CIFTIS 2025、中国国際サービス貿易交易会は「ルールの実験場」へ
2025年の中国国際サービス貿易交易会(CIFTIS)は8日に閉幕しました。従来の展示会という枠を越え、サービス貿易の国際ルールを試作・発信する場へと機能を高めたことが、今回の国際ニュースの大きな特徴です。
サービス貿易の「ルールラボ」へと進化
今年のCIFTISは、単なる展示・商談のための見本市から、サービス貿易のルールづくりを先行的に試す「イノベーションラボ」へと性格を変えつつあります。サービス貿易が、モノを並べて魅せる段階から、制度やルールを巡る国際的な議論の領域へと重心を移していることを象徴しています。
これは、中国がサービス貿易やデジタル貿易の分野で、国際ガバナンス(国際的なルール・秩序の運営)により深く関与する能力を高めていることを示す動きでもあります。
2025年CIFTISの規模とテーマ
2025年のCIFTISのテーマは「Embrace Intelligent Technologies, Empower Trade in Services(インテリジェント技術を取り入れ、サービス貿易を強くする)」です。70を超える国と国際機関が参加し、出展企業は約2,000社。そのうち500社以上はフォーチュン・グローバル500企業や各分野のリーディングカンパニーとされ、世界のサービス産業の最前線が一堂に会しました。
「デジタル・インテリジェンス」が主役
今回の中国国際サービス貿易交易会で特に打ち出されたのは、デジタル・インテリジェンスの役割です。会場では、190件以上の先端的なイノベーション成果が披露されました。例えば、3Dプリンターで作られた血管ステント(医療用の管状器具)や、千ビット規模のフォトニック量子コンピューターの初公開などです。
さらに、人工知能(AI)を活用したバイオ医薬品の開発プロセスや、5Gを使ったスマートライフのデモンストレーションなど、具体的な生活・産業シーンを再現する没入型の展示が行われました。サービス貿易が、単なるサービスの売買ではなく、技術・データ・インフラが一体となった「システム」として進化しつつあることが伝わる構成です。
AIが変えるデジタル貿易のルール
「デジタル貿易発展と協力に関する2025年報告書」によると、AIはデジタル貿易において、少なくとも三つの次元で変革的な影響を与えるとされています。
- 取引のあり方(どのように取引するか)
- 取引される品目(何を取引するか)
- 市場参加者(誰が取引に参加するか)
同時に、AI技術の普及は、デジタル貿易ガバナンス(デジタル空間の取引ルール)の見直しと更新を促し、新たなルールづくりの波を引き起こすと分析されています。CIFTISは、こうしたルール形成の議論や試みを先取りする「場」として機能し始めています。
展示会から「ルールづくり」の拠点へ
今年の中国国際サービス貿易交易会では、「ルールづくり」が新たな焦点として前面に出ました。会期中には、複数の政策文書が発表されています。
- 途上国向けの「サービス貿易におけるデータと政策に関するガイド」
- 「サービス貿易標準化における中国の事例集」と、それに連動した具体的な行動計画
- 国際標準化機構(ISO)との連携拠点となるリエゾンセンターの設置
特に、ISOリエゾンセンターは、中国企業が国際的なコンプライアンス要件によりスムーズに対応し、国際標準づくりに参加していくためのハブとして位置づけられています。サービス貿易の標準やデータルールをめぐる議論の場として、CIFTISの機能が拡張していると言えます。
知識経済へのシフトと競争力
こうした背景には、知識経済の台頭があります。中国のサービス輸出は、従来の労働集約型のサービスから、技術と知識を核とするサービスへと比重が移りつつあります。ソフトウェア、クラウドサービス、データ関連サービス、先端医療・教育サービスなど、知識や技術を多く含む分野が、競争力の源泉になりつつあるという構図です。
数字で見る中国のサービス貿易(2025年1〜7月)
2025年1〜7月の中国のサービス輸出入は、次のような動きを見せています。
- サービス輸出入合計:約4.58兆元(約6400億ドル)、前年同期比8.2%増
- 輸出:前年同期比15.3%増
- 輸入:前年同期比3.3%増
- 知識集約型サービス貿易:約1.77兆元(約2486億ドル)、6.8%増
- 電気通信・コンピューター・情報サービス貿易:12.6%増
デジタルインフラの整備と先端技術の蓄積が、サービス貿易の拡大と高度化を後押ししていることが、これらの数字から読み取れます。CIFTISは、こうした国内の産業・インフラの進展を、国際社会に「見せる場」であると同時に、新たなビジネスルールを議論する「対話の場」にもなっています。
日本と世界の企業にとっての意味
国際ニュースとしてのCIFTIS 2025のポイントは、サービス貿易やデジタル貿易のルールが、今まさに書き換えられつつあるという点です。AIや量子コンピューティング、5Gを前提としたサービス提供が現実化する中で、データの扱い、標準化、知的財産、コンプライアンスなどをめぐるルールのあり方は、各国の企業戦略に直結します。
日本を含む各国・地域の企業や政策担当者にとって、CIFTISのような場でどのようなルール案や標準化の方向性が示されているのかを把握しておくことは、今後のデジタル貿易戦略を考えるうえで重要になっていきます。
展示会から「ルールの実験場」へと変貌する中国国際サービス貿易交易会。その動きは、グローバルなサービス貿易とデジタル経済の行方を考えるうえで、今後も注目すべき指標になりそうです。
Reference(s):
cgtn.com








