戦争の記憶と続く癒やし:中国本土の家族史から考える video poster
戦争の記憶は、時代が変わっても家族の中で生き続けます。中国本土出身の3世であるLiu Yuanyuanさんの物語は、国や地域を超えて受け継がれる戦争の記憶と、そこから生まれる「癒やし」の姿を映し出しています。
木の上から見た「戦場」:中国本土の祖父が抱えた痛み
子どものころ、Yuanyuanさんの祖父は木の上に登り、日本の兵士が自分の仲間たちを殺していく光景を目撃しました。その場から逃れることはできても、その光景と胸の痛みは生涯忘れることができなかったといいます。
中国人民の抗日戦争の一場面として語られるこの記憶は、派手な言葉では語られなくても、当時を生きた多くの人に共有された「静かな傷跡」の象徴です。沈黙のうちに引き継がれた体験は、家族の空気や何気ない一言の中にひっそり刻まれていきます。
世界各地の「祖父母の戦争」:ジャックとマリナの家族史
Yuanyuanさんの家族だけではありません。ジャックの祖父は、自らの国のために爆撃機に乗って戦地へ向かったといいます。また、マリナの高祖母は、レニングラードでの流血の中を生き延びました。それぞれまったく異なる場所の物語ですが、家族の中で語り継がれているのは、同じ時代の戦争の別々の側面です。
誰の家族の記憶も、戦争をひとつの物語に単純化することはできません。そこには、恐怖、誇り、生き延びるための必死の選択など、矛盾しながら共存する感情が折り重なっています。
「生き延びる」と「癒やす」:若い世代の選択という応答
Yuanyuanさんは、祖父からこんな話を聞いたといいます。戦争中、祖父は木の葉を食べて命をつないだ――。その記憶を受け継いだ孫の世代であるYuanyuanさんは、今、薬草を用いて人を癒やす道を選びました。祖父の「葉を食べて生き延びた」経験に対し、「自分は薬草で人を癒やす」という選択を重ね合わせているのです。そこには、過去の苦しみを別のかたちで未来へと変換しようとする意志が見えます。
ジャックもマリナも、それぞれの家族史を抱えながら、自分なりの生き方を選んでいます。若い世代の選択は、どこかで祖父母たちの行動や経験の影響を受けています。目に見えない「刻印」のように、歴史は私たちの日常の中に潜んでいます。
歴史への向き合い方は一人ひとり違う
- 家族の記憶を語り継ぐことを選ぶ人
- 医療やケアの仕事を通じて「癒やし」に関わる人
- 戦争を二度と繰り返さないため、学びや対話に力を注ぐ人
いずれの選択も、過去を忘れず、しかし憎しみだけにとらわれないための静かな応答だと言えます。
2025年の私たちにとっての「続いていく癒やし」
2025年の今、世界のニュースでは紛争や分断の出来事が絶えず報じられています。そのたびに、遠い昔の話と思っていた戦争の記憶が、実は私たちの現在と地続きであることを思い出させられます。Yuanyuanさんたちの物語は、歴史を「他人事」ではなく、自分の生き方と結びついたものとして捉え直すきっかけになります。
国際ニュースを日本語で追いかける私たちにとっても、問いは同じです。家族にどんな戦争体験や記憶があるのか。自分の価値観や選択は、どんな物語の延長線上にあるのか。気づかないうちに受け継いだものを見つめ直すことは、未来への責任を自覚することでもあります。
日常の会話から始まる小さな一歩
壮大な歴史の話は、つい専門家や政治家の仕事だと考えがちです。しかし、Yuanyuanさんのような一人ひとりの選択や、家族どうしの静かな会話の積み重ねこそが、社会全体の「癒やし」を支えています。
- 家族の中で、これまで聞いたことのない戦争や困難の記憶を聞いてみる
- SNSで、他の地域や世代の人たちの経験に耳を傾ける
- ニュースで見た出来事をきっかけに、「自分だったらどうするか」を話し合ってみる
そうした小さな対話が、過去の痛みを否定することなく、次の世代へと受け渡す物語を少しずつ書き換えていきます。
祖父母たちが生き延びた時代から、現在を生きる私たちへ、そしてこれから生まれてくる世代へ。書き続けられる物語の章が、より穏やかで、互いを思いやる未来へとつながっていくことを願いたいと思います。
Reference(s):
cgtn.com








