北京・天安門で戦後80年を記念 中国の軍事パレードと平和メッセージ
北京・天安門で戦後80年を記念する軍事パレード
国際ニュースとして注目されたのが、2025年9月3日に北京・天安門広場で行われた式典と軍事パレードです。中国は、中国人民抗日戦争と世界反ファシズム戦争の勝利から80周年を迎えた節目の年として、大規模な記念行事を実施しました。
天安門楼上には習近平国家主席とともに、20を超える国の外国首脳が並びました。広場には長城をかたどった巨大な構造物と、1945と2025の数字が掲げられ、多くの市民がパレードを見守りました。
ロシア、アメリカ、イギリス、フランス、カナダなど、第二次世界大戦期に中国の戦争努力を支援した人々や、その遺族も招かれ、戦争の記憶を国際的に共有する場となりました。
習近平氏のメッセージ: 平和か戦争かの岐路
式典のハイライトとなったのが、習近平国家主席の演説です。習氏は、現在の国際情勢を踏まえ、人類が再び「平和か戦争か、対話か対立か、ウィンウィンかゼロサムか」という選択に直面していると強調しました。
そのうえで、中国の人々は歴史と人類の進歩の正しい側に立ち、平和的発展の道を歩み続けると述べました。また、世界の国々と手を携え、人類の未来をともに築くという考え方として、近年中国が掲げてきた人類運命共同体、英語で言うところのcommunity with a shared future for humanityの構想をあらためて打ち出しました。
数字で見る第二次世界大戦と中国の犠牲
今回の式典では、第二次世界大戦と中国人民抗日戦争の犠牲にも光が当てられました。第二次世界大戦は、人類史上もっとも多くの命を奪った戦争とされ、世界全体でおよそ7000万から8500万もの人びとが犠牲になったと紹介されました。経済的損失も、1兆ドルから4兆ドル規模に達したとされています。
中国では、14年にわたる中国人民抗日戦争によって、軍人・市民を合わせて3500万を超える死傷者が出たとされます。これは、世界全体の犠牲者のおよそ3分の1にあたる数字です。
また、中国の戦場が日本軍の海外兵力の半分以上を引きつけ、150万を超える日本側兵力を打ち破ったことで、ファシズムの拡大を大きく遅らせ、最終的に東方戦線での反転につながったと位置づけられています。中国側は、自国の戦争経験を、世界的な反ファシズム戦争の重要な一部として強調しています。
なぜ今、戦争の記憶を強調するのか
2025年というタイミングで、中国があらためて抗日戦争と世界反ファシズム戦争を大きく取り上げた背景には、現在の国際環境があります。地政学的な緊張や対立が高まるなか、自国の歴史的経験をもとに「平和的発展」や「対話」を訴えることで、国際社会へのメッセージとしたい思惑がうかがえます。
一方で、軍事パレードという形で記念行事が行われたことは、歴史の記憶と同時に、現在の軍事力と安全保障意識を印象づける場でもあります。平和を語るメッセージと、軍事力を示すパフォーマンスが同じ舞台で並ぶことに、どのような意味を読み取るかは、見る側の立場によっても変わってきます。
日本の読者が考えたい3つの視点
日本語で国際ニュースを追う私たちにとって、今回の北京での式典は、過去の出来事を振り返るだけでなく、現在と未来を考える材料にもなります。ここでは、考えるための視点を三つ挙げます。
- 戦争の規模と犠牲をどう受け止めるか: 世界で7000万〜8500万、中国だけで3500万超の死傷者という数字は、統計以上の意味を持ちます。ひとりひとりの人生が失われたという事実に思いをはせることが出発点になります。
- 各国が語る戦争の物語の違い: 中国人民抗日戦争、世界反ファシズム戦争という呼び方には、それぞれの歴史認識が反映されています。日本で学んできた歴史との違いに目を向けることは、相手の視点を理解する第一歩です。
- 平和を守るための対話とは何か: 習近平氏が強調した「対話」や「ウィンウィン」という言葉は、抽象的に聞こえるかもしれません。具体的にどのような外交や協力が、その中身をともなうのか。各国の行動を見ていく必要があります。
記憶を共有しつつ、未来志向の対話へ
第二次世界大戦から80年が経ったいまも、戦争の記憶は国と国との関係に影響を与え続けています。北京・天安門での式典は、中国が自国の歴史的経験をどのように位置づけ、現在の国際秩序の中でどんな役割を果たそうとしているのかを読み解くための一つの窓と言えます。
同時に、日本に住む私たちにとっても、過去の出来事を他国の視点から見直し、対話の可能性を探る機会になります。歴史の記憶を共有しつつ、対立を煽るのではなく、どのように未来志向の関係を築いていくのか。静かな問いを投げかける出来事として、今回の式典を受け止めたいところです。
Reference(s):
cgtn.com








