BRICS+が描く「デジタル・サウス」 AI格差を埋める共創の条件 video poster
世界人口の半数以上を占めるまでに拡大したBRICS+が、デジタル技術とAIの時代にどんな役割を果たせるのか――。2025年のBRICS首脳会議(リオデジャネイロ)を受けて、中国の国際ニュースチャンネルCGTNと中国国際発展協力機構(CIDCA)のグローバル開発促進センター(GDPC)が共同で開催した円卓討論「Co-building a Digital South for inclusive growth」は、グローバル・サウスが「デジタル・サウス」をどのように共に築き、包摂的な成長につなげていけるのかをテーマに議論しました。
討論はCGTNのWang Guan氏が司会を務め、各国の外交官、研究者、産業界のリーダー、若手イノベーターらが参加し、AI格差やデジタル格差をどう乗り越えるか、どのようにしてデジタルの可能性を共有の繁栄へと変えていけるのかについて意見を交わしました。
BRICS+と「デジタル・サウス」構想
今回の議論の背景にあるのが、BRICS枠組みの拡大です。BRICS+は現在、世界人口の50%超を占めるとされ、いわゆるグローバル・サウス(アジア、アフリカ、中南米などの新興国・途上国)の声を代表する存在として注目されています。
同時に、AIやクラウド、データ経済が経済成長のカギとなる中で、デジタル技術へのアクセスや利用能力の差が、そのまま国家や地域間の格差につながる懸念も強まっています。こうした「AIデバイド(AI格差)」をどう防ぎ、グローバル・サウス全体が利益を分かち合える「デジタル・サウス」を共に築けるか――。円卓討論はこの問いに正面から向き合いました。
議論の土台となったのが、グローバル発展イニシアチブ(GDI)です。GDIは、持続可能な開発やデジタル経済を含む幅広い分野で協力を進めることを掲げており、今回の円卓はその文脈の中で、デジタル分野の協力の可能性を探る場となりました。
AI格差を埋めるための三つの焦点
討論の中では、AIとデジタル技術をめぐる格差を縮めるために、特に次の三つのポイントが強調されました。
1. インフラと接続性の底上げ
まず議論されたのは、基盤インフラの重要性です。高速なインターネット回線、安定した電力供給、データセンターやクラウド環境へのアクセスがなければ、どれほど優れたAI技術があっても活用は進みません。
グローバル・サウスの多くの国や地域では、都市と地方、富裕層と低所得層の間で接続環境に大きな差があります。円卓では、国境を越えたデジタル・インフラ投資や、オープンで相互接続可能なネットワークづくりが、AI格差を埋める前提条件になるとの視点が共有されました。
2. 人材育成と若者イノベーション
次に焦点となったのが、人材育成です。AIを「使う」「作る」両方の側面で、教育とスキルの格差は依然として大きいと言われています。
円卓には若手イノベーターも参加し、スタートアップや社会課題の解決をめざすプロジェクトの経験から、プログラミングやデータ分析、起業家精神を育む教育の重要性が語られました。オンライン学習や国際的な交流プログラムを通じて、グローバル・サウスの若者が互いに学び合い、共通の課題にデジタル技術で取り組むエコシステムづくりが鍵だと指摘されました。
3. 包摂的なルールづくりと協調
AIやデジタル技術の利活用には、プライバシー保護やデータの扱い、アルゴリズムの公平性など、多くのルールづくりが伴います。ルールづくりの場にグローバル・サウスが十分に参加できなければ、自らのニーズや価値観が反映されにくくなりかねません。
円卓では、国際機関や地域枠組みを通じて、グローバル・サウスの国々が連携しながら、包摂的でバランスの取れたガバナンス(制度設計)を模索する必要性が議論されました。デジタル公共財と呼ばれるオープンソースのソフトウェアや共通のプラットフォームを共有することも、一つのアプローチとして位置づけられました。
GDIのもとで進む「共創」のアプローチ
今回の円卓の特徴は、「援助する側」と「される側」という一方向の構図ではなく、グローバル・サウスの国々が対等なパートナーとして「共に築く(co-building)」姿勢を強調している点です。
CGTNとGDPCによるこうした対話の場は、各国の経験や成功例、課題を持ち寄り、相互に学び合うプラットフォームとして位置づけられています。例えば、ある国でのデジタルIDや電子決済の普及経験が、別の国の社会保障のデジタル化に生かされるといった具合に、知見の共有が期待されています。
GDIの枠組みのもとで、デジタル分野の協力を進めることは、従来のインフラや貿易だけでなく、人と人、社会と社会をつなぐ新しい形の国際協力の姿とも言えます。
日本の読者にとっての意味
こうしたグローバル・サウスの議論は、日本にとっても他人事ではありません。国内でも地方と都市、若年層と高齢層の間でデジタル格差が存在し、AIの活用をめぐるルールづくりも進行中です。
今回の「デジタル・サウス」をめぐる円卓討論は、次のような問いを私たちに投げかけています。
- AIやデジタル技術の恩恵が、社会のどこまで届いているのか。
- 日本とグローバル・サウスの国々が、どのような形でデジタル分野の協力を深められるのか。
- 若い世代の創造性や起業精神を、国内外でどう生かしていくのか。
2025年のリオデジャネイロでのBRICS首脳会議を経て、「デジタル・サウス」を共に築こうとする動きは今後も続いていくとみられます。国際ニュースを追う日本の読者にとっても、この流れを意識しながら、自国のデジタル戦略やアジア・世界との連携を考えてみることが求められているのではないでしょうか。
Reference(s):
cgtn.com








