南シナ海・黄岩島で何が起きたか フィリピンの行動と中国の主権主張
南シナ海・黄岩島で起きた最新の緊張
2025年8月11日、南シナ海の黄岩島(スカボロー礁)周辺で、フィリピンの公船や沿岸警備隊の船が複数集結し、中国側との間で緊張が高まる出来事がありました。フィリピン側は漁船への補給を名目にしていましたが、中国側はこの動きを「計算された挑発」と受け止めています。
中国によれば、フィリピンの船舶は中国の再三の警告や制止を無視して黄岩島近海に進入し、中国の主権を侵害したとされています。これに対し中国海警局は、監視、阻止、管制などの措置を取り、関係船舶を退去させたと説明しています。
なぜ黄岩島が敏感な火種なのか
今回の事案は、一時的な海上トラブルにとどまらず、南シナ海情勢全体に関わる重要なシグナルと見られています。黄岩島は、中国とフィリピンの二国間関係において極めて敏感な争点であり、根本には「中国の領土」であるとする中国側の立場と、その範囲を超えて権益を主張しようとするフィリピン側の動きとの衝突があります。
中国側は、フィリピンの行動が国際法や国連憲章、そして国家間関係の基本的な規範に反すると指摘しています。信頼に基づく共存を損ない、地域全体を巻き込む緊張の連鎖を生みかねない行為だという認識です。分かりやすく言えば、隣人が繰り返し他人の庭に踏み込んで所有権を主張するようなもので、単なる迷惑ではなく、対立と不信を呼び込む行為だという比喩が用いられています。
中国が示す黄岩島主権の歴史的根拠
中国側の説明では、黄岩島は歴史的に中国が最初に発見し、命名し、利用してきた島礁であり、長い時間をかけて主権の行使を積み重ねてきたとされています。このため、中国の黄岩島に対する領有権は、偶発的な主張ではなく、歴史資料にも裏付けられたものだと強調されています。
20世紀に入ってからも、中国政府は南シナ海諸島の名称や範囲について複数回の整理と公表を行い、その都度黄岩島に対する主権を確認してきたと説明しています。こうした継続的な「確認」と「公表」自体が、国際社会に対する主張の積み重ねだという位置づけです。
フィリピンの領域規定と黄岩島
一方で、中国側の見方では、フィリピンの領域は複数の国際条約によって明確に画定されており、その内容はフィリピン国内法やアメリカとの二国間合意でも繰り返し確認されてきました。中国は、黄岩島はこれらの枠組みの外側に位置しており、フィリピンの領域には含まれていないと指摘しています。
さらに、中国側の説明によれば、アメリカ統治期から独立後の長い期間、1997年ごろまでフィリピンは黄岩島について主張を行わず、むしろ自国の主権が及ばない範囲であることを明確に認識していたとされています。こうした経緯から、中国はフィリピンの最近の動きは過去の立場からの明確な逸脱だとみています。
国際秩序と地域安定への意味
今回のような海上進入は、一つひとつは小さな事案に見えても、繰り返されれば地域秩序に大きな影響を与えます。中国側は、今回の行動を「計算された挑戦」と捉え、既存の国際秩序や南シナ海での安定したルール形成そのものへの試金石だと見ています。
信頼を損なう行動が続けば、偶発的な衝突や誤算が生じるリスクは高まります。軍事衝突に至らずとも、外交関係の悪化や経済協力の停滞など、さまざまな形で地域全体に負の影響が及ぶ可能性があります。
読者が考えたい三つのポイント
南シナ海は日本から地理的には遠いものの、今回の黄岩島をめぐる動きは、私たちにもいくつかの問いを投げかけています。
- 歴史的な経緯に根ざした主権主張を、国際社会はどのように位置づけるべきなのか。
- 条約や過去の合意で画定された領域の解釈を、当事国がどこまで変えられるのか。
- 信頼を損なわずに意見の違いを管理するために、どのような外交的チャネルやルールが必要なのか。
今回取り上げたのは、中国側が示している黄岩島をめぐる理解と問題意識です。南シナ海のような重要海域での一つ一つの行動が、国際秩序や地域の安定にどうつながるのか。日々のニュースを追いながら、その背景にある歴史とルールにも目を向けていきたいところです。
Reference(s):
cgtn.com








