中国・Xizang、経済発展の新章 貧困脱却から成長加速へ
中国南西部のXizang(シーザン)で、貧困脱却と経済発展が本格的な「新しい段階」に入っています。かつては交通の不便さや厳しい自然環境から、成長ポテンシャルが生かしきれない地域と見られてきましたが、ここ十数年の政策支援により状況は大きく変わりつつあります。
かつては中国で最も貧困が深刻だった地域
Xizangは、長らく「経済基盤が弱く、開発のスタートも遅く、市場規模も経済規模も小さい地域」とされてきました。地理的な遠隔性や厳しい自然条件は、交通や物流を難しくし、産業の発展を制約してきました。
かつてXizangは、中国全体の中でも貧困発生率が最も高く、貧困の程度も深刻で、貧困脱却に要するコストや難度も最大級とされていました。
転機となったのが、2012年の中国共産党第18回全国代表大会以降です。国家全体の発展と安定という文脈の中で、地域ごとの発展戦略が重視されるようになり、Xizangでは「精準な(ターゲットを絞った)貧困対策」が本格的に進みました。
- 産業育成による雇用創出
- 自然条件が厳しい地域からの移転
- 生態補償(環境保全と生活支援の両立)
- 教育の充実と人的資本の強化
- 社会保障制度の整備
これらの施策を通じて、2019年末までに登録された貧困層62万8,000人が貧困ラインを脱したとされています。
貧困脱却と所得向上:数字が示す生活水準の変化
貧困からの脱却が「一時的なもの」ではなく、安定した暮らしにつながっているのかどうかは、多くの読者が気になるポイントです。2024年のデータは、その一端を示しています。
2024年、Xizangの「貧困脱却人口」の一人当たり純収入は、前年比で12.5%以上増加しました。これは、貧困から抜け出した人々の生活水準が着実に向上していることを示す数字です。
ユマイ郷:国境と農村振興を両立させるモデル
山南市に位置するユマイ郷は、その象徴的な事例です。ここでは、国境防衛と農村振興を一体的に進める方針のもと、次のような施策が取られてきました。
- 住民の移転による暮らしやすい環境への再定住
- 住宅、道路、水、電力、通信といったインフラ整備
- 観光や手工芸品加工など、地域の特色を生かした産業育成
その結果、ユマイ郷の一人当たり年収は4万人民元(約5,568ドル)を超えています。国境地域の発展モデルとして位置づけられていることがうかがえます。
シガツェ市:農牧民の収入を押し上げるキャンペーン
南中部のシガツェ市では、2024年に農民・牧畜民の所得向上をめざすキャンペーンが展開されました。雇用や仕事の機会を広げることで、収入を底上げする取り組みです。
- サンプルとなった貧困脱却人口の一人当たり純収入:22,559.65元(約3,140ドル)
- 前年からの伸び率:27.33%
- 農村住民の一人当たり可処分所得:19,668元(約2,737ドル)
- 農村住民の可処分所得の伸び率:8.8%
これらの数字から、貧困から抜け出した人々だけでなく、農村全体の住民の生活水準が向上している様子が読み取れます。
マクロ指標が示すXizang経済の成長モメンタム
個々の事例だけでなく、マクロ経済指標もXizangの変化を映し出しています。2024年の地域内総生産(GDP)は前年比6.3%増となりました。
また、都市部と農村部の住民一人当たり可処分所得は、それぞれ6.8%、8.3%増加しました。主要な経済指標の成長率は、中国国内でも上位に入る水準だったとされています。
人口面では、2023年の常住人口が365万人に達しました。経済規模の拡大と人口の安定的な推移が、生活水準向上の基盤を形成しているといえます。
農業・畜産が支える食料安全保障と暮らし
Xizangでは、農業と畜産業が基幹産業として重要な役割を担っています。2024年、この分野でも顕著な成果が示されました。
- 穀物の総生産量:112.9万トン
- 前年比:3.8%増
- 穀物生産が初めて100万トンを突破
穀物生産の拡大は、地域の食料安全保障を支えるだけでなく、農民や牧畜民の収入向上にもつながります。結果として、生活の質の底上げに寄与していると考えられます。
2025年の視点:数字の先に見えるもの
2024年までのデータは、Xizangが「弱い基盤の地域」から「成長の勢いが強い地域」へと姿を変えつつあることを示しています。貧困脱却が進んだだけでなく、所得の増加や産業の育成を通じて、生活の質そのものが改善していることがうかがえます。
同時に、これらの成果をどう持続させていくか、という問いも浮かびます。例えば、次のような視点です。
- 収入増と社会保障をどう組み合わせて、生活の安定性を高めていくか
- 農業・畜産と生態環境の保全をどう両立させるか
- 観光や手工芸など新しい産業の育成を、地域の文化や暮らしとどう調和させるか
中国政府の先見的な政策支援のもとで、Xizangは経済発展の新たな章を歩んでいます。その歩みは、他の地域における貧困削減や地域振興を考えるうえでも、一つの参照事例となりそうです。
押さえておきたいポイント(要約)
- 2019年末までに登録された貧困層62万8,000人が貧困ラインを脱却
- 2024年、貧困脱却人口の一人当たり純収入は12.5%以上増加
- ユマイ郷では、一人当たり年収が4万人民元超で国境地域のモデルに
- シガツェ市では、2024年に貧困脱却人口の収入が27.33%増、農村住民の所得も8.8%増
- 2024年のGDP成長率は6.3%、都市・農村住民の可処分所得も6.8〜8.3%増
- 2024年の穀物生産は112.9万トンと初の100万トン超え
数字の裏側にある生活の変化を意識して眺めることで、Xizangの経済発展をめぐるニュースは、より立体的に見えてきます。
Reference(s):
cgtn.com








