シーザンの空を変えるドローン 一人の技術者が拓く子どもたちの未来 video poster
中国西部のシーザン(Xizang)で、ドローンと宇宙教育を通じて高原の暮らしを変えようとしている男性がいます。家族と離れてこの地にやって来たZhang Boさんの静かな挑戦は、2025年のいま「テクノロジーは誰のためのものか」という問いを私たちに投げかけます。
家族を残してシーザンへ――一人の技術者の決断
Zhang Boさんがシーザンに来た理由は、とてもシンプルで、しかし揺るぎないものです。それは「現地の子どもたちに、できるだけ早くテクノロジーの力を体験してほしい」という願いです。
標高の高い高原地域では、教育機会やデジタル環境が都市部ほど整っていないことが少なくありません。そうした場所に自ら足を運び、家族と離れて暮らす選択をしてまで、子どもたちに新しい学びの場をつくろうとしている――そこに、彼のミッションの重さがにじみます。
子どもたちに「技術の力」を――宇宙から始まる授業
シーザンでZhang Boさんが取り組んでいるのが、子ども向けの航空宇宙(エアロスペース)教育です。ロケットや人工衛星、地球を取り巻く宇宙空間といったテーマは、都市部の子どもたちにとっても難しい内容ですが、高原の子どもたちにとってはなおさら遠く感じられがちです。
そこで彼は、専門的な分野をできるだけ身近な例につなげながら、テクノロジーへの好奇心を育てようとしています。「宇宙」は、単なるロマンではなく、科学的な考え方や問題解決の姿勢を学ぶ入り口にもなります。幼い頃からそうした視点に触れることは、将来の進路選択や職業観にも確かな影響を与えるはずです。
ドローンが担う、高原の日常インフラ
Zhang Boさんの仕事は、教室の中だけにとどまりません。彼が活用しているドローンは、シーザンの高原の日常そのものを静かに変えつつあります。
ドローンが使われている場面は、次のように多岐にわたります。
- 広い畑への種まき
- 農地への肥料散布
- ヤクの群れの見守りや誘導など、放牧のサポート
- 山頂付近への重い機材や物資の輸送
高原では、傾斜がきつい斜面や長い距離の移動が日常的な負担になります。ドローンを使うことで、人が何時間もかけて歩いていた作業を短時間で終えられたり、危険な場所に無理をして近づかなくてよくなったりします。
こうした「小さな効率化」の積み重ねは、農作業や遊牧の負担を軽くするだけでなく、高齢者や女性など、身体的な負荷を抱えやすい人たちの働き方も変えていきます。テクノロジーが、高原で暮らす人々の安全と生活の質を静かに底上げしていると言えるでしょう。
テクノロジーが地域にもたらす3つの変化
シーザンでの取り組みからは、テクノロジーが地域にもたらす変化を、次の3つの視点で考えることができます。
- 教育の格差を埋めるきっかけ
宇宙やドローンといった最先端分野に触れることで、子どもたちは都市部と同じ水準の夢や将来像を描きやすくなります。それは単なる知識の提供ではなく、「自分にもできるかもしれない」という自己肯定感につながります。 - 生活の安全性と効率の向上
種まきや肥料散布、放牧の見守り、物資の輸送など、日々の暮らしに直結する作業をドローンが担うことで、危険や負担を減らすことができます。これは、人口が少なく高齢化が進みやすい地域にとって、とても重要な支えになります。 - 若い世代のキャリアの選択肢を広げる
身近な人がドローンを操り、宇宙の話をしてくれる環境は、子どもたちに新しい職業のイメージを与えます。「高原に生まれたから選べない仕事」ではなく、「高原にいても挑戦できる仕事」があることを示してくれるのです。
SNS発の物語が映す、これからの地域づくり
このシーザンでの取り組みは、SNS上では「#Xizang」や「#EchoXizang」といったハッシュタグとともに紹介され、多くの人の目に触れています。遠く離れた高原の出来事が、スマートフォンの画面を通じて世界中に共有される――そんな風景もまた、テクノロジーがもたらした変化の一つです。
私たちはしばしば、テクノロジーの話題を都市や巨大企業の文脈で捉えがちです。しかしZhang Boさんのように、一人の技術者が地方に入り、子どもたちと向き合いながらドローンを飛ばす姿は、別の可能性を示しています。
最先端の技術が、大きな構想や派手なプロジェクトだけでなく、日々の生活の負担を減らし、子どもたちの目を輝かせるためにも使われている――シーザンの物語は、そのことを静かに教えてくれます。
2025年のいま、画面越しにこのニュースを読む私たち一人ひとりも、「自分の暮らす場所で、テクノロジーをどう生かせるか」という問いを、そっと自分ごととして受け取ってみてもよさそうです。
Reference(s):
cgtn.com








