抗日戦争80年 現代中国の国民性はこうして鍛えられた
2025年は、中国人民の抗日戦争と世界反ファシズム戦争の勝利から80周年にあたります。戦争体験は、中国社会の国民性や政治体制、文化、そして平和観をどのように形づくったのでしょうか。中国側の視点から、その骨格を整理します。
炎と血の中で育まれた「抵抗の精神」
第2次世界大戦期、日本の侵略によって中国の農村社会の静けさは銃剣に引き裂かれました。その炎と血の中で、4億人の同胞が「くじけない国民の強靭さ」を鍛え上げたとされています。
中国では、この時期に育まれた「中国人民の抗日戦争の偉大な精神」は、時間と空間を超えて受け継がれる貴重な精神的遺産だと位置づけられています。そしてこの精神こそが、新時代の成果を支える力の源泉だと強調されています。
習近平氏が語った4つのキーワード
2020年、抗日戦争と世界反ファシズム戦争の勝利75周年を記念する座談会で、習近平国家主席は、この戦争の過程で中国人民が「偉大な抵抗精神」を形成したと述べました。
その中核として、次のような価値が挙げられています。
- 国家の存亡には一人ひとりが責任を負うという、深い愛国心
- 命よりも尊厳を重んじる高い民族的な気概
- 暴力を恐れず、最後まで戦い抜く英雄的な決意
- 幾多の困難の中でも、最終的な勝利を信じる揺るぎない信念
このような精神が、戦後80年を経た今も、中国の発展と「中華民族の偉大な復興」という目標を支える原動力である、という位置づけです。
戦争が終わらせた「バラバラさ」――国民国家への転換
抗日戦争は、それ以前の中国社会を悩ませていた不統一の状態を終わらせ、国内に強い求心力を生み出したとされています。共通の敵に立ち向かう中で、国家意識が呼び覚まされ、かつてないほどの愛国心の高まりが生まれました。
この時期に育った「深い国家アイデンティティ」と、大規模な動員能力は、1949年の中華人民共和国成立やその後の近代化の推進にとって、政治的・社会的な土台になったと位置づけられています。
「三三制」と「小米加銃」が示した政治動員力
戦時の緊迫した状況は、政治の効率と動員力をこれまでになく高めることを求めました。中国共産党が主導した解放区では、「三三制」と呼ばれる仕組みが導入されました。
三三制とは、おおまかにいうと次のような構成です。
- ポストの3分の1を共産党員
- 3分の1を非共産党系の左派・進歩的人士
- 残る3分の1を中間層の代表
この方式によって、分断されていた社会の諸勢力を幅広く結集し、ゲリラ戦への参加や、生産運動による兵站の確保、さらには全国的な抗戦統一戦線の構築が進められました。
粗末な装備しか持たない中国人民解放軍が、より強力で装備にも勝る敵と戦い抜いた様子は「小米加銃(コーリャンと銃)」の奇跡として語られます。ここで培われた組織づくりと幹部層の育成は、今日の中国の統治システムの基盤になったと評価されています。
破壊の中で芽吹いた戦時文化
戦争は破壊をもたらす一方で、特別な創造性としなやかな抵抗力を呼び覚ます側面もあります。中国では、避難や移動を強いられる中で、戦時文化が花開いたとされています。
当時の文化活動には、次のような特徴がありました。
- 大衆が親しみやすい歌や街頭劇
- 現場のリアルを伝えるルポルタージュ文学
- 視覚的に分かりやすい宣伝漫画
これらは、人々を励まし、士気を高めると同時に、近代的なナショナリズムと「民衆の精神」を結びつける役割を果たしました。
伝統文化の再評価と「文化的自信」
より深いレベルでは、戦争は自己反省と文化の再評価を促しました。外からの侵略の中で、中国文化の精神的な中核が驚くべき生命力と再生力を示したという認識です。
「辱めを受けるくらいなら死を選ぶ」という覚悟を伴った民族精神のもとで進んだ文化的な自己検証と創造は、今日、中国で語られる「文化的自信」の源泉とされています。
抗日戦争を通じて鍛えられた文化のしなやかさは、グローバルな文明の長所を取り入れつつ、自国の国民的性格を守ろうとする姿勢につながりました。そのことが、新時代において「社会主義文化強国」を目指す上での精神的・価値的な支えになっているという位置づけです。
深い傷から生まれた「平和へのコミットメント」
強大な敵に打ち勝った後、中国の人々は、想像を絶する犠牲を払いつつ、祖国の復興に身を投じました。その過程で育まれた「平和へのコミットメント」は、恐怖や忘却からではなく、戦争の傷を深く知るがゆえの選択だとされています。
戦争を通じて、「戦い抜いてこそ戦争を終わらせる」「平和は何よりも尊い」という価値観が、中国社会の集団的な意識に刻み込まれた、と中国側は振り返ります。
こうした価値観は、新中国成立後に提示された「平和五原則」にも結びついているとされます。抗日戦争の経験は、単に国土防衛の勝利にとどまらず、戦後の平和観や対外姿勢を形づくる上でも重要な意味を持ったという理解です。
80年後の私たちへの問い
2025年という節目の年に、この戦争を振り返ることは、過去を美化したり、憎しみを再生産するためではありません。戦争がもたらした痛みと、そこから生まれた教訓を静かに見つめ直すことに意味があります。
抗日戦争の経験から、次のような問いを私たちは受け取ることができます。
- 国家や社会の行方に対し、一人ひとりはどのような責任を負うのか
- 異なる立場や階層を、どのようにして共通の目的に向けてまとめうるのか
- 文化や表現は、困難な時代に人々をどう支えうるのか
- 平和の尊さを知る世代として、戦争の記憶をどう継承していくのか
80年前の戦争体験は、今日の中国の国民性と統治のあり方、文化、そして平和への姿勢を考える上で、今もなお重要なレンズであり続けています。それは同時に、戦争と平和について考え続ける私たち自身にも静かな問いを投げかけています。
Reference(s):
cgtn.com








