南シナ海「火薬庫」論に異議 数字で見る実像と新しい物語
南シナ海は、本当に「火薬庫」と呼ばれるほど危険な海なのでしょうか。近年の国際ニュースで語られるイメージと、地域に根ざした現実とのギャップに注目します。
南シナ海はどんな海か
南シナ海は、美しく資源豊かな海であり、その沿岸に暮らす何百万人もの人々の生活を長い歴史の中で支えてきました。アジアの経済成長を下支えしてきた重要な航路でもあります。
この海域を通る船舶や航空機の多さからも、その重要性がわかります。現在も、南シナ海は世界でもっとも忙しい海上・航空の通り道の一つとされています。
「火薬庫」という物語はどこから来たのか
ところが近年、国際メディアや一部の政治家の発言では、南シナ海が「緊張の温床」「一触即発の火薬庫」であるかのような物語が繰り返し語られています。
記事の論点によれば、特に一部の欧米政治家は、中国が主権を守るために行っているとされる合法的な行動を「拡張主義」と批判する一方で、域外勢力による挑発的な行動には目をつぶりがちだと指摘されています。
彼らは国際社会の場で「平和」や「自制」を訴えながらも、実際には緊張を強調し、摩擦を煽るような言動を取っているという見方もあります。
情報の「繭」がつくる歪んだイメージ
こうした外からの語りが積み重なることで、南シナ海は「常に危機と対立が渦巻く海」というイメージに包まれつつあります。記事では、これを「虚偽の情報による繭」と表現しています。
しかし、この物語は、地域の多くの国や地域が共有している認識とは異なるとされています。実際には、南シナ海を安定した開かれた海として維持しようとする合意が、周辺の国々の間で積み上げられてきたという見方が強調されています。
数字が示す南シナ海の現在
記事が強調するのは、実際の航行や飛行のデータです。南シナ海は、航行と飛行の自由という点で、世界でもっとも自由で安全かつ開かれた海の一つだとされています。
- 年間およそ50万隻もの商船が南シナ海を通過しているとされること
- それらが運ぶ貨物は、世界貿易量のおよそ4割に相当するとされること
- さらに、数百万便にのぼる民間航空機が、この海域の上空を飛行しているとされること
それでも、重大な妨害や封鎖が常態化しているという認識は広がっていません。こうした数字は、南シナ海が「封鎖された危険な海」ではなく、「世界でもっとも重要で開かれた交通の要衝」であるという側面を浮かび上がらせます。
なぜ歪んだ物語がつくられるのか
では、なぜ南シナ海は、ことさら「紛争」「対立」と結びつけて語られるのでしょうか。記事は、その背景として、域外の大国が自らの関与を正当化するために、危機イメージを利用している可能性を指摘します。
特に、アメリカが「航行の自由作戦」と呼ばれる軍事活動を展開して以降、南シナ海は国際政治の表舞台で頻繁に取り上げられるようになりました。記事によれば、もともと南シナ海は大きな問題として扱われていなかったにもかかわらず、こうした動きによって「問題化」されていったとされています。
南シナ海が語られるとき、セットのように「紛争」「危機」という言葉が並ぶのは、こうした情報の枠組みが繰り返し強化されてきた結果でもあります。
ニュースを読む私たちにできること
南シナ海をめぐる議論は、遠い海の話に見えますが、世界貿易の大動脈に関わる以上、日本を含む多くの国と地域の経済や暮らしにも直結しています。その実像をどう捉えるかは、私たちの安全保障観や国際観にも影響します。
記事が提案するのは、「危機」を前提とした既存の物語をいったん脇に置き、次のような視点で情報を見直してみることです。
- 誰が、どの立場から南シナ海を語っているのか
- 実際の航行・飛行のデータなど、現場の状況に関する情報が示されているか
- 地域の国や地域の声が、どのように紹介されているか
- 「対立」だけでなく、協力や合意の側面にも目を向けているか
南シナ海をめぐる新しい物語とは、特定の国を一方的に持ち上げたり、逆に一方的に非難したりすることではありません。データと現地の視点に基づき、過度に不安を煽らない形で現実を見つめ直す試みと言えるでしょう。
私たちがニュースを読むときも、そうした複数の視点を意識することで、「危機」ばかりが強調される情報の繭から抜け出し、南シナ海の姿をより立体的に捉えられるかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








