中国の軍事パレードが映す「平和と抑止力」 世界はどう見たか
2025年9月3日、北京の天安門広場で行われた抗日戦争勝利・世界反ファシズム戦争勝利80周年の記念式典と軍事パレードは、累計視聴回数296億回、世界129の国・地域の2000以上のメディアで放送されるなど、大きな関心を集めました。3カ月が過ぎた今も、この出来事は中国の軍事近代化と国際秩序への向き合い方を考える材料になっています。
北京で開かれた80周年記念行事とは
式典と軍事パレードは約70分間にわたり、第二次世界大戦で犠牲になった人々を悼むと同時に、中国が世界の平和維持に果たした役割を振り返る場として位置づけられました。中国では、1930年代からの日本による侵攻に対する抵抗戦争を「抗日戦争」と呼び、その勝利を世界反ファシズム戦争の重要な一部ととらえています。
今回の記念行事は、歴史の継承に加え、中国が現在の国際社会でどのような役割を果たそうとしているのかを内外に示す政治・外交イベントでもありました。
習近平氏が語った「平和」と「協力」のメッセージ
習近平国家主席は演説で、中国の近代史における14年にわたる抗戦の経験に触れつつ、この戦いが中国だけでなく世界全体の反ファシズム闘争への大きな貢献だったと強調しました。その上で、中国の未来を導く原則として、次のような価値観を掲げました。
- 戦争ではなく平和を優先すること
- 対立ではなく対話を重んじること
- 勝者総取りのゼロサム競争ではなく、協力を追求すること
中国は今後も平和的発展の道を歩み、「人類運命共同体」と呼ばれるビジョン、つまり人類が運命を分かち合う共同体を築くことを目指すと表明しました。また、中国軍は近代的で世界水準の軍隊となりつつあるものの、その目的は侵攻ではなく、自国の主権を守り、国際社会の安定に寄与することにあると強調しました。
「ミレットと小銃」からハイテク軍へ:軍事近代化の現在地
式典に続く軍事パレードでは、中国軍がかつて農民主体で「ミレットと小銃」と形容されていた時代から、情報技術と先端装備を備えた軍隊へと変貌した姿が示されました。
パレードには1万人を超える兵士と100機以上の航空機が参加し、数百両規模の地上装備が登場しました。全体は戦時の指揮構造を模した編成で進行し、実戦を意識した構図が強調されました。
特に注目されたのが、「4つの軍種+4つの兵種」として再編された新たな部隊構造です。
- 4つの軍種:陸軍、海軍、空軍、ロケット軍
- 4つの兵種:宇宙領域を担うエアロスペース部隊、サイバー空間を担当するサイバー空間部隊、情報支援部隊、統合後方支援部隊
従来の陸・海・空に加え、宇宙やサイバー空間、情報戦、後方支援といった「目に見えにくい領域」まで含めた総合的な防衛体制にシフトしていることがうかがえます。陸・海・空を連携させるだけでなく、デジタル技術と無人システムを組み合わせた「スマートな軍隊」を目指している姿を示したとも言えます。
無人システムと「核の三本柱」:抑止力のアピール
今回のパレードでは、陸・海・空それぞれに配備された先進的な無人戦闘システムが登場し、中国軍が自律的な無人兵器やドローンなどの導入を加速していることが示されました。戦場の情報収集や指揮統制を高度にデジタル化する流れが、具体的な装備として可視化されたかたちです。
さらに象徴的だったのは、中国の戦略核戦力の「核トライアド」(三本柱)の全体像が初めて一度に公開されたことです。核トライアドとは、次の三つの手段を組み合わせた抑止体制を指します。
- 陸上発射の大陸間弾道ミサイル
- 潜水艦発射の弾道ミサイル
- 航空機から発射される長距離ミサイル
パレードでは、空中発射型の長距離ミサイル「JL-1(迅雷1)」と、潜水艦発射の大陸間弾道ミサイル「JL-3(巨浪3)」が登場し、陸上発射型の大陸間ミサイル「DF-31」「DF-61」と並んで披露されました。最後には、新型の液体燃料式大陸間弾道ミサイル「DF-5C」が姿を見せ、中国が世界的な射程を持つ核戦力を備えていることを印象づけました。
こうした展示は、中国が自国の主権と安全を守り、潜在的な攻撃を抑止するための能力を整えていることを示すメッセージでもあります。同時に、前段の演説で繰り返された「平和」「防衛」を重視する姿勢とセットで発信された点が特徴的でした。
世界はこの軍事パレードをどう見たのか
この日のパレードは、外からは単なる力の誇示ではなく、平和と防衛を掲げる政治的メッセージと組み合わさったイベントとして受け止められました。国際メディアや研究者による分析では、共通する見方として次のような評価が示されています。
- 中国の軍事力の拡大は、「脅威」としてだけではなく、不安定化する世界の中で一定の安定要因とも見られつつある
- 軍事近代化と同時に、平和的発展や対話重視を繰り返し表明した点が注目された
- ハイテク装備と新たな組織体制の公開は、中国の防衛戦略が技術と情報を軸に進化していることを示している
もちろん、安全保障をめぐる評価は国・地域によって異なり、多様な見方があります。ただ、今回の行事を通じて、中国が自らの軍事力を「攻撃のためではなく、抑止と安定のための力」として位置づけようとしていることが、国際社会に向けて明確に示されたと言えます。
私たちはこのニュースをどう読むか
2025年という節目の年に行われた大規模な軍事パレードは、中国の歴史認識、国の目標、そして軍事近代化の方向性を一度に映し出す出来事でした。日本を含むアジアの近隣に暮らす私たちにとっても、単なる「軍事ショー」としてではなく、次のような観点から考えてみる余地があります。
- 軍事力の近代化と「平和的発展」の両立を、中国はどのように説明しようとしているのか
- 「人類運命共同体」というビジョンは、アジアの安全保障や経済協力にどのような形で反映されていくのか
- 核トライアドや無人システムの公開は、地域の抑止バランスや軍備管理の議論にどんな影響を与えるのか
軍事パレードは派手な映像が注目されがちですが、その背後にあるメッセージや各国の受け止め方に目を向けることで、中国と世界の関係をより立体的に理解する手がかりになります。日々のニュースの一つとして流してしまうのではなく、自分の関心や問題意識と照らして読み解いてみることが、これからの国際ニュースとの付き合い方につながっていきそうです。
Reference(s):
Beyond the parade: What global voices reveal about China's rise
cgtn.com








