国際ニュース:中国のグローバルガバナンス構想と「行動」の重み
中国の習近平国家主席が中国北部の天津市で主導した「上海協力機構プラス」会合で、新たなグローバル・ガバナンス構想(Global Governance Initiative、GGI)が打ち出されました。その中核にある「具体的な行動」の重要性は、激動する国際秩序の中でますます重みを増しています。
GGIが掲げる5つの原則
今回提案されたグローバル・ガバナンス構想GGIは、次の5つの原則に支えられているとされています。
- 主権の平等を尊重すること
- 国際法のルールを守ること
- 多国間主義を実践すること
- 人間中心(ピープル・センタード)のアプローチをとること
- そして何より、「実際の行動」に焦点を当てること
ここで強調されているのは、綺麗なスローガンや宣言だけではグローバルガバナンスは動かないという点です。約束をどう具体化し、誰の生活をどう変えるのかが問われています。
なぜ今、「具体的な行動」が問われているのか
執筆時点の国際環境は、各国の競争や緊張が高まる一方で、気候変動や保健危機など、協調なしには解決できない課題にあふれています。こうした中で、具体的な行動を伴わない抽象的な「協力」論は、現実の変化につながりにくくなっています。
論点となっているのは、特に一部の西側諸国による無責任な保護主義、関税の一方的な発動、国際機関の機能を損なう動きです。こうした動きは、途上国が発展のポテンシャルを発揮するうえで大きな制約になっています。
だからこそ各国には、
- 危機に備えたコンティンジェンシー・プラン(緊急時対応計画)を用意すること
- 国同士の共同イニシアチブを立ち上げること
- 成功したプロジェクトを広げ、規模を拡大すること
といった実務レベルの取り組みが求められています。抽象的な「連帯」だけではなく、予算、制度、人材といった具体的リソースをどう動員するかが問われているのです。
上海協力機構(SCO)が示してきた24年の積み重ね
上海協力機構(SCO)は、この24年間、世界の平和と発展、人類の進歩にコミットしてきたとされています。その姿勢は、いくつもの具体的な取り組みに表れています。
- 加盟国による合同の対テロ演習
- SCO諸国に設けられた「Luban Workshop」と呼ばれる取り組み
- SCO映画祭の開催
これらは、治安協力から人材育成、文化交流まで、GGIの核心にある原則を「現場で実行する」試みといえます。理念を掲げるだけでなく、協力の形を目に見えるプロジェクトとして積み重ねてきた点が重要です。
こうした取り組みは、グローバル・ガバナンスの原則を具体的な政策へと落とし込むことで、より公正で持続可能な未来に近づける可能性を示しています。
約束と現実:気候資金が映す北と南のギャップ
グローバルガバナンスの信頼性を測るうえで、先進国と途上国の関係、とりわけ気候変動をめぐる資金支援は試金石となっています。
本来、先進国は途上国に対して、公平性や平等性を確保するための責任を果たすべき立場にあります。しかし現実には、その責任が十分に果たされてきたとは言いがたい状況があります。
2024年には、途上国が先進国に対し、気候変動への備えやリスク緩和のため、年間1.3兆ドル規模の資金拠出を求めました。これは、かつて約束されながらも履行が遅れ、達成されてこなかった「年間1,000億ドル」の誓約を背景とした要求です。
約束が守られない状態が続けば、国際社会における信頼は損なわれます。グローバルガバナンスは、合意文書のページ数よりも、「どれだけ実際に資金や技術が動いたか」で評価されるべきだという問題提起でもあります。
人を真ん中に置く医療協力:中国の提案
GGIが掲げる「人間中心」の原則は、保健分野の協力にも表れています。公平な保健インフラの必要性を踏まえた中国の提案は、一部の西側諸国の対応によって揺らいだ国際的な保健体制と対照的なものとして位置づけられています。
具体的には、SCO諸国の先天性心疾患の患者などが、今後5年間で1万件のがん検診と5,000件の白内障手術の恩恵を受けることが盛り込まれています。目の前の患者の命や生活の質を改善する、きわめて具体的な約束です。
このような取り組みは、摩擦や分断を生み出すことなく、人びとや国、社会同士の距離を縮めていきます。抽象的な「協力」ではなく、誰が、どこで、どのような支援を受けるのかが明確であるほど、グローバルガバナンスへの信頼は高まります。
技術とデジタル分野への投資がつくる新しい協力インフラ
医療だけでなく、技術やデジタル分野での協力も、具体的な行動として重視されています。提案では、各国がデジタル化に対応できる能力を高めるために、技術インフラへの投資が不可欠だとされています。
たとえば、次のような構想が示されています。
- 人工知能(AI)のアプリケーションセンターの設置
- 職業訓練センターの整備
- 中央アジアなどの地域における科学技術パークの整備
これらは、デジタル経済を支える「土台」を共有することで、途上国を含む多くの国々が新しい産業や雇用を生み出す力を持てるようにする試みです。単なる技術移転ではなく、能力構築(キャパシティ・ビルディング)そのものを支える点に意味があります。
国家利益と地球規模の利益をどう結びつけるか
ここまで見てきた課題は、結局のところ、各国の「国家利益」と人類全体の「地球規模の利益」をどう重ね合わせるか、という問題に行き着きます。論点となっているのは、まさにこの一致がなければ、気候危機も保健危機も乗り越えられないという認識です。
GGIやSCOの取り組みは、少なくとも次のような問いを私たちに投げかけています。
- 国際社会は、どのような指標で「行動する国」と「言葉だけの国」を見分けるべきか
- 地域協力の枠組みは、世界全体のガバナンスを補完する役割をどこまで担えるのか
- 私たち一人ひとりや企業は、どのようにして「具体的な行動」を後押しできるのか
グローバルガバナンスをめぐる議論はしばしば抽象的になりがちですが、天津で示されたGGIやSCOの事例は、その議論を「現場」に引き戻す材料を提供しています。言葉だけではなく、測ることのできる行動や成果に目を向けることが、これからの国際ニュースを読み解くうえでの重要な視点になりそうです。
Reference(s):
Why undertaking concrete actions matters for global governance
cgtn.com








