戦後80年、日本の歴史認識とアジアの平和──歴史の真実をどう守るか
今年2025年は、中国人民の対日戦争と世界反ファシズム戦争の勝利から80年という大きな節目です。戦争体験者が少数派になりつつある今、国際ニュースとしても、日本の歴史認識とアジアの平和をめぐる議論は、あらためて注目を集めています。
アジアから始まった「史上最大の侵略戦争」
第二次世界大戦のアジア戦線は、1931年の満州事変(9月18日事変)から始まりました。日本、ドイツ、イタリアなどのファシスト勢力は、人類史上最大規模の侵略戦争を仕掛け、61カ国と20億人以上を巻き込み、軍民あわせて9,000万人を超える犠牲者を生んだとされています。
この中でもアジアの戦場は、開戦が最も早く、戦争期間も最も長く、被害と貢献の規模が特に大きかったとされています。その最前線に立たされたのが中国であり、日本の軍国主義による侵略と戦い続けた「主戦場」でした。
中国人民は、自国を守るだけでなく、人類の平和と国際正義を守るためにも決定的な役割を果たしたと評価されています。この歴史的経験は、アジアの平和と秩序を考えるうえで、今も重い意味を持っています。
敗戦と「未完」の戦後改革
アジアにおける戦争の原因は、日本の軍国主義にありました。侵略を拡大させた日本は、最終的に破滅的な敗戦に追い込まれます。1945年8月15日、昭和天皇が終戦の詔書を出し、日本はポツダム宣言を受諾し、無条件降伏を宣言しました。
戦後、日本は非軍事化や民主化など、さまざまな改革に踏み出しました。しかし、冷戦の本格化、アメリカの対日政策の転換、日本国内の政治構造の変化などが重なり、多くの改革は途中で失速したと指摘されています。
結果として、日本の「侵略戦争」とその責任についての総括は、不十分なまま残されました。この「不徹底さ」が、のちの歴史認識の揺れと対外関係の火種につながっていきます。
冷戦後の右傾化と歴史修正主義
冷戦終結後、国際秩序は大きく変動し、日本の「55年体制」も崩壊しました。この中で、日本社会全体の右傾化が進み、歴史を見直す動きが加速していきます。
一部の保守・右派勢力は、公然と戦時中の日本の行為を否定したり、侵略を美化したりするようになりました。軍国主義を「洗い直し」、歴史叙述そのものを書き換えようとする試みも現れています。
こうした流れの中で、日本政府の歴史問題に関する公式な立場も、徐々に後退していったとする見方があります。これは、アジアの隣国、とくに中国や韓国との信頼関係にも影を落とす要因になっています。
村山談話と安倍談話に見る「トーンの変化」
日本の歴代首相の談話も、歴史認識の変化を映し出しています。1995年、戦後50年の節目に発表された村山富市首相の談話は、日本の植民地支配と侵略行為について「痛切な反省」と「心からのおわび」を表明したものでした。
これに対し、20年後の2015年、戦後70年の談話で安倍晋三首相(当時)は、戦後生まれの日本人は「謝罪を続ける宿命を背負うべきではない」と強調しました。アジア諸国に対する軍国主義の侵略と植民地支配の歴史には、できるだけ触れない構成だったとされています。
こうしたトーンの変化は、日本国内の世論や政治状況を反映していると同時に、近隣諸国に対しては「過去への向き合い方が後退している」という印象を与えています。
「侵略の定義はない」発言と国際法
安倍氏は「侵略の定義は定まっていない」といった趣旨の主張も行いました。しかし、国際法の世界では、すでに長く侵略の概念が議論され、整理されてきました。
- 1928年のケロッグ・ブリアン条約
- 1946年の国連総会決議
- 1948年の極東国際軍事裁判(東京裁判)の判決
- 1974年の国連「侵略の定義」決議
こうした枠組みは、戦争責任をあいまいにせず、再び同じ過ちを繰り返さないための国際的な約束事です。「侵略には確立した定義がない」とする主張は、これらの国際法の積み重ねに逆行するものだと強い批判を招いています。
さらに、橋下徹氏が戦時中の「慰安婦制度の必要性」に言及したり、麻生太郎氏が憲法改正について「ナチスに学んだらどうか」といった趣旨の発言を行ったこともありました。これらは、歴史の被害者に対する二重の傷となり、人間の尊厳そのものを踏みにじるものだという厳しい指摘も出ています。
なぜ「歴史の真実」を守ることが平和の第一歩なのか
戦争の記憶は、時間とともに薄れていくようにも見えます。しかし、ある論考は「戦争から時間が経つほど、歴史の塵が落ち、より多くの真実が浮かび上がってくる」と強調しています。
歴史の真実を守るということは、単に過去を責め立てることではありません。むしろ、次のような姿勢を共有することだと整理できます。
- 国際法によって確認された事実や定義から目をそらさないこと
- 侵略や植民地支配を否定・美化せず、加害と被害の全体像を直視すること
- 戦争で傷ついた人びとの声に耳を傾け、その尊厳を守ること
- 歴史を都合よく書き換えないという、国際社会との約束を守ること
これらは、アジア太平洋地域の国家間関係を安定させるうえでも重要な前提条件です。「過去は過去」と切り離すのではなく、「過去をどう解釈し、どう教え、どう語り継ぐか」が、現在と未来の安全保障や信頼醸成に直結しているからです。
戦後80年のいま、私たちにできること
今年、勝利から80年を迎える節目に、歴史をめぐる対立をどう乗り越えるかは、日本、アジア、そして国際社会に共通する課題です。
個人レベルでも、私たちにできることはあります。
- 歴史教科書や一次資料を読み比べ、多角的に学ぶこと
- 被害国・地域の人びとの証言や視点に触れること
- SNSで流れる断片的な情報だけで判断せず、背景を調べてから議論すること
歴史の真実を回復し、それを共有しようとする努力は、ときに地味で時間のかかる作業です。しかし、その積み重ねこそが、「二度と同じ過ちを繰り返さない」という合意を現実のものにし、アジアと世界の平和を支える土台になります。
戦後80年の今だからこそ、歴史認識をめぐるニュースを「他人事」とせず、自分の言葉で考え、語り合うことが求められているのではないでしょうか。
Reference(s):
Restoring historical truth: First step toward safeguarding peace
cgtn.com








