20キロ先の夢:中国シッカン自治区のチベット少年の通学と寄宿学校 video poster
中国南西部のシッカン自治区(Xizang Autonomous Region)の農牧地帯に暮らす14歳のパサン・ドンドゥプさんは、自宅から約20キロ離れた寄宿学校に通いながら、兵士になるという夢を育てています。過酷な自然環境と人口の少なさから教育へのアクセスが難しい地域で、寄宿学校がどのように子どもたちの未来をひらいているのか。その一端が、パサンさんの通学の物語に見えてきます。
20キロの道のりが開いた学びの扉
この地域は自然環境が厳しく、人口もまばらです。集落同士の距離が長く、学校まで簡単に通えない子どもも少なくありません。教育の機会そのものが、大きなハードルになりがちな土地です。
こうしたなかで、寄宿学校は農業や牧畜を営む家庭の子どもたちにとって、学びへの扉になっています。自宅から離れた場所に教育環境を集約し、勉強と生活の場を同時に提供することで、長い通学距離という物理的な壁を乗り越えやすくしているのです。
パサンさんの家も、農業や牧畜で生計を立てる家庭のひとつです。自宅と学校の距離は約20キロ。地図上では短い直線に見えても、彼にとっては、家族と離れるさびしさと、新しい世界への期待が交差する20キロでした。
ホームシックから始まった寄宿生活
14歳で寄宿学校に入ったパサンさんのスタートは、決して順風満帆ではありませんでした。最初のころは、慣れない寮生活や家族と離れて暮らす不安から、ホームシックで何度も涙を流したといいます。
それでも日々の生活のなかで、同じ地域から集まった友人たちと時間をともにし、授業や共同生活のリズムに少しずつなじんでいきました。食事や掃除、勉強時間を仲間と分かち合ううちに、寮は次第にもうひとつの家のような場所になっていきました。
静かに育った兵士という夢
寄宿学校での生活に慣れていくなかで、パサンさんの心のなかに、ある夢が静かに芽生えました。それが、兵士になりたいという思いです。
厳しい自然や長い通学距離を経験してきた彼にとって、兵士という職業は、強さや責任感の象徴でもあります。毎日決められた時間に起きて学び、仲間と協力しながら生活する寄宿学校での経験は、その夢をより現実的な目標として意識させているのかもしれません。
将来の具体的な進路はまだ決まっていなくても、パサンさんは、いま目の前にある授業や学校生活に真剣に向き合うことが、自分の夢に一歩近づくことだと感じながら日々を過ごしています。
一人の通学路が映す、山間地の教育のいま
パサンさんの物語は、シッカン自治区のような農牧地域で、教育の機会をどう確保するかという課題を映し出しています。自然条件が厳しく人口が少ない地域では、学校に通えるかどうかそのものが、大きな分かれ道になります。
寄宿学校という仕組みは、そうした地域で暮らす子どもたちに学びの場を提供し、将来の選択肢を広げる役割を果たしています。一方で、家族と離れて暮らす不安やさびしさにどう寄り添うか、心のケアも欠かせません。遠く離れた山間地の出来事は、単なる国際ニュースにとどまらず、教育や地域格差について考えるきっかけにもなります。
自宅から20キロ離れた学校に通い、ホームシックと向き合いながらも、自分の夢を見つめて前に進もうとするパサンさんの姿は、遠い地域の話でありながら、私たちにも問いを投げかけます。教育とは何か。子どもの行きたいという気持ちをどう支えるのか。
国や地域を問わず、学びたいという思いを持つ子どもたちが、その距離や環境にかかわらず、夢に向かって歩んでいける社会をどうつくるのか。パサンさんの20キロの通学路は、その問いを静かに私たちに伝えているようです。
Reference(s):
cgtn.com







