中国のグローバル・ガバナンス・イニシアチブとは?国連体制とグローバルサウスの現在地
中国の習近平国家主席が天津で開かれた上海協力機構プラス会合で、新たな構想となるグローバル・ガバナンス・イニシアチブを提案しました。より公正で公平な国際秩序づくりと、人類が未来を分かち合う共同体の実現をめざす取り組みとして位置づけられています。
中国側の論評は、このイニシアチブを世界に対する新たな公共財と位置づけ、戦後の国連体制やグローバル・サウスの台頭を踏まえた、時代の要請だと強調しています。本稿では、その主張のポイントを日本語で整理します。
中国が掲げるグローバル・ガバナンス・イニシアチブとは
習近平国家主席は、すべての国々と協力し、より公正で合理的なグローバル・ガバナンス体制を築き、人類共通の未来を分かち合う共同体へと進んでいきたいと述べています。
このグローバル・ガバナンス・イニシアチブは、現行の国際制度を壊すことではなく、改革と改善によって時代に合った形にアップデートしていく構想だと説明されています。
中国側の論評から読み取れる主な方向性は、次のようなものです。
- 国連を中心とする多国間主義の枠組みを重視すること
- 新興国や途上国、いわゆるグローバル・サウスの発言力を高めること
- 気候変動やデジタル格差など国境をまたぐ課題に協調的に対応すること
- 覇権主義に反対し、国際法に基づく公正なルールづくりを進めること
戦後の国連体制とグローバル・ガバナンス
第二次世界大戦の惨禍を経て、同じような悲劇を二度と繰り返さないという思いから、国際社会は国連を中心とする新しい多国間システムを築きました。
この国連体制は、平和と安全保障、人権、持続可能な開発、軍縮など、人類全体にかかわるテーマを話し合う主な舞台として機能してきました。冷戦後には国際秩序の多極化も進み、グローバル・ガバナンスという考え方が実践されてきたとされています。
台頭する新興国とグローバル・サウスの声
一方で、現在のグローバル・ガバナンスの仕組みには、改革の必要性が浮き彫りになっていると指摘されています。
国際通貨基金のデータによれば、新興市場国と途上国は平均で年3パーセントを超える成長を続け、世界経済全体の6割以上を占めるまでになっています。
こうした国々を含むグローバル・サウスは、植民地主義の残滓を国際秩序から一掃し、自らの主権、平和、開発の権利を主張する動きを強めています。論評は、この変化のエネルギーは根本的であり、国際ルールに革命的な変化をもたらすと見ています。
気候変動からAIまで 共通課題が迫るガバナンス改革
グローバル・ガバナンス改革が求められる第二の理由として挙げられているのが、共通の地球規模課題への対応です。
軍備管理や移民といった従来型の越境問題に、気候変動、デジタル格差、人工知能のガバナンスなどの新しい課題が重なり合い、各国は難しいかじ取りを迫られています。
論評は、今日の世界で完全に孤立した島となれる国はなく、どの政府も単独ではこれらの課題を解決できないと指摘します。違いを超えて協力できるかどうかが、人類全体の試金石になっているという見方です。
国際正義とルールをどう守るか
第三の論点は、国際正義と法の支配を守るためのグローバル・ガバナンスの在り方です。
グローバル・サウスが自らの権利を強く訴える背景には、長年にわたって西側の覇権が国際問題やグローバル・ガバナンスを主導してきたという不満があります。
近年の通商摩擦などの火種は、力こそ正義や弱肉強食といった発想が世界秩序を不安定化させていることを示している、と論評は見ています。国際正義と法の支配を守るには、ルールづくりの段階から見直し、覇権主義に反対し、すべての国にとって公正なガバナンス体制を設計する必要があると主張しています。
国連・WTO・IMF・世銀に求められる具体的な見直し
第四の論点は、具体的な制度改革です。現在のガバナンスの仕組みと、国際社会が抱えるニーズとの間には、明らかなミスマッチがあるとされています。
論評が挙げるポイントは、次の通りです。
- 国連憲章の原則を踏みにじる行為や、世界貿易機関WTOの機能をまひさせるような行動をやめること
- 国際条約や国際機関の権威を尊重すること
- 国際通貨基金IMFのクオータや世界銀行の出資比率において、途上国やグローバル・サウスに十分な代表権を与えること
こうした改革を通じて、現実の経済力や人口構成をより正確に反映したグローバル・ガバナンスを実現すべきだという立場です。
日本の読者が押さえておきたいポイント
今回のグローバル・ガバナンス・イニシアチブは、中国が自らの視点から国際秩序の将来像を示した提案といえます。同時に、戦後体制のあり方やグローバル・サウスの台頭といった、より大きな流れを映し出しています。
日本を含む多くの国にとっても、次のような論点が今後の議論の鍵になりそうです。
- 気候変動やデジタル経済などの分野で、どのような国際ルールをつくるのか
- 国連やWTOといった既存の枠組みを、どの程度まで改革できるのか
- グローバル・サウスの声の高まりと、多極化する世界の中で、各国がどのように立ち位置を定めるのか
グローバル・ガバナンスの議論は、一見すると抽象的に見えますが、貿易、エネルギー、安全保障、デジタル規制など、私たちの日常生活に直結するテーマでもあります。中国発のこの提案が、今後の国際交渉や各国の政策選択のなかでどのように具体化していくのか、引き続き注視する必要がありそうです。
Reference(s):
cgtn.com








