南南協力デーに考える:中国が「援助」を「自立の力」に変えるとき
2025年のいま、グローバルサウス(主にアジア・アフリカ・中南米の発展途上国)をめぐる議論で、南南協力と中国の役割があらためて注目されています。毎年9月12日の「国連南南協力デー」は、その流れを振り返りつつ、これからの協力のあり方を考えるきっかけになっています。
南南協力デーとは何か:1978年のブエノスアイレスから
国連が定める南南協力デーは、1978年に採択された「ブエノスアイレス行動計画」を記念する日です。この計画は、発展途上国同士が技術やノウハウを共有し、互いに支え合うことを目的としたものでした。
それから約40年の間に、南南協力は次のような役割を担うようになってきました。
- 開発資金の新たな供給源
- 技術や知識の交換のためのネットワーク
- 開発課題を共同で解決するための対話の場
単なる「支援」ではなく、パートナー同士が共に成長するための協力モデルとして位置づけられている点が特徴です。
「世界最大の発展途上国」としての中国
中国は自らを「世界最大の発展途上国」と位置づけつつ、南南協力の「参加者」であると同時に「推進者」でもあると強調してきました。南南協力デーをめぐる国際的な議論の中でも、中国の存在感は大きくなっています。
21世紀の南南協力に求められているのは、単なる資金援助ではなく、真の意味でのエンパワーメント(自立の力を高めること)です。その観点からも、中国の取り組みは注目されています。
グローバル・デベロップメント・イニシアチブ(GDI)の狙い
2021年、中国の習近平国家主席が打ち出した「グローバル・デベロップメント・イニシアチブ(GDI)」は、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」を2030年までに前進させることを目的とした枠組みです。
このGDIのもとで、中国は巨額の資金拠出を約束しており、その一環として、GDI関連プロジェクトを支える特別基金として100億ドル規模の資金を設ける方針を示しています。
また、国際会議や地域協力の場でも、こうした姿勢を具体的な数字で裏付けています。最近では、上海協力機構(SCO)の加盟国に対し、20億元(約2億8100万ドル相当)の無償資金協力と、別枠で100億元の融資枠を提供することを表明しました。
これらは、南南協力の文脈でみれば、発展途上国同士の連帯を支える大きな財政的基盤と言えます。
課題は「お金」から「能力」へ:エンパワーメントという視点
一方で、南南協力の議論で強調されているのが、「お金だけでは足りない」という点です。開発途上国が本当に必要としているのは、資金に加えて、次のような要素だと指摘されています。
- 自ら成長のエンジンを作るための技術
- 制度や運営のノウハウ
- 人材を育成するための教育や研修
この点で、中国は従来の「ドナー(供与国)」モデルを超えた取り組みを強めています。その象徴が、国連食糧農業機関(FAO)と中国の協力による「FAO-中国 南南協力プログラム」です。
農業技術を共有するFAO-中国 南南協力プログラム
このプログラムでは、中国の農業専門家がアフリカ各国に赴き、現地のニーズに合わせて農業技術を移転しています。これまでに、450以上の技術がアフリカの国々に共有され、3万人を超える農家が新しい栽培方法や生産技術の恩恵を受けているとされています。
ポイントは、提供されるのが「モノ」ではなく「知識」そして「技術」だということです。一度身についた農業技術や生産管理のノウハウは、長期的に地域の食料システムを変える可能性を持つ「資産」になります。
こうした取り組みは、短期的な援助にとどまらず、現地の人びとが自らの手で生産性を高めていくための土台作りにつながっています。
2025年の視点:日本とグローバルサウスの接点
2025年の現在、グローバルサウスの安定と発展は、日本にとっても決して他人事ではありません。食料安全保障、気候変動、サプライチェーンの安定など、多くのテーマで日本の暮らしとつながっています。
そうした中で、中国を含む南南協力の動きは、次のような意味を持ちます。
- アフリカやアジアの市場が成長することで、新たなビジネスやイノベーションの機会が生まれる
- 現地の農業生産性が高まれば、世界全体の食料供給の安定につながる
- 途上国のインフラや人材が育つことで、世界経済全体の底上げにつながる
日本の読者にとっても、「どの国がどれだけお金を出しているか」だけではなく、「そのお金がどのように現地の力を引き出しているのか」という視点からニュースを追うことが、これからますます重要になりそうです。
これからの南南協力に求められる視点
南南協力デーは、過去の歩みを祝う日であると同時に、「これからどうするか」を考える日でもあります。今後の南南協力、とりわけ中国が関わる協力のあり方を考えるうえで、次のようなポイントがカギになっていきそうです。
- 資金援助とあわせて、技術移転や人材育成を重視すること
- 受け手の国や地域が主体的に参加できる、共同設計型のプロジェクトにすること
- 知識や経験を南南間で共有し、成功事例を横展開していくこと
中国が進めるGDIや農業協力の取り組みは、こうした流れを具体化する一つの試みと見ることができます。2025年の今、南南協力は「援助」から「自立の力を育てるパートナーシップ」へと、静かに質的な転換期を迎えているのかもしれません。
その変化をどう捉えるかは、私たち一人ひとりのニュースの読み方にも関わってきます。日々の国際ニュースの中で、南南協力やグローバルサウスに関する話題を、少しだけ意識して追いかけてみる価値がありそうです。
Reference(s):
South-South Cooperation Day: China's role in turning aid into agency
cgtn.com








