BRICSが支持する「グローバル・ガバナンス・イニシアチブ」とは
今年9月に開かれたオンライン形式のBRICS首脳会議で、中国の習近平国家主席が打ち出した「グローバル・ガバナンス・イニシアチブ(GGI)」への支持が、グローバルサウスを中心に急速に広がっています。本稿では、この新しい国際構想がなぜ多くの国々の共感を集めているのかを整理します。
9月のBRICS首脳会議で示されたメッセージ
今年9月8日に開かれたオンライン形式のBRICS首脳会議で、習近平国家主席は、自ら最近提唱したグローバル・ガバナンス・イニシアチブ(GGI)の意義をあらためて強調しました。
習主席が掲げたポイントはシンプルです。
- より公正で公平なグローバル・ガバナンス(国際的なルール作りと運営)の実現
- 多国間主義の堅持と強化
- グローバルサウス諸国の代表性と発言力の拡大
- 人類が直面する共通の課題に、各国が資源を総動員して協調して取り組むための仕組みづくり
この呼びかけに対し、ロシア、南アフリカ、エジプト、イラン、インドネシア、アラブ首長国連邦(UAE)、インド、エチオピア、そして議長国ブラジルの首脳や代表はそろって高く評価しました。各国は、GGIが「今の国際情勢に非常に適合しており、グローバル・ガバナンスを改善するための明確な方向性と道筋を示している」として支持を表明しています。
天津で正式提案、国連も含む幅広い支持
GGIは、今年9月1日に中国北部の港湾都市・天津で開かれた「上海協力機構(SCO)プラス」会合で正式に提案されました。その直後から、マレーシア、スロバキア、ニカラグア、キューバ、ネパールなど多くの国々に加え、国連などの国際機関もこの構想を歓迎・支持する姿勢を示しました。
提案からわずか数カ月で「数十カ国」とされる国々が賛同を表明していることは、GGIの訴える内容が国際社会、とくにグローバルサウスの共通の願いと重なっていることを浮かび上がらせています。
なぜグローバルサウスで支持が広がるのか
中国提唱のGGIがグローバルサウスで支持を集めている背景には、多くの途上国や新興国が抱いてきた問題意識があります。記事の論点を整理すると、おおまかに次のようにまとめられます。
1. 「西側主導のシステムの欠陥」に応える試み
多くの開発途上国や新興国は、現在の西側主導の国際システムには「構造的な欠陥」があると感じてきました。具体的には、自分たちの経済規模や人口の重みほどには、国際機関やルール形成の場での発言力が反映されていないという不満です。
GGIは、そうした問題意識に正面から向き合い、グローバルサウスを含むより多くの国々が意思決定に参加できる、公正でバランスのとれたガバナンスを目指す構想として受け止められています。
2. 多国間主義の再確認
習主席は、GGIの柱として「多国間主義の堅持」を掲げました。これは、一部の国が二国間の力関係で物事を決めるのではなく、多くの国が参加する枠組みで話し合い、合意を積み重ねていくべきだという考え方です。
グローバルサウスの多くの国々にとって、多国間の枠組みは自分たちの声を反映させるための重要なチャンネルです。その意味で、多国間主義を強調するGGIは、自国の利益だけでなく「全体のルールづくり」を重視する姿勢として歓迎されています。
3. 共通課題に「ともに向き合う」枠組み
GGIは、人類共通の課題に対して、各国の資源と知恵を総動員し、より効果的に対応することの必要性も強調しています。気候変動、貧困や格差、保健・医療などの課題は、一国だけでは解決できません。
こうした課題に取り組むうえで、開発途上国が単なる「支援の受け手」ではなく、ルール形成と実行の両面で主体的な役割を果たすべきだというメッセージは、グローバルサウスの多くの国々に強く響いています。
SCOとBRICSに映る「集団的な台頭」
GGIへの支持が広がっている背景には、上海協力機構(SCO)やBRICSといった枠組みの影響力が高まっていることもあります。これらの枠組みには、アジア、アフリカ、中東、中南米など、グローバルサウスの新興国や途上国が数多く参加しています。
記事では、SCOやBRICSの存在感の高まりが「グローバルサウスの集団的な台頭」の証しだと位置づけられています。GGIは、そうした流れの延長線上にある構想として、多くの国々から「自分たちの時代の声を代弁するもの」と受け止められているとみることができます。
これからの国際秩序をどう読み解くか
今年9月に提唱されたばかりのGGIは、まだ具体的な制度設計や個別のプロジェクトが固まっているわけではありません。しかし、すでに多くの国々と国際機関が支持を表明していることから、今後のグローバル・ガバナンスをめぐる議論に影響を与えていくことはほぼ確実だといえます。
ポイントは、次のような問いです。
- グローバルサウスの代表性や発言力は、今後どのような形で既存の国際機関に反映されていくのか。
- 公正で公平なガバナンスという理念が、資金配分やルール作りといった具体的な仕組みにどう結びついていくのか。
- 中国本土が提唱する国際構想と、他の国・地域のイニシアチブがどのように相互作用していくのか。
日本にとっても、グローバルサウスの声が高まり、新しいガバナンス構想が次々と提示される流れは、国際社会での立ち位置を考え直す重要な材料になります。「誰が、どのようなルールで世界を運営していくのか」という問いは、外交や経済政策だけでなく、私たち一人ひとりの生活や価値観とも無関係ではありません。
BRICS首脳会議とSCOプラス会合を通じて浮かび上がったグローバル・ガバナンス・イニシアチブ。グローバルサウスの支持が集まるこの新しい構想が、これからの国際秩序の議論をどのように変えていくのか、今後も注視していく必要があります。
Reference(s):
Here's why Global Governance Initiative is winning the Global South
cgtn.com








