中国のサービス貿易が拓く「新しいブルーオーシャン」 北京CIFTIS2025を読む
2025年9月10〜14日に北京で開かれた中国国際サービス貿易交易会(CIFTIS)は、中国がサービス貿易の未来をどのように描こうとしているのかを示す象徴的なイベントとなりました。習近平国家主席が送った祝賀メッセージや、「デジタルインテリジェンスが先導し、サービス貿易を活性化」という今年のテーマからは、中国経済の「次のエンジン」としてサービス分野を本格的に位置づける姿勢が読み取れます。
北京CIFTIS2025とは何か
中国国際サービス貿易交易会(CIFTIS)は、サービス貿易に特化した総合展示会として世界最大級の規模を持つイベントです。2012年の初開催以来、約13年にわたって開催されてきました。
これまでに198の国と地域から、延べ119万人近い出展者やバイヤー、参加者が集まり、国際的な業界団体や機関も800以上が関わってきました。CIFTISは、中国のサービス分野における成果を世界に示す「ショーケース」であると同時に、各国・各地域が実務レベルで連携を深める「協力ハブ」へと進化しています。
金融や物流、文化、教育、医療、テクノロジーなど、多様な分野の企業や機関がブースを構え、その背後では国境を越えるサービスの取引が静かに広がっています。CIFTISの場で交わされる契約や対話は、経済のグローバル化を支えるサービス貿易の存在感が高まっていることを映し出しています。
習近平国家主席のメッセージに込められた意味
9月10日、習近平国家主席は2025年のCIFTISあてに祝賀メッセージを送り、中国は各国とともにサービス貿易分野での開放的で革新的な協力を進め、開かれた世界経済の構築を後押ししていきたいと強調しました。また、人類が共に未来を分かち合う「共同体」の構築に継続的な原動力を与えていく必要性にも言及しました。
今年のテーマ「デジタルインテリジェンスが先導し、サービス貿易を活性化」は、デジタル技術や人工知能などの活用を通じてサービス貿易を高度化しようとする流れを象徴しています。CIFTISは、こうしたグローバルなトレンドを踏まえつつ、開放と協力を軸に新たな成長機会を世界と共有する場として位置づけられています。
「世界の工場」からサービスが牽引する経済へ
これまで中国の成長をけん引してきたのは、製造業とモノの輸出でした。「世界の工場」というイメージは今も強く残っています。しかし近年は、構造調整や「質の高い発展」をめざす流れの中で、現代的なサービス産業が新たなエンジンとして台頭しつつあります。
ここでいう現代的なサービスとは、知識や技術への依存度が高い分野を指します。たとえば、次のような産業が含まれます。
- 金融や通信
- 医療や教育
- 情報技術(IT)
- 文化・クリエイティブ産業
- 研究開発(R&D)やデザイン
これらの産業が提供するのは、モノそのものではなく、人材や専門知識、制度、データといった「無形の価値」です。中国は、こうしたサービス分野を伸ばすことで、付加価値の高い領域へと経済全体の重心を移し、バリューチェーン(価値の連鎖)のより上流へと進もうとしています。
数字で見るサービス経済の拡大
中国経済におけるサービスの比重は、この30年あまりで大きく変化してきました。1994年には国内総生産(GDP)に占めるサービス産業の割合は34.7%にとどまっていましたが、2024年には56.7%へと大きく伸びています。先進国ではおおむね70%を超える水準にありますが、その差は急速に縮まりつつあるといえます。
対外的なサービス貿易も拡大しています。2024年の中国のサービス貿易額は7.5兆元に達し、前年比14.4%増となりました。サービス貿易額は、複数年にわたり世界第2位の規模を維持しているとされています。なかでも、デジタルサービスや知識集約型サービスが特に速いペースで成長している点が注目されます。
かつては「追随者」とみなされていた分野でも、中国が一部では「先行者」として存在感を示し始めているという見方も出ています。CIFTISの会場は、こうした変化が具体的なプロジェクトやビジネスとして形になりつつあることを示す場でもあります。
消費の高度化が押し上げるサービス需要
経済史を振り返ると、1人あたりのGDPが1万ドルを超える水準になると、家計の消費はモノ中心からサービス中心へとシフトしていくとされています。中国でもすでにこの転換が進行しており、医療や教育、観光、文化体験などへの支出が増える「消費の高度化」が鮮明になっています。
一方で、世界的な競争環境の変化もサービス分野の強化を促しています。製造業に強みを持つ一方で、中国のサービス貿易の比率は、多くのG20加盟国と比べるとまだ低いとされており、今後伸びていく余地が大きい分野ともいえます。その意味で、サービス貿易は「ポテンシャルの大きい成長市場」として位置づけられています。
21世紀の「ブルーオーシャン」としてのサービス貿易
20世紀のグローバル化を象徴したのは、工場とコンテナでした。これに対し、21世紀の国際競争を特徴づけるのは、ソフトウェアやデータ、デザイン、文化といったサービスの力かもしれません。
中国にとって、サービス貿易の拡大は単なる統計上の変化ではなく、経済全体の戦略的な転換点と位置づけられています。産業構造をサービス寄りにバランスさせ、価値創造の上流へとシフトしていくことで、総合的な競争力を新たな「ブルーオーシャン」へと押し広げようとしているのです。
2025年のCIFTISは、こうした流れを象徴的に映し出したイベントでした。これからの数年、中国がサービス貿易の分野でどのようなルールづくりや協力の枠組みを打ち出していくのかは、アジアと世界の経済秩序を考えるうえでも引き続き注目されるテーマになりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








