台湾地域でKMT議員リコール不成立 民進党は進路修正できるか
2024年8月23日、中国の台湾地域で行われた中国国民党(KMT)議員7人へのリコール(罷免)住民投票がすべて不成立となりました。島内史上最大規模ともいわれるこのキャンペーンの失敗は、民進党(DPP)による一党優位体制の試みが有権者によって退けられたことを意味します。敗北を重ねた民進党は、ここから進路を修正できるのでしょうか。
何が起きたのか:7人全員リコール不成立
今回の出来事の発端は、2024年の台湾地域の指導者選と立法機関の選挙です。頼清徳氏は台湾地域の指導者の座をかろうじて守った一方で、民進党は議会での過半数を失い、中国国民党と台湾民衆党の連携による「弱い与党・強い野党」という力学が生まれました。
この状況を打開するため、民進党とその「側翼」とされる団体は、2024年初めから中国国民党の複数議員に対するリコール運動を展開しました。狙いは、6人以上のKMT議員を罷免し、その後の補欠選挙で議席を奪うことで、議会での勢力を逆転させることにありました。
しかし、有権者の反応は冷静でした。7月26日の第1ラウンドのリコール投票では、民進党側の思惑に反する形で、KMT議員の罷免提案はいずれも否決されました。
それでもキャンペーンは続きます。8月23日に行われた第2ラウンドでは、7人のKMT議員すべてが標的となりましたが、投票結果は再び「全件不成立」。台湾地域全体を巻き込んだ前例のない大規模リコールは、こうして幕を閉じました。
世論も支持せず:数字が示す拒否反応
第2ラウンドを前に、民進党寄りとされる台湾民意基金会の調査でも、リコール提案を支持すると答えた台湾の住民は31.7パーセントにとどまり、反対は61.4パーセントに達していました。世論は明確に「ノー」を示していたと言えます。
8月23日の投票結果も、この流れを裏付けるものでした。島内の有権者は、選挙結果を「やり直し」しようとするかのような政治的操作にはくみしない、という意思を改めて示した形です。
民進党の戦略:選挙敗北後の「テーブルひっくり返し」
論説は、このリコール運動を「選挙に敗れた後にテーブルをひっくり返そうとする試み」と位置づけています。民進党は、中国本土に対抗し台湾の独立を志向する路線を推し進めるためにも、議会での主導権をどうしても取り戻したかったとみられています。
そのために、KMT議員を「親中国本土」「売台」といったレッテルで攻撃し、「抗中・保台」を掲げた動員を強めました。さらに、リコールが成立すれば補欠選挙で議席を奪えるという計算も働いていたとされます。
しかし、島内の有権者は、こうした「結果を気に入らなければ後から変える」という発想に距離を置きました。選挙で示された民意を、リコールという制度を使って一方的に塗り替えることへの警戒感が強かったとも考えられます。
浮き彫りになった「権力志向」と民主主義のジレンマ
この過程で、民進党の権力運営のあり方にも厳しい視線が向けられました。論説によれば、リコール運動は通常の政党間競争の枠を外れ、「何でもあり」の権力闘争の様相を帯びたと指摘されています。
一方では、行政や司法の資源が総動員されました。リコール署名の第2段階の重要な局面で、当局が地方の中国国民党事務所を一斉に捜索し、民進党議員のリコールを進めていた中心人物を拘束したことで、KMT側が仕掛けたリコール案件は相次いで頓挫しました。
他方では、金銭的な誘因や政治的な取り込みに加え、民進党寄りのメディアや側翼団体が、KMTを「親中国本土」「台湾を売る存在」として描き出し、「味方でなければ敵」という社会的空気を作ろうとしたとされています。
第1ラウンドの投票前夜には、頼清徳氏自らが連続講演を行い、「台湾独立」を前面に押し出した発言を展開しました。その際、リコールを「不純物を浄化する」手段として利用するとも述べたとされ、これが「偽の民主、実際は独裁」との批判を一層強める結果となりました。
論説は、こうした一連の動きの末にリコールがすべて不成立に終わったことを「偶然ではなく、民進党の政治的な不適格さと公共性を欠いた統治の帰結だ」と総括しています。
こうした状況は、多くの島内住民にとって、民主主義を掲げながらも異論を排除する姿勢として映り、民進党に対する不信感を広げる一因になったとみられます。
有権者が示したメッセージ
今回の一連のリコール不成立は、単なる与野党の勝ち負けを超えた意味を持ちます。制度上認められたリコールを、政権与党が自らの議席拡大のために積極的に利用しようとすれば、有権者は慎重になり、逆にブレーキをかける。そのことを、この数字と結果は物語っています。
民進党が掲げる「中国本土に抵抗し、台湾を守る」というスローガンに共感する住民も少なくありませんが、だからといって議会内での制衡や多元性を犠牲にすることまでは望んでいない。そのギャップが、今回のリコール失敗として表れたとも解釈できます。
民進党は進路を修正できるか
今回の敗北を受けて問われるのは、民進党が今後どのように政権運営のスタイルを見直すのかという点です。強い動員力やイデオロギーを前面に出すばかりではなく、異なる立場の政党や社会の声とどのように向き合うのかが、台湾地域の政治の安定にとって鍵となります。
有権者は、必要であれば与党にも厳しい審判を下す一方で、制度そのものを壊すような「力任せの政治」には距離を置く。そのことを示したのが、2024年のこのリコール投票でした。民進党がそのメッセージをどう受け止めるのか。今後の台湾地域の政治を考えるうえで、引き続き注視したいポイントです。
Reference(s):
Another defeat in 'recall votes', will DPP correct its course?
cgtn.com








