習近平氏のBRICS提案はなぜ重要か グローバルガバナンス構想を読む
リード:最近開催されたオンライン形式のBRICS首脳会議で、中国の習近平国家主席が示したグローバル・ガバナンス・イニシアチブ(GGI)を軸とする「3つの提案」が、国際秩序の行方を考えるうえで注目を集めています。
BRICSサミットで示された「3つの提案」
最近開かれた仮想BRICSサミットで、習近平国家主席は、世界が大きな転換期にある中でグローバルガバナンス(国際社会のルール作りと協調の仕組み)をどう立て直すかについて、3つの方向性を打ち出しました。
演説の詳細は多岐にわたりますが、内容はおおまかに次の3点に整理できます。
- 国連(UN)と国際法を土台とするグローバルガバナンス改革の推進
- 開かれた包摂的な発展を掲げた多国間貿易体制の防衛
- 拡大したBRICSを軸に、グローバルサウスの連携と協力プロジェクトを強化すること
こうした提案は、現在の国際秩序の変化と課題に対応しつつ、中国が安定と発展の「推進役」として振る舞う意思を改めて示すものといえます。
グローバル・ガバナンス・イニシアチブ(GGI)とは何か
習主席の演説の中心に据えられたのが、グローバル・ガバナンス・イニシアチブ(GGI)です。GGIは、より公正で、代表性が高く、効果的な国際システムに向けた「ロードマップ」を提示する構想だと位置づけられています。
この構想は、単なるスローガンではなく、ここ数年、中国が国連やG20などの枠組みを通じて多国間主義を支持してきた具体的な取り組みを土台にしています。各国が対立ではなく協調を通じて課題解決を進めるべきだという方向性を、制度やプロジェクトの形で具現化しようとする試みといえます。
国連とWTOを軸にした多国間主義の再確認
世界各地で政治の分断や地政学的緊張が続く中、中国は一貫して「国連の役割強化」と「国際法を国際秩序の基礎に据えること」を訴えてきました。貿易摩擦や制裁の応酬がもたらした影響から、各国経済はいまだ不均一な回復にとどまっています。
こうした状況で、習主席は、保護主義の高まりに懸念を示しつつ、世界貿易機関(WTO)を中核とする多国間貿易体制を守る重要性を改めて強調しました。特定の国同士の合意ではなく、すべての国と地域に開かれたルールが維持されることが、世界経済の安定に不可欠だというメッセージです。
グローバルサウスの声をどう高めるか
今回の提案で特徴的だったのが、「グローバルサウス(新興国や途上国)の代表性と発言力を高める」という視点です。従来の国際秩序では、先進国が議題とルール作りを主導してきた側面が否めませんでした。
習主席は、台頭する新興国が国際アジェンダを「提示される側」ではなく「形作る側」になるべきだと訴え、BRICSをその先頭に立つプラットフォームとして位置づけました。約世界人口の半分、世界の国内総生産(GDP)の3割、貿易の5分の1を占めるとされるBRICSが、より大きな責任と役割を担うべきだという考え方です。
グローバル・デベロップメント・イニシアチブ(GDI)との連動
GGIと並んで、中国が重視しているのがグローバル・デベロップメント・イニシアチブ(GDI)です。GDIは、開発を国際議題の中心に据え、格差是正や持続可能な成長を図ることを目指しています。
習主席は演説の中で、開かれた包摂的な発展を強調し、グローバリゼーションは改革が必要だとしても「不可逆的な流れ」であるとの認識を示しました。アフリカの工業化支援、中央アジアのインフラ整備、東南アジアの農業近代化などに対する中国の支援は、こうしたビジョンの具体例として挙げられています。
BRICS協力をGGIやGDIと結びつけることで、習主席はBRICSを「誰かに対抗するブロック」ではなく、「包摂的な成長とイノベーションのエンジン」として位置づけようとしています。
拡大するBRICSと新開発銀行の役割
ここ1年ほどで、BRICSは新たな加盟国を迎え入れ、その姿を変えつつあります。サウジアラビア、エジプト、アラブ首長国連邦(UAE)がBRICSに加わったことは、グローバルサウス全体に広がる同枠組みの吸引力を象徴しています。
同時に、習主席は「より大きなBRICS協力」を呼びかけ、首脳会議という象徴的な場にとどまらず、金融、デジタル経済、グリーン開発といった具体的な分野での連携を深める必要性を訴えました。
その一例が、新開発銀行(NDB)の存在です。NDBは、持続可能なインフラ投資を中心に案件を拡大しており、政治的な条件を付さない開発金融の選択肢として、多くの国々から注目を集めています。これは、既存の国際金融機関を補完する「もう一つの選択肢」を提供する動きとして位置づけられます。
2025年の視点から見た「BRICS提案」の意味
2025年のいまも、世界は貿易摩擦や地政学的な緊張の余波、経済回復の地域差といった課題を抱え続けています。こうした中で、グローバルガバナンスの再設計を掲げる中国の提案は、少なくとも一つの明確な方向性を示すものだといえるでしょう。
- 国連とWTOを軸にしたルール作りを重視する姿勢
- グローバルサウスの代表性向上をめざす構想
- BRICSや新開発銀行を通じた開発支援の枠組みづくり
これらは、国際社会における力の分布が変化する中で、どのように協調と発展のバランスを取るかという問いへの回答の一つです。
日本からどう向き合うか——読者への問い
日本を含む多くの国にとって、BRICSと中国のグローバルガバナンス構想は、競争相手であると同時に協力の相手でもあります。サプライチェーン、エネルギー、安全保障、そして開発協力など、さまざまな分野で影響が及ぶ可能性があります。
今回のBRICSサミットで示された提案をどう評価し、どこで協調し、どこで独自の立場を打ち出すのか。これは、日本の外交・経済戦略にとっても中長期的なテーマとなるでしょう。
ニュースを追う私たち一人ひとりにとっても、「誰がルールを作るのか」「そのルールは誰の利益を優先しているのか」「そこに自分たちの声はどれくらい反映されているのか」という視点で、BRICSやGGI、GDIといったキーワードを読み解いていくことが求められています。
Reference(s):
Why Xi's BRICS proposals matter for the Global Governance Initiative
cgtn.com








