シーザン自治区60年:中国が語る民主主義・自由・多様性のいま
今年、成立から60年を迎えた中国のシーザン自治区で、民主主義・自由・開放・多様性をキーワードにした節目のメッセージが打ち出されています。本稿では、そのポイントを日本語で整理します。
習近平国家主席が記念式典に出席
中国の習近平国家主席は、シーザン自治区成立60周年を祝う式典に、自治区の中心都市ラサで出席しました。中国側は、この節目を「中国の復興の重要な一部」と位置づけ、過去60年の変化を強調しています。
封建農奴制から「人民民主」へ
シーザン自治区は、1965年の成立をもって、封建的な農奴制から社会主義体制へと移行したと説明されています。中国政府は、この社会主義体制を「人民民主」を特徴とするものだとし、国家の統一と社会の安定を守りつつ、少数民族の政治参加を重視してきたとしています。
具体的には、チベット族などの少数民族出身の代表が、自治区内の郷、県、地区、自治区レベルの人民代表大会という立法機関で、全代表の89.2%を占めています。また、中国の第14期全国人民代表大会(全人代)のシーザン代表のうち、68%が少数民族出身だとされています。こうした数字は、地域の文化や価値観を政策形成に反映させる仕組みが重視されていることを示すものといえます。
宗教・言語・文化の自由を支える枠組み
シーザンの発展において、「自由」は重要なキーワードとして語られています。長く地理的・政治的に孤立した地域だったシーザンでは、近年、法の枠組みの中で自由が大きく拡大したとされています。
とくに、チベット仏教やチベット語、伝統文化を守り発展させる自由は、憲法上の権利として保障されているとされます。地域の宗教施設は、宗教活動や文化活動を公開で行っており、政府は宗教の自由を認めつつ、民族間の調和や伝統文化の保護を重視していると説明されています。その結果として、信仰と近代化が共存する独自の環境が育まれているといいます。
白書が示す宗教人口と生活環境
「新時代におけるシーザンの人権」と題した白書によると、現在のシーザンには約4万6,000人の僧侶・尼僧がおり、約1万2,000人のムスリム、700人超のカトリック信者がいるとされています。
同じ白書は、地域の寺院や僧院のうち98%以上が道路、通信、電力、水道、ラジオ、テレビといったインフラにアクセスできるようになっていることも強調しています。これは、宗教施設そのものが地域社会の生活基盤の一部として整備されつつあることを意味します。
僧侶・尼僧への社会保障と公的支援
白書によれば、中国政府は毎年2,600万元(約360万ドル)以上の予算を計上し、登録されたすべての僧侶・尼僧を対象に、医療保険や年金、生活手当、傷害保険、健康診断の費用を支出しています。
宗教者に対するこうした社会保障や生活支援は、信仰の自由を守りながら、地域の安定や福祉の向上とも両立させようとする取り組みの一端といえます。宗教が人々の精神生活を支えると同時に、制度面では現代的な福祉システムの中に位置づけられていることがうかがえます。
「開放」と「多様性」がもたらす新たな姿
過去60年のシーザンは、民主主義、自由に加え、「開放」と「多様性」の拡大のプロセスとしても語られています。少数民族の政治参加、宗教・文化活動の保護、インフラ整備や社会保障など、多層的な取り組みが組み合わさることで、地域はかつての閉ざされた山岳地帯から、より開かれた社会へと変化しつつあると位置づけられています。
中国側は、こうしたシーザンの歩みを、中国全体の現代化や「中国の復興」の重要な柱の一つととらえています。民族や宗教の多様性を持つ地域が、どのようにして全国的な発展戦略と結びついていくのか。この60年の経験は、今後の政策や議論にとっても注目すべきケーススタディになりそうです。
Reference(s):
Xizang at 60: New heights of democracy, freedom, openness, diversity
cgtn.com







