新疆カシュガルで名前がアートに:ウイグル書道がつなぐ国際交流 video poster
新疆カシュガルで「名前」がアートになる
中国新疆ウイグル自治区のカシュガル(Kashi)で、自分の名前がまったく新しい姿に生まれ変わる体験が紹介されています。国際ニュースを伝えるCGTNの劉欣(Liu Xin)さんと、China Arab TVのアミーン・アロバイディ(Ameen Alobaidi)さんが訪れたのは、ウイグル文字の書道を専門とする小さな店。そこで2人は、自分の名前をウイグル文字で美しく書いてもらい、さらに自ら筆をとって挑戦しました。
スマートフォンでニュースや動画を見ることが当たり前になった2025年のいま、「名前」というとても個人的なものを通じて、遠い地域の文化にふれるきっかけをつくる試みとして注目できます。
ウイグル書道を44年支えるオメル・オスマンさん
2人が足を踏み入れたのは、カシュガルの一角にある、温かい雰囲気の書道店です。店を切り盛りするのは、ウイグル文字を書き続けて44年になる書道家、オメル・オスマンさん。長年の経験を持つ達人で、筆づかい一つひとつに重みが宿っています。
店内には紙とインク、さまざまな筆が並び、壁にはウイグル書道の作品が飾られている様子がイメージされます。オメルさんにとって、ウイグル文字を書くことは単なる仕事ではなく、長い歴史と世代を超えて受け継がれてきた文化を次につなぐ営みでもあります。
一本の筆に宿る「世代の記憶」
今回紹介された体験のテーマの一つは、「一本の筆づかいに世代の遺産が込められている」という視点です。ウイグル文字の流れるような線や独特の曲線は、単なる装飾ではなく、その地域で暮らしてきた人びとの歴史や祈り、日常の言葉が積み重なって生まれたかたちでもあります。
44年にわたって同じ文字と向き合ってきたオメルさんの筆は、その時間の厚みを静かに語ります。こうした「手で書く文化」が今も続いていること自体が、ニュースとして記録する価値のある出来事と言えます。
国際メディア2人が体験した「名前の翻訳」
今回の企画の中心にいるのは、中国の国際メディアCGTNの劉欣さんと、China Arab TVのアミーン・アロバイディさんです。2人はカシュガルをめぐる取材の一環として、このウイグル書道店を訪れました。
オメルさんは、それぞれの名前の音を聞き取りながら、丁寧にウイグル文字へと置き換えていきます。筆を紙に置く瞬間から、1本の線がのびるたびに、見慣れた名前が少しずつ異なる「模様」のような姿へと変わっていきます。
書いてもらう、そして自分で書いてみる
2人は完成した作品を受け取るだけでなく、自分たちでもウイグル文字を書くことに挑戦しました。プロの書道家がさらりと書いて見せる線も、実際に筆を持ってみると、太さや角度、リズムのどれをとっても思い通りにはいきません。
その「うまく書けない感覚」自体が、ことばや文字の違いを身体で実感する時間になります。ニュースを通じて遠くの出来事を眺めるだけではなく、自分の手を動かしながら、別の文化にふれる試みだと言えるでしょう。
「別の文字で自分を見る」ことの意味
自分の名前は、最も身近な「アイデンティティ」の一つです。その名前を、普段とはまったく違う文字体系で書き表すとき、人は何を感じるのでしょうか。
ウイグル文字で綴られた劉欣さんやアミーン・アロバイディさんの名前は、元の発音を保ちながらも、線の流れやバランスが変わることで、別の表情を帯びます。それは、自分自身を別の角度から見直す小さなきっかけにもなり得ます。
- いつもの名前が「模様」のように見えてくる
- 「読めないけれど美しい」という感覚を通じて、文字そのものへの興味が広がる
- 「この線にはどんな意味があるのか」と、自然と質問や会話が生まれる
こうした変化は、国や地域をまたぐ文化交流を考えるうえで、意外に大きな意味を持ちます。相手のことばや文字に自分から近づいていくことは、小さなジェスチャーでありながら、尊重や関心を示す行為でもあるからです。
SNS世代にひらく、手書き文字の可能性
デジタルネイティブ世代にとって、文字はスマートフォンの画面上で打ち込むもの、というイメージが強いかもしれません。しかし、今回のカシュガルでの体験は、「手で書く文字」が持つ力をあらためて思い出させます。
ウイグル書道で書かれた名前の作品は、写真に撮ってSNSでシェアしたくなるようなビジュアルでもあります。それは単なる「映える」画像ではなく、その背後にある歴史や文化への関心を呼び起こすきっかけになり得ます。
newstomo.comの読者にとっても、「自分の名前を別の文字で書くとしたら?」と想像してみることは、国際ニュースを少し違う角度から受け取る練習になるかもしれません。世界のどこかにいる誰かが、自分の名前を丁寧に書き写してくれる。その光景を思い浮かべるだけで、ニュースの中の地名や人名が、少し自分ごとに近づいてくるのではないでしょうか。
静かな観光と、静かな対話
観光というと、大きな名所やイベントに目が向きがちです。しかし、カシュガルの小さな書道店をめぐる今回のエピソードは、「静かな観光」の魅力を伝えています。一軒の店、一人の書道家との対話を通じて、その土地の文化にじっくりふれるスタイルです。
一本の筆、一枚の紙、そして一つの名前。そこから始まる対話は派手ではありませんが、記憶に残りやすく、他の人にも語りたくなる経験になります。SNSでシェアされる短い動画や写真の背後にも、こうした丁寧な時間が流れていることを意識すると、国際ニュースの見え方も少し変わってくるはずです。
新疆カシュガルのウイグル書道店で起きた、ささやかな国際交流の物語は、「読むニュース」だけでなく、「体験するニュース」の一つのかたちとして、これからの情報との付き合い方を考えさせてくれます。
Reference(s):
What if your name had a whole new look, in Uygur calligraphy?
cgtn.com








