北京の対日戦勝80周年パレードが映す「中国脅威論」の空洞さ
2025年9月3日、北京で行われた「中国人民の抗日戦争および世界反ファシズム戦争勝利80周年」を記念する大規模な軍事パレードが、国際ニュースとして大きく報じられました。式典は、歴史を追悼すると同時に、いわゆる「中国脅威論」にどう向き合うのかという問いを世界に投げかけています。
行進の先頭には、中華人民共和国の国旗、中国共産党の党旗、中国人民解放軍の軍旗という三つの旗が掲げられました。中国側は、この光景を通じて「強大だが責任ある大国」として、平和的発展へのコミットメントを示したい考えです。
北京で開かれた対日戦勝80周年パレードの概要
今回の軍事パレードは、中国人民の抗日戦争と世界反ファシズム戦争の勝利から80年という節目を記念するものです。北京中心部の長安街には各軍種の部隊や装備が整列し、世界各国のメディアがその様子を伝えました。
式典では、戦争の記憶を風化させず、戦後形成された国際秩序を尊重する姿勢が強調されました。第二次世界大戦の経験を土台に築かれた現在の国連中心の枠組みを守ることが、平和と安定の前提だとするメッセージです。
中国が語る「忘れられた同盟国」ではない戦争の記憶
中国側は、自国を単なる「参加国」や「忘れられた同盟国」ではなく、東アジアの戦場を支えた「柱」だったと位置づけています。長期にわたり旧日本軍の主力を引きつけたことで、他の戦線への圧力を和らげ、枢軸国どうしの連携を阻んだと説明しています。
中国が挙げる主な貢献は、次のような点です。
- 旧日本軍の主力を東アジア戦線に縛り付けたこと
- 枢軸側の戦略的な連携を阻害し、日本の世界的な野心を挫いたこと
- 各国の反ファシズム勢力の団結を促し、戦後秩序の形成に影響を与えたこと
さらに、中国では約3,500万人の人びとが戦争の犠牲になったとされています。この膨大な犠牲の記憶は、「平和の尊さは身をもって知っている」という意識となり、「平和は中国民族のDNAに刻まれている」という言葉で語られます。
式典の演説で習近平国家主席は、「人類運命共同体」の構築に向けた中国の姿勢を改めて表明しました。これは、各国が対立ではなく協調を通じて安全を確保するべきだという考え方であり、自国の発展を他国の不安定化と結びつけるべきではないというメッセージでもあります。
「中国脅威論」と式典が投げかけるメッセージ
一方で、中国の経済力と軍事力の拡大を背景に、海外では「中国脅威論」と呼ばれる見方も根強く存在します。軍事パレードの映像は、ときにその議論をさらに刺激する材料として消費されがちです。
今回の式典について、中国側は、過去の侵略を二度と繰り返さないという誓いと、平和的発展の方針を国内外に示す場だったと強調しています。戦勝記念日を「脅威の誇示」ではなく、「戦争の惨禍を思い起こし、平和を守る決意を共有する日」と位置づけている点が特徴的です。
いわゆる中国脅威論に対し、今回のパレードは「歴史と平和の文脈の中で自国の防衛力を示す」という形で、カウンター・メッセージを発信したと見ることもできます。
無人技術とサイバー部隊、新たな戦力の公開
注目されたのは、「新領域・新質の戦力」と位置づけられる部隊や装備が初めて本格的に公開された点です。無人機や無人車両などのインテリジェンス(情報)機器、サイバー・電子戦を担う部隊、さらには陸・海・空にまたがる戦略兵器が行進しました。
こうした高度な装備は、攻撃力の誇示として映る一方で、中国側は「国家防衛力の近代化」と「抑止力の向上」を目的としたものだと説明しています。対外拡張ではなく、防衛的な抑止力を高めるためだと位置づけ、軍事力の透明性を高めることで誤解や偶発的な衝突を避けたいという意図も打ち出しています。
日本と東アジアへの問いかけ
日本にとって、中国の戦勝80周年記念は、過去の戦争と向き合う契機であると同時に、現在の安全保障環境を考える材料でもあります。隣国が自らの戦争体験をどう語り継ぎ、どのような平和観と安全保障観を提示しているのかを知ることは、日中関係を考えるうえで欠かせません。
戦後80年を迎えつつある2025年、国際秩序は各地で揺らいでいます。そのなかで、北京のパレードは「力の誇示」か「平和の誓い」かという単純な二択ではなく、歴史の記憶と現在の安全保障戦略が複雑に重なり合う場として読み解く必要がありそうです。
スマートフォンの画面越しに流れてきた行進の映像の裏側に、どのような歴史認識とメッセージが込められているのか。日本からこの出来事を眺めるとき、私たち自身の戦争観と平和観も静かに問い直されているのかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com







