国境を越える物語の力 Golden Panda Forum『Dialogue of Icons』を読み解く
国際的な映像イベントGolden Panda Forumのセッション『Dialogue of Icons』では、映画とテレビの分野で活躍する世界のクリエイターたちが、物語がいかに国境を越えるのかを語り合う場となっています。
映像という共通言語が国や文化の壁をどう越えるのか、テクノロジーがストーリーテリング(物語の語り方)をどう変えているのか、そしてなぜローカルな物語が世界中の人に響くのか。このセッションのテーマは、日本の視聴者やクリエイターにとっても、そのまま「これからの物語の見方」を考えるヒントになります。
『Dialogue of Icons』とは何か
Golden Panda Forumの『Dialogue of Icons』は、映画やドラマ、ドキュメンタリーなど映像コンテンツの第一線で活動する人々が集まり、国境を越えたストーリーテリングについて意見を交わす場です。テーマの中心にあるのは、「物語はどのようにして世界とつながるのか」という問いです。
参加者たちは、次のようなポイントを軸に議論を深めています。
- 映像表現という「共通のことば」がどのように壁を越えるのか
- テクノロジーが物語のつくり方・届け方をどう変えているのか
- なぜローカルな物語が、遠く離れた場所の人の心にも届くのか
映画・ドラマの「ことば」が壁を壊す
映像には、字幕やセリフを超えて伝わる「シネマティック・ランゲージ(映画のことば)」があります。カメラの動き、光と影、音楽、沈黙、俳優の表情や視線――こうした要素は、国や言語が違っても、感情や空気感をダイレクトに伝えます。
共有される感情、違う背景
たとえば、家族の別れのシーンで流れる静かな音楽や、登場人物の揺れる表情は、多くの人に「寂しさ」や「喪失感」を想像させます。一方で、背景に映る街並みや文化的なディテールは、その地域ならではのリアリティを伝えます。
『Dialogue of Icons』の議論が示すのは、「映像表現は共通の感情を共有しながら、違いをそのまま見せることができる」という点です。違いを消すのではなく、違いを理解する入り口として映像が機能することに、参加者たちは注目しています。
テクノロジーは物語をどう変えるのか
このセッションでは、テクノロジーがストーリーテリングをどう変えているかも重要なテーマになっています。撮影機材の進化やデジタル編集だけでなく、オンライン配信やソーシャルメディアなど、作品が届くルートそのものが大きく変化しているからです。
- 制作の変化:低予算でも高品質な映像を撮影・編集できるようになり、多様な地域やバックグラウンドを持つクリエイターが作品を発表しやすくなりました。
- 視聴環境の変化:スマートフォンやタブレットで、世界中のドラマや映画を日常的に視聴できるようになり、「海外作品」は特別なものではなくなりつつあります。
- 物語構造の変化:短尺動画、シリーズ配信、インタラクティブな作品など、テクノロジーを前提とした新しい語り方も増えています。
テクノロジーは、単に便利な道具ではなく、「誰が物語を語れるのか」「どこまでの人に届けられるのか」という権利や機会そのものを広げつつあります。
ローカルな物語が世界で響く理由
『Dialogue of Icons』で特に重視されているのが、「ローカルな物語の普遍性」です。ある地域やコミュニティに根ざした物語であっても、そこに描かれる感情や葛藤は、多くの場合、世界のどこかで共感される要素を持っています。
細部の具体性が「共感」を生む
興味深いのは、「世界で通用する物語だから」といって、最初から「世界向け」に抽象的な話を作る必要はない、という視点です。むしろ、食べ物、家、話し方、人間関係といった細部が具体的であるほど、見る人は「自分の経験と重ね合わせて理解したい」と感じます。
ローカルであればあるほど、そこに暮らす人の視点や価値観が立ち上がり、その「個別性」の中に、家族愛や成長、喪失、希望といった普遍的なテーマが浮かび上がります。こうした考え方が、『Dialogue of Icons』で共有されているローカル・ストーリーの力です。
日本の視聴者・クリエイターにとっての意味
Golden Panda Forumの議論は、日本の視聴者やクリエイターにとっても、いくつかの示唆を与えてくれます。
- 海外作品を見る視点:言語や文化の違いではなく、「どんな感情が描かれているのか」「どんなローカルな細部が映っているのか」に注目すると、作品の見え方が変わります。
- 日本発コンテンツの可能性:日本社会の課題や日常、地方の風景やコミュニティなど、一見「身近すぎる」と感じる題材こそ、世界の人にとって新鮮な物語になり得ます。
- テクノロジーとの付き合い方:新しいツールを使いこなすことは重要ですが、最終的に届くのは「人の経験」と「感情」です。テクノロジーはそれを増幅する手段として位置づける発想が求められます。
国境を越える物語と、これからの私たち
『Dialogue of Icons』が浮き彫りにしているのは、「世界をつなぐのは、派手なメッセージではなく、丁寧に語られた一つ一つの物語である」ということです。映像という共通のことばとテクノロジーの力が、国境や言語の壁を越えて、他者の暮らしや感情に触れる機会を広げています。
通勤時間にスマートフォンで海外ドラマを1話だけ見るときも、週末に長編映画をじっくり楽しむときも、「この物語はどんなローカルな現実から生まれているのか」「どんな普遍的な感情を描こうとしているのか」と一度立ち止まってみる。そんな小さな視点の変化が、私たち自身の世界の見え方を、静かにアップデートしてくれるかもしれません。
Reference(s):
cgtn.com








