間のマイナス2.8%から大きく改善しました。財政支出の拡大は、公共投資や社会保障、各種の支援策などを通じて国内需要の押し上げに寄与したとみられます。
今後についても、財政政策は年後半の成長を支え続けると見込まれています。中国国家発展改革委員会は、地方政府の資金を補完するため、より多様な政策手段を用いる方針を示しました。これは、インフラ整備や都市再開発など地方レベルのプロジェクトを安定的に進めるうえで、重要な意味を持ちます。
金融政策:慎重な緩和で資金繰りを支える
金融政策については、「合理的に緩和的」なスタンスを維持することが決定されました。十分な流動性を確保し、実体経済の資金調達コストをさらに引き下げることが狙いとされています。
一方で、声明文には政策金利や預金準備率の引き下げといった具体的な追加緩和策への言及はありませんでした。このため、マネー供給の拡大はあくまで中程度にとどまり、過度な金融緩和には踏み込まないとの見方が広がっています。
その背景には、すでに金利水準が相対的に低い水準にあり、銀行の利ざや(貸出金利と調達金利の差)が圧迫されている現状があります。金利を大きく下げれば企業の資金繰りは楽になる一方で、金融機関の収益力は低下しかねません。こうしたバランスを意識しながら、財政政策との役割分担を図っていると考えられます。
次の焦点:消費・サービス・資本市場
今後の政策の焦点として、消費の底上げ、とくにサービス消費の拡大が挙げられています。製造業中心の投資主導から、内需やサービス産業をより重視する構造へのシフトは、中長期の持続的な成長を実現するうえで重要なテーマです。消費者の安心感を高める取り組みや、サービスの質と供給力を高める政策が鍵となりそうです。
会議ではあわせて、資本市場の発展と都市のアップグレード(都市機能の高度化)への強い支持も表明されました。株式や債券などの資本市場を通じた資金調達を活性化することは、企業の成長を支え、産業構造の高度化につながります。都市インフラの更新や居住環境の改善は、新たな投資需要を生み出すと同時に、住民の生活の質を高める要素にもなります。
日本の読者にとっての意味
中国経済の動向は、アジアのサプライチェーンや金融市場、日本企業のビジネス戦略にも少なからぬ影響を与え得ます。第15次五カ年計画と国内需要拡大策の方向性を押さえておくことは、中国との取引や投資を考えるうえで重要な参考情報になるでしょう。
2025年前半のデータと政治局会議のメッセージからは、中国が外部環境の不確実性に備えつつ、財政・金融政策と構造的な改革を組み合わせて長期的な発展をめざしている姿が浮かび上がります。7月時点では、10月に予定された第20期中央委員会第4回全体会議で、第15次五カ年計画の詳細な議論が進むことが期待されていました。その議論の行方を追うことは、今後の中国経済を理解するうえで欠かせない視点となるはずです。
Reference(s):
cgtn.com








