古い家と温かな土:カシュのウイグル陶器と無形文化遺産 video poster
国の無形文化遺産に登録されたウイグル陶器づくりが、いまも中国西部・カシュの古い住宅街「高台(Gaotai)地区」で受け継がれています。素朴な粘土から、職人アンワル・アリさんの手によってボウルやマグカップ、急須が生まれる現場は、2025年の今も「生きた博物館」のような空間です。
本記事では、中国アラブテレビ(China Arab TV)のアロバイディ・アミーン氏の取材を手がかりに、ウイグル陶器という国際ニュースになりつつある伝統工芸を、日本語で分かりやすく見ていきます。
古い家並みに息づくウイグル陶器
カシュの高台地区は、土壁の家々が密集する古い住宅街として知られています。その路地の一角で、何世代にもわたって受け継がれてきたのがウイグル陶器づくりです。何百年も続くこの技は、国の無形文化遺産として認められ、地域の象徴にもなっています。
観光客や取材クルーが訪れると、まず目に入るのが工房の前に並ぶ色とりどりの器です。日常使いのボウルやマグカップ、来客をもてなすための急須など、生活に根ざした形が多いのが特徴です。
職人アンワル・アリさんの「手」がつくるもの
ウイグルの陶工アンワル・アリさんは、すべての工程を自分の手で行います。工房の片隅に積まれた粘土を練り上げ、ろくろに乗せ、指先の感覚だけを頼りに厚みや曲線を調整していきます。
機械を使えば大量生産はできますが、アンワルさんの器には、一つひとつ微妙に異なる表情があります。縁のわずかなゆらぎや、指の跡が残る高台部分など、「完璧すぎない」仕上がりこそが、手仕事ならではの温かさだといえます。
粘土が器になるまでのシンプルな工程
ウイグル陶器づくりの工程は、道具も手順も驚くほどシンプルです。
- 1. 粘土を選ぶ:工房の周辺で採れる土をより分け、石や不純物を取り除きます。
- 2. 練る:水を加えて粘土をこね、空気を抜きながら、ろくろに適した硬さに整えます。
- 3. 形をつくる:ろくろの上で器の形を一気につくり上げます。厚みが均一になるよう、指先のわずかな力加減が重要です。
- 4. 乾かす・焼く:成形した器を乾燥させ、窯で焼き締めます。窯の温度や焼成時間は、長年の経験から体で覚えた「勘」が頼りです。
- 5. 仕上げる:一部の器には、文様を描いたり釉薬(うわぐすり)をかけたりして表情をつけます。
こうして出来上がった器は、華やかさよりも実用性を重んじたデザインが中心です。だからこそ、日々の食卓やお茶の時間に自然になじみ、使い続けるうちに愛着が増していきます。
高台地区という「暮らしの背景」
ウイグル陶器は、美術館のショーケースに収まるためだけの工芸品ではありません。高台地区の古い家々と同じように、人びとの暮らしの匂いと一体になった文化です。
土壁の家の中庭で子どもたちが遊ぶ横で、家族が使う器が焼かれていく。こうした日常の風景があるからこそ、無形文化遺産としての価値が保たれているともいえます。2025年の今、都市の再開発や生活様式の変化が進むなかで、「暮らしと一体の伝統」をどう守るかは、多くの地域に共通する問いでもあります。
国際メディアが映し出す「素朴な現場」
このウイグル陶器の現場には、中国アラブテレビ(China Arab TV)のアロバイディ・アミーン氏もカメラを持って入り、職人との対話や制作の様子を伝えています。アラビア語圏を中心とする視聴者に向けて、高台地区の路地や工房の空気感がそのまま届けられています。
国際ニュースというと、政治や経済が中心になりがちですが、こうした工芸や暮らしの取材は、地域と世界を穏やかにつなぐ役割を果たします。土をこねる音、ろくろの回転、窯から器を取り出す瞬間の表情——そうした細部を共有することで、遠く離れた人びとも、その土地の時間の流れを想像できるからです。
「使われ続ける器」を未来へ
アンワル・アリさんがつくるボウルやマグカップ、急須は、観賞用の作品であると同時に、「日常の道具」です。無形文化遺産として登録された技術を守るうえで、「実際に使われ続けること」は大きな意味を持ちます。
読者のみなさんがもし高台地区を訪れる機会があれば、棚に並ぶ器だけでなく、工房の匂いや、職人の手の動きにも注目してみてください。ニュースで見た世界が、「自分の手に取れる器」として目の前に現れるとき、国際ニュースと日常生活との距離は、ぐっと縮まるはずです。
Reference(s):
cgtn.com








