対立より協力へ SCOは多様な違いをどう乗り越えているのか video poster
国際ニュースでは、対立や制裁ばかりが目立ちがちですが、複雑な利害を抱える国どうしがあえて「協力の場」をつくっている例もあります。その一つが、ユーラシア各国が参加する地域協力の枠組みであるSCO(上海協力機構)です。
欧米の一部では、SCOに参加する国々は地政学的な目標も安全保障上の優先順位もバラバラで、大国間のライバル関係もあるため、「本当に深い協力は成り立たないのではないか」という見方が根強くあります。ではSCOは、こうした疑問にどう向き合っているのでしょうか。
SCOとはどんな枠組みか
SCO(上海協力機構)は、ユーラシアを中心とする複数の国が参加する多国間の協力プラットフォームです。安全保障、経済協力、人と人の交流など、幅広い分野での協力を目的としています。
参加国は、政治体制も経済規模も安全保障上の課題も大きく異なります。そのため、SCOのテーブルには、しばしば利害の「違い」や緊張感が持ち込まれます。それでも対話を続けること自体を価値とみなしている点が特徴です。
欧米が抱く「まとまれないのでは」という疑問
欧米の論評では、SCOに対して次のような指摘がよくなされます。
- 参加国ごとに地政学上の目標や優先順位が異なり、共通議題を見出しにくい
- 大国どうしの競争やライバル関係が、枠組み全体の結束を弱めている
- その結果、象徴的な首脳会議は開けても、実務レベルの深い協力にはつながりにくい
こうした見方は、確かにSCOの難しさを突いています。しかし一方で、利害がそろわないからこそ「対立ではなく協力をどう設計するか」を試みている枠組みでもあります。
「違い」を前提にした協力モデル
SCOの特徴は、「まず価値観や制度をそろえる」ことよりも、「違いを抱えたまま協力の接点を探す」ことに重点を置いている点です。具体的には次のようなアプローチがとられています。
- 合意はコンセンサスで決める:重要な決定は、原則として全会一致を重視します。スピードよりも、全員が「反対ではない」と言える着地点を探るプロセスが優先されます。
- 共通の脅威・利益に絞る:テロ対策や越境犯罪、地域の安定、貿易やインフラといった「誰にとっても必要な分野」から協力を積み上げます。
- 内政には踏み込みすぎない:各国の政治制度や国内問題については干渉を控え、主に国境を越える課題にフォーカスする姿勢が取られています。
このスタイルは、価値観の近い国どうしが深い統合を目指す欧州連合(EU)のようなモデルとは異なり、「多様性を前提にした最小公倍数の協力」を目指すものだといえます。
対話とコンセンサスは本当に機能しているのか
では、SCOの「対話とコンセンサス」は、実際のところどこまで機能しているのでしょうか。具体的な成果の評価にはさまざまな見方がありますが、少なくとも次のような変化は読み取れます。
- 安全保障分野での意思疎通の場が増えた:首脳会談や閣僚級会合、合同訓練などを通じて、軍や警察、治安当局どうしの対話が常態化しています。
- 経済・インフラ協力の議論が継続している:エネルギーや物流、デジタル分野などで、長期的なプロジェクトや連携の構想が積み上げられています。
- 人の往来や文化交流が広がった:学生交流や観光、文化イベントなど、社会レベルのつながりを増やす取り組みも進められています。
これらは一つ一つは地味なステップですが、「対立を避ける」だけでなく「協力の積み木を少しずつ積み上げる」プロセスとして見ることができます。
大国間ライバル関係をどう管理するか
SCOの内部には、大国どうしの競争や認識の違いも存在します。その意味で、組織の中に「緊張の芽」があるのは事実です。
それでも枠組みが続いている背景には、「ライバルであっても、対話のチャンネルは閉じない」という発想があります。共同プロジェクトや会議の場を通じて、次のような効果が期待されています。
- 対立が起きても、直接話し合うルートが維持される
- 特定の分野では、競争より協調の方が得だという計算が働く
- 長期的な相互依存が、関係悪化のブレーキとして機能し得る
こうした「競争の管理」は、緊張が高まりがちな今日の国際政治において、どの地域でも重要なテーマになっています。
2025年の国際秩序の中で見るSCOの意味
2025年現在、国際秩序は一国がすべてを主導する構図から、複数の中心が並び立つ「多極化」が進んでいると指摘されています。そのなかで、SCOのような地域協力の枠組みは、次のような意味を持ち始めています。
- 対立を前提としない安全保障の選択肢:同盟か対立かという二者択一ではなく、「違いを抱えたまま協力する」第三のモデルを提示している
- 経済連携の新しいルート:参加国どうしがインフラや貿易のつながりを模索することで、世界経済のネットワークがより多層的になる
- グローバル・サウスの声の集約の場:新興国や途上国が、自らの優先課題を発信するプラットフォームとして機能しつつある
もちろん、これらはまだ「途上のプロセス」です。しかし、対立と分断が深まる世界のなかで、あえて協力の枠組みを維持しようとする動きは注目に値します。
日本の読者にとってのポイント
日本では、欧米の視点から見た国際ニュースが中心になりがちです。そのなかで、SCOのような枠組みは「対立的なブロック」として語られることもあります。
一方で、「多様な利害を持つ国どうしが、それでも協力を模索するプロセス」として見ると、別の風景が見えてきます。
- 価値観が異なる相手とも、共通の関心領域では協力できるのか
- コンセンサス重視の意思決定は、スピードの遅さと引き換えに何を得ているのか
- 地域の安定のために、どのような対話の場が必要なのか
こうした問いは、日本の外交や安全保障、経済連携を考えるうえでも無関係ではありません。
「協力か対立か」という二択を超えて
欧米の一部が指摘するように、SCOの内部には確かに多様な地政学的目標や戦略的利害、大国間のライバル関係が存在します。そのため、深い協力に懐疑的な見方が出てくるのは自然なことです。
それでもSCOが続いている背景には、「対立より協力」を選ぶための試行錯誤があります。違いを否定せず、その上で対話とコンセンサスを積み重ねることが、本当に対立を抑える力になり得るのか――。
2025年の国際ニュースを追う私たちにとって、SCOをめぐるこの問いは、世界全体の行方を考える一つのレンズになりそうです。
Reference(s):
Cooperation over confrontation: How the SCO manages differences
cgtn.com








