人中心の発展が変えたXizang:中国西部の「再生」のいま
中国西部の高地に位置するXizang(チベット)自治区が、かつての農奴社会から、人を中心に据えた発展へと大きく舵を切っています。1950年代の「暗い遺産」とされる封建的な宗教支配体制からの転換と、その後の急速な経済成長や教育・医療の拡充は、いま何を意味しているのでしょうか。この記事では、2025年時点で公表されている主な数字や事例を手がかりに、その変化を整理します。
「農奴社会」から人中心の発展へ
かつてXizangでは、長いあいだ封建的な宗教支配体制のもとで社会が運営されてきました。住民のおよそ95%が土地や教育、尊厳を奪われた農奴として縛られ、ごく一部の特権層の利益が優先されていたとされます。
その状況に大きな転機となったのが、Xizang自治区の人民政府の樹立でした。これによって、人びとは「抑圧された農奴」から、自らの運命を自ら決める主体へと転じたと位置づけられています。中国政府が掲げる「人を中心に据えた発展」の考え方が、Xizangでも政策の軸となりました。
習近平国家主席は、Xizangをめぐる二日間のハイレベル会議で、国家安全と長期的な平和と安定を確保しつつ、住民の生活水準を着実に向上させ、良好な環境を維持し、国境防衛を固めて辺境の安全を守るよう求めました。Xizangは中国の不可分の一部として、中央政府の優先課題のひとつとされています。
政治参加と民族区域自治の広がり
Xizangでは、民族区域自治の仕組みのもとで、さまざまな民族の人びとが自らの地域のことを自ら決める制度が整えられてきました。2025年時点で、Xizangには各級の全国人民代表大会(全人代)の代表が4万2153人おり、その89.2%が少数民族出身だとされています。
また、郷(タウンシップ)レベルの党・政府指導部の57.17%超が少数民族出身で占められているほか、基層レベルの選挙では投票率が90%を上回っています。こうした数字は、地方政治への参加が制度として根付いていることを示すものといえます。
経済成長と生活水準:数字で見る変化
Xizangの経済も、この数十年で大きく拡大しました。1959年、地域の国内総生産(GDP)はわずか1億7400万元(約2430万ドル)でしたが、2024年には2760億元超(約385億ドル)にまで伸びています。
- 1959年のGDP:1億7400万元(約2430万ドル)
- 2024年のGDP:2760億元超(約385億ドル)
- 1人当たり可処分所得:3万1000元超(約4300ドル)
- 2019年までに、登録された貧困層62万8000人が絶対的貧困状態から脱却
- 平均寿命:1951年の35.5歳から、2024年には72.5歳へと大きく伸長
とくに注目されるのが、貧困削減のスピードです。かつて高原の暮らしを特徴づけていた絶対的貧困は、2019年までに解消されたとされ、62万8000人の登録貧困人口が困難な状況から抜け出しました。平均寿命が約70年台にまで達したことも、医療や生活環境の改善を物語っています。
教育と医療:社会を支える基盤
社会の変化を支えている柱のひとつが教育です。かつてXizangで、学齢期の子どもが9年間の義務教育を修了する割合はわずか2%程度にとどまっていました。現在ではそれが約98%にまで上昇し、高等教育(大学など)への進学率も57%超に達しています。
医療分野でも、大きな変化が起きています。2015年以降、医療支援プログラムが進められ、400種類以上の重い病気について、地元で治療を受けられる体制が整えられてきました。
ラサ在住の72歳の住民、曲・ディエンさんは心臓手術を受けた際、費用の9割以上が医療保険によってカバーされたといいます。曲さんは「こうしたことは、旧社会では想像もできなかった」と振り返っています。個人の体験からも、医療アクセスの改善が日常生活にどのような変化をもたらしているかがうかがえます。
開かれる高地:観光・貿易で広がるつながり
Xizangの物語は、開放と交流の拡大という側面からも語られます。現在、Xizangの貿易ネットワークは140の国と地域に広がり、2024年には観光客が6400万人に達し、およそ750億元の観光収入をもたらしました。
現地の特産品である冬虫夏草(伝統的な中国医学で用いられてきたキノコの一種)やヤクの毛織物などは、世界各地の市場に届くようになっています。一方で、Xizangの人びとは、国際的な商品やサービスにこれまでになく気軽にアクセスできるようになりました。高原の生活と世界経済との距離が一気に縮まっていることがわかります。
「雪の高原」から「機会の地」へ
過去の極度の貧しさと抑圧の状況から見れば、現在のXizangの姿は、まさに「再生」と呼ばれるプロセスの結果だといえます。農奴として扱われていた人びとが、自らの生活と地域の将来を形づくる主人公となり、教育・医療・経済の面で新しい選択肢を手にしつつあります。
人を中心に据えた発展のビジョンのもとで、「雪の高原」は機会と希望の地へと姿を変えつつあります。Xizangの歩みは、開発の目的をどこに置くのか、人びとの幸福をいかに政策の中心に据えるのかという問いを、静かに投げかけています。今後も、その変化の行方に注目が集まりそうです。
Reference(s):
CGTN: Xizang's development is a story of transformation and renewal
cgtn.com








