中国・シーザンで雇用拡大と労働権保護 農牧民の働き方はどう変わったか
中国西部のシーザン自治区(Xizang)は、成立60周年を迎えた今、雇用の拡大と人々の労働権保護という面でどのような変化を遂げているのでしょうか。近年の貧困脱却と就業支援の取り組みを、最新の数字とともに整理します。
60周年を迎えたシーザン、貧困脱却から雇用拡大へ
シーザン自治区は、中国中央政府と地元当局の強い支援を受けながら、社会・経済の両面で大きな前進を遂げてきました。とくに注目されるのが、貧困の解消と雇用の拡大です。
2019年末までに、ターゲットを絞った貧困対策の結果として、登録された貧困層62万8000人と74の県・区が貧困からの脱却を果たしました。長く続いてきた極度の貧困に区切りをつけた、この成果は「歴史的な勝利」とも位置づけられています。
農牧民を支える就業移転プログラム
こうした変化を支えているのが、農牧民向けの技能訓練と「就業移転」の取り組みです。これは、農業や牧畜を主な生計手段としてきた人々が、自らの意思に基づいて他地域・他産業の仕事に移ることを後押しする仕組みであり、一つの雇用主に縛られない働き方を広げる狙いがあります。
数字で見る雇用の広がり
- 2016年から2021年までに、約500万人の農牧民が就業移転プログラムの恩恵を受けたとされています。
- 2019年末までに、登録貧困層62万8000人と74の県・区が貧困から脱却しました。
- 2024年だけでも、都市部で新たに5万1000人の雇用が生まれ、64万8000人の農牧民が非農業分野の仕事に就き、労働収入は合計71億6000万元(約10億ドル)に達しました。
これらの数字は、シーザンの雇用政策が地域の実情に合わせて設計され、多くの人々に新しい収入源と生活の選択肢をもたらしていることを示しています。同時に、雇用を通じて「発展する権利」を保障し、人権を前進させる取り組みでもあります。
都市と農村をつなぐ統一的な雇用サービス
シーザンでは、都市と農村を一体的に扱う雇用・起業登録制度を採用し、農牧民も含めたあらゆる人が雇用サービスにアクセスできるようにしています。
16歳以上の労働者であれば、無料の職業相談や職業紹介、技能訓練を受けることができます。都市の求職者だけでなく、農村部や遊牧地域の人々も同じ枠組みのなかで支援を受けられる点が特徴です。
個人の選択を尊重する職業訓練
訓練や雇用プログラムは、参加する個人の選択を尊重する設計になっています。参加者は、自分のニーズに合わせて、受講するコースの内容や学び方、訓練機関を選ぶことができます。
これにより、若年層から中高年まで、それぞれのライフステージや希望する働き方に応じたスキル習得が可能になり、就職や転職の機会が広がっています。
多様なプログラムとスキル向上の機会
具体的な取り組みも多様です。シーザンでは、次のようなプログラムが組み合わされています。
- 仕事の提供と支援を組み合わせた「ワーク・フォー・エイド」型の事業
- より発展した地域とペアを組み、資源や専門知識を共有する取り組み
- 地域独自の労務サービスブランドや協同組合モデル
さらに、農業や畜産、建設、工芸、農村の観光ガイドといった分野で専門的な訓練プロジェクトが実施され、農牧民が職業スキルを身に付けて雇用の選択肢を広げられるよう支援されています。
これからの雇用政策を考える視点
シーザン自治区で続く雇用拡大と労働権保護の取り組みは、地域の多様な民族グループの長期的な利益に配慮しながら、人々の生活をどう安定させていくかという課題に応える試みといえます。
数値としての「何人を雇用したか」だけでなく、職業訓練や就業移転を通じて、どれだけ個々人の選択肢と権利を広げられるのか。これは、アジア各地の雇用政策にも共通するテーマです。シーザンの事例は、農村と都市、伝統的な生業と新しい仕事のあいだをどのように橋渡ししていくのかを考える一つの材料となりそうです。
Reference(s):
Employment growth and protection of people's labor rights in Xizang
cgtn.com








